先日SNSで話題となった「鉄の味がするアイスクリーム」こと「燕三条鉄アイス」が2021年4月24日に発売された。鉄っぽい味、鉄イメージなどといった生やさしいものではなく、本物の鉄が入った正真正銘の「鉄アイス」だ。

そんな鉄アイス、今はまだ新潟県内でしか販売されていないが、特別に1つだけいただくことが出来た。元高専生で日本刀好きな「鉄の味」「鉄の香り」を知る筆者が、衝撃の鉄アイスをご紹介したい。

・ただの美味しいアイスと思いきや

「燕三条鉄アイス」は金属加工品の一大産地である新潟県・燕三条地域で生まれた、カップ入りのアイスクリームだ。カップのフタには燕三条地域で生産されている工具やカトラリーなど、あらゆる金属加工品のポップなイラストが描かれており、名前に反して見た目は可愛い。

しかし原材料名を確認すると、耳馴染みの良い牛乳や生クリームなどの食材たちと並んで「鉄」と表記されている。鉄分摂取は生きていくために大切とはいえ、原材料名に並ぶ「鉄」を目にすると食べていいのか一瞬不安になってしまう。

恐る恐るフタを開けてみると……ほぼ真っ黒! アイスの表面が、びっしりと黒い粉に覆われてしまっている。この謎の黒い粉こそが、食用の竹炭と鉄がミックスされた粉だそう。しかし、見た目に反して鉄の香りはほとんど感じられない。

実は筆者、多くの方が高校生活を送っている時期を高専(工業高等専門学校)生として、金属の切削・加工の際に漂う香りや味とともに過ごして来た。今も日本刀鑑賞を趣味としており、鑑賞中にほんのり漂う鋼の香りを日々楽しんでいる。金属の香りや味には敏感なつもりだ。

もしかして鉄アイス、名前のインパクトに反し大して鉄が入っていないのでは? あまりに鉄の香りがして来ず、そんなナメた考えまで浮かんできてしまう。ジェラートっぽいややサクリとした感触を楽しみながらアイスにスプーンを突き刺し、一口食べてみると……

めちゃくちゃミルク味。粉がしっかりかかっているところを食べたにも関わらず、程よい甘さなのにコクのある美味しいミルク味。土台のアイスがジェラートっぽいことに加え、竹炭の粒もあってかシャリシャリとした小気味良い食感──などと楽しみながら飲み込むと。

アイスを飲み込んだあとから、スンとした金属の匂いがしてきた……! おまけに後味までやや酸味に似た、何とも言えない鉄の味になってきた。さっきまでのミルク感はどこへ。高専時代に実習で金属加工をした日の、何となく口の中に金属の味を感じる帰路を思い出させる風味……。

土台のアイスがしつこさのないミルク味のアイスなので美味しく食べ進めてしまえるが、食べれば食べるほどほんのりとした鉄の匂いや味が鼻に、口に広がっていく。ほんのり具合が絶妙なので、「美味しい」と感じさせながら鉄の風味も楽しませる力技。凄い。

・通販開始時期は未定

アイス好きも鉄好きも気になるだろう「燕三条鉄アイス」は当面、新潟県三条市にある『ジェラテリア ココ』でのみの販売(価格は400円)を予定しているそうだ。6月〜7月を目標に通販も開始したいとのことだったが、鉄アイスは手作りな部分もあり量産が出来ず、なかなか難しいようだ。

どことなく気が引き締まるような、個人的には青春も思い出すような何とも言えない鉄の風味に思いを馳せつつ、大人しく通販の開始を待ちたいと思う。

参考リンク:『ジェラテリア ココ』公式Facebookページ
執筆:伊達彩香
Photo:RocketNews24.
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