私(中澤)には忘れられない味がある。それは今から8年くらい前の話。インディーズバンドでツアーに行った福井で食べた『ヨーロッパ軒』のソースかつ丼だ。
福井県出身者のボーカル佐々木くんのオススメで行ったわけだが、食べた瞬間は「まあウマイ」くらいの感じだったと思う。しかし、時が経つにつれ「あれウマかったな」と何度も思い出し、いつしか「もう一度食べたい」と思うようになった。今食べたらどう感じるのだろう? そんなヨーロッパ軒に行ってみた。
・福井県出身者Aの証言
かつ丼が大好きだった佐々木くん。当時、佐々木くんはヨーロッパ軒について「福井県民なら知らない人はいない」「ソウルフード」と言っていた。ヨーロッパ軒のソースかつ丼に慣れ親しみすぎたために、東京でかつ丼を注文した時衝撃を受けたのだとか。「卵とじになってる!」と。
・福井県民Bの証言
私のファーストインプレッションが「まあウマイ」くらいの感じだったのも、佐々木くんの言葉で期待度が上がりすぎたためだと思う。そこで、念のため別の福井県民の声として、生まれも育ちも福井県の古い知り合いYさんの話も以下にご紹介しよう。
福井県のYさん「僕的にはそんなにソウルフードじゃないです。福井と言えば、ソースかつ丼とおろし蕎麦ですが、個人がそれぞれ身近なお気に入りの定食屋を持っている感じで、「この店が」ってのじゃないんですよね。でも、まあ、個人差はありますし、パ軒のソースかつ丼が唯一無二な味なことは確かです」
──とのこと。まあ、福井の中でも色々な意見があるようだが、「福井県民なら誰でも知っている」という言葉は信じてよさそうである。というわけで、ヨーロッパ軒丸岡分店にやって来た。
・喫茶店的
東京にあるいかにもなチェーン店というファスト感はなく、歴史のある洋食屋的な外観が素敵である。メニューも洋食屋のそれであり、ソースかつ丼だけではなく、オムライスからミートスパゲティーまであった。
店内も食べてすぐ出ていくというよりは喫茶店的でちょっとダラダラできる感じ。人肌には寒い福井だが、店員さんの対応を含めそこはかとなく温かさを感じる。地元に根差したチェーンだ。
・ソースかつ丼大盛を注文
で、ソースかつ丼の価格はと言えば、並み930円、大1280円。並みはカツ3枚で、大はカツ4枚である。っておいおい! カツ3枚とか4枚とか多すぎないか? 普通1枚でいっぱいだろ。と思ったかもしれないが、実はヨーロッパ軒のカツは……
薄い。
ペラペラである。しかし、誤解してほしくないのは、ヨーロッパ軒のカツは「薄さ=安っぽさ」にはなっていないというところ。薄さゆえにクリスピーな食感!
サクサク……いや、ザクザクした衣がよりダイレクトに感じられる。そして、枚数が多いためボリューム的にも十分! さらにさらに……
追いソースしたらもうかなわん。
ウスター系さらさらソースの甘辛い味がなぜだがとても懐かしい。これだよこれ! 私が食べたかったのはこの味だ。茶色に染まっているこの味が最高なのである。
・福井県民がうらやましい
特にネットで話題になるような派手さがあるわけではない。だが、ついつい食べたくなる味である。改めて食べて思った。この先も忘れられないだろう……と。
ちなみに、揚げ物系で言うと、かつ丼以外にも、カツ・チキン・ミンチのミックス丼やミンチ2枚のパリ丼が同価格帯である。これらも食べてみたいが、遠征してきての一度のチャンスだと、どうしてもソースかつ丼を注文してしまう。ヨーロッパ軒が近所にある福井県民がうらやましい。
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.