先日、パズル懸賞雑誌で数年間にわたり賞品を発送せず景品表示法に違反、というニュースが流れた。

このニュースを聞いたときの第一印象は、驚きというよりも「やっぱりな」ではないだろうか。世にあふれる懸賞雑誌や読者プレゼント、メーカーのキャンペーンなど……いってみれば露店の福引きに1等を期待しないように、ハナから半信半疑なのが「懸賞」ではないか。

個人的な例で恐縮だが、およそ1年前のキャンペーンの当選品をハラハラしながら待ち続け、ついに受け取った話をしたい。


・エヴァンゲリオンキャンペーン

ググればすぐにわかるので明かすが、そのキャンペーンとは昨年4月から5月にかけて行われた「シン・エヴァンゲリオン劇場版×カレーハウスCoCo壱番屋」である。最終的には賞品が届き、またカスタマーセンターの対応等も親切だったので、同チェーンに不満を述べる意図はない。

後に延期されたが、当時は「2020年6月に劇場版公開」ということでエヴァ熱がどんどん高まり、各社でコラボキャンペーンをやっていたと思う。

ココイチでも、店舗でもらえる先着プレゼントや壁紙ダウンロードのほか、900円以上のレシートで応募できる本格的な懸賞もあった。

同チェーンのヘビーリピーターである筆者にとって、900円以上の飲食なんて条件は苦でもない。エヴァも好きなので迷わず応募した。


────6月。自分がキャンペーンに応募したことすら忘れかけていた頃、1通のメールが届いた。


なんと「当選のご案内」とある。全国で数十名にしか当たらないオリジナルグッズが筆者に! Wチャンスなどではない上位の賞に当選したのは生まれて初めてである!!


応募者にとってネックなのが「賞品の発送をもって発表にかえさせていただきます」というパターン。外からは事情がわからず、届かなければ「ハズレたんだな」と思うだけだから、仮に不正があっても誰も気づかない。応募した当人が忘れていることだってあるだろう。

一方のココイチは当選メールが届き、この段階で初めて送付先住所を入力するシステムなのがよかった。期日内に入力を終えないと無効になるリスクはあるが、自分が当選したことがはっきりわかり透明性がある。


筆者は天にも昇る気持ちで住所を入力した。商品の発送は2020年10月頃を予定しております、とのこと。およそ4カ月先だが、気長に待とう。


・不安の始まり

────10月。「あれ、そろそろじゃなかったっけ?」と、賞品が届いていないことに気づいた。スクリーンショットを見返すと、たしかに10月とある。しかも食事券のような一部賞品の当選者には早々と届いているようなのである。


────11月。やはり音沙汰がない。先の告知には「新型コロナウィルス感染症(COVID-19)拡大による影響で商品製造に遅れが発生しております」という1文もあったし、なにかの事情で遅れているのだろうか?


────12月。さすがにおかしい。もしかして当選メールはココイチをかたった詐欺で、住所やら氏名やらを、まんまと抜かれてしまったんじゃないだろうか。


筆者はキャンペーンサイトに掲載された問い合わせ先に電話をした。しかし、キャンペーンが終了して早6カ月。事務局は終了してしまったのか、つながらない。


よく考えると「100万円当選!」「○分以内に回答した貴方だけに!」などと偽サイトに誘導して個人情報を入力させるのは迷惑メールの常套手段じゃないか!!!!


いつもはスルーするのに、今回は「たしかに応募した」という覚えがあったのでなんの疑いももたずメール内のリンクに飛んだ。いま思えばドメインもココイチじゃないし、社名すらない「当選のご案内」という件名で、シンプルすぎるテキストメールだったことも怪しい……


いったいどこから詐欺だったのか、あるいは期限までに住所を入力するというハードルを、自分がちゃんとクリアしていなかったのだろうか。いまとなってはわからない!

最後の手段、ココイチ本体のサービスセンターに問い合わせた。どう考えても「店舗や商品に関するお問い合わせ」ではないので、ちょっと恥ずかしかったが、背に腹はかえられない。

何カ月も前に終了しているキャンペーンのため、サービスセンターでも回答に時間がかかったが、それでも親切に調べてくれた。「当選者にはとっくに発送しました」「なにかの間違いでは?」という回答だったらどうしよう、ドキドキ……。


そこでもらえた「お客様がたしかに当選されていることは確認できました」のひと言。よかった、詐欺じゃなかったぁぁぁ!!


ただ、やはり新型コロナの影響で製造が遅延しているとのこと。その旨を知らせるメールもあったようだが、なにかの行き違いで筆者には未着だった。いずれにしても発送まではまだしばらくかかるという。


そこからさらに待つこと数カ月。


いずれ送ってもらえる、ということはわかったのだが、いかんせん情報がない。ココイチに限ったことではないが、一定の期間が過ぎると特設ページが削除されたり、更新されなくなったり、事務局が終了したりして、新しい情報を得る手段が限られる。

キャンペーンを社外に委託しているケースもあるだろう。「なぜ遅れているのか」とか「いま用意しています」とか進捗状況を知る手がかりがないのだ。

かつてよくあった、雑誌などの「当選者一覧」にしたって、数カ月後の掲載だから本人が確認できることの方が少ない。なんなら架空の氏名をずらっと載せたって、誰にもわからないんじゃないだろうか。

「当落のお問い合わせには応じられません」という注意書きもよくあるし、「懸賞」という仕組みには圧倒的な力の不均衡がある。実施者にすべてのコントロール権があり、応募者にできることはほとんどないのだ。無力である……。

なんてことを考えているうちに「コロナはいまに始まったことじゃないでしょ……」とか「事前に賞品を確保してなかったんじゃ……」とか意地悪な考えが心をよぎる。闇落ちしそうである。


・懸賞の基本は信頼関係

桜も咲き、昨年のキャンペーン開始から1年が経過。ついに約束は果たされた。丁寧に作られたオリジナルグッズで、品質には大変満足している。本筋からそれるので賞品の詳細については割愛するが、ご興味がある方は現在もキャンペーンサイトが残っているのでご参照いただきたい。


今回のケースでわかったことがいくつか。

こういったキャンペーンでは「応募した本人が忘れている」というパターンが相当あるだろうこと。今回筆者はしつこく覚えていたが、なんらかの行き違いがあっても気づかず放置、というケースも多いのではないか。

また、前述したとおり1度キャンペーンが終わると情報を得る手段はほとんどなく、応募者にできることは皆無。ゆえに「賞品が届かないんですけど」と申し出る人は、かなり少ないんじゃないだろうか。

結局は、互いの信頼によって成り立っているのが懸賞企画だ。冒頭のパズル懸賞雑誌の内情は知り得ないが、「どうせわからないだろ」と悪意をもって放置したのでないことを願いたい。


参考リンク:カレーハウスCoCo壱番屋
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.
ScreenShot:カレーハウスCoCo壱番屋公式アプリ(iOS)