休み明けの月曜という超ド平日に公開が始まった『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』。当然、私(あひるねこ)は見に行くことはできなかったのだが、うらやましいことに当編集部の中澤は初日に劇場へ駆け付け、その感想を記事にしている(ネタバレなし)。
いいなぁと思いつつ、育児や仕事で見に行けない状態が続くこと数日。ある時、中澤が妙なことを言い出した。なんでもシン・エヴァは、話の途中で『刃牙(バキ)』みたいな雰囲気になるというのだ。え? 『刃牙』って……あの『刃牙』? え? この男は一体何を言っているのか。
・謎の新説
エヴァに関する情報を極力遮断していた私に対し、「これはネタバレじゃない」と断った上で、中澤がいきなりエヴァの話をしてきた。だからするんじゃねーよ! その結果出てきたのが、先の「刃牙みたい」発言である。エヴァが終わったせいで脳も終わってしまったらしい。
私はエヴァも『刃牙』も大好きだが、ここまで共通点のない作品も珍しいだろう。あのエヴァが、『刃牙』みたいな雰囲気になるなんてことは未来永劫ないはずだ。しかし中澤は、「見たら絶対分かる」と自信たっぷりに断言する。ホンマかいな? そこで予定を早め……
私もシン・エヴァを見に行くことに。
・ネタバレ注意
ここから先は作品の内容に深く触れるため、まだ映画をご覧になっていない方は今すぐ立ち去るがヨロシ。いいか、絶対に読むんじゃないぞ! 3分間待ってやる。
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・ネタバレ開始
それでは始めよう。冒頭のパリ旧市街での戦闘シーン、トウジやケンスケが暮らす集落の生活、ヤマト作戦、南極へ向かうヴンダー……。とにかく新しい “情報” に飢えていた私は、食い入るようにスクリーンを見つめる。エヴァと共に過ごした25年間が高速で体じゅうを駆け巡るかのようだ。
時には驚き、時には思わず涙しながら、クライマックスへ向けさらに加速する物語に必死でしがみつく私。今この瞬間だけは、他に何も考えたくない。目を、耳を、全神経をエヴァに集中させたい……のだが、そんな時でも脳裏から離れないのが、中澤の例の言葉である。
エヴァの途中で『刃牙』みたいな雰囲気になるで。
エヴァの途中で『刃牙』みたいな雰囲気になるで。
エヴァの途中で『刃牙』みたいな雰囲気になるで。
エヴァの途中で『刃牙』みたいな雰囲気になるで。
エヴァの途中で『刃牙』みたいな雰囲気になるで。
エヴァの途中で『刃牙』みたいな雰囲気になるで。
・『:Q』のアレ
トウジ妹の「エヴァにだけは乗らんといてくださいよ」の如く頭の中でリフレインしまくる刃牙、刃牙、刃牙ッッ! 中澤アイツ何してくれてんねん。まさにエヴァの呪縛ならぬ中澤の呪縛。作品に99.9%集中しながらも、残りの0.1%でつい『刃牙』っぽい雰囲気を探してしまっている自分がいるのだ。
物語の後半。シンジとミサトが最後に言葉を交わすシーンで、私は少し泣いてしまった。その後、シンジは裏宇宙の世界に入っていくワケだが……そこで初号機に乗り込み、同じく13号機に乗り込んだゲンドウとカチ合うシーンあたりで、何だろう。嫌な予感がし始めた。お、おい、まさか……。
場面は第3新東京市に移る。それぞれ槍を手に持つ初号機と13号機。ビルに腰掛けながら、「やるしかねぇな」的なことを言い出すゲンドウ。そして始まる……
地上最強の親子喧嘩ッッ!!!!
・嘘やろ
ほ、ほんげェェェェェエエエ! マジで『刃牙』みたいな雰囲気になっとるゥゥゥウウウウ!! シンジとゲンドウの微妙な関係性は、これまでもエヴァにおける重要なファクターだったワケだが、まさか最後の最後で直接シバき合うことになるとは予想外だった。範馬シンジ、範馬ゲンドウ親子爆誕の瞬間である。
・『刃牙』の空気
自分の手は汚さないキャラかと思いきや、勇次郎ばりにシンジをボコボコにするゲンドウ。舞台が急にミサトのマンションに変わり、テーブルや壁を破壊しながら戦うシーンなどは特に “刃牙み” が強いと言えるだろう。シリアスなはずなのに、どこか妙にギャグっぽい空気なのだ。
中澤にこのことを伝えると、男の口からさらなる驚きの発言が飛び出す。シバき合いの後、シンジとゲンドウが槍ではなく言葉を交わす、エヴァではお馴染みの電車の中でのシーン。なんとあそこが、範馬親子による空前絶後の「エア夜食」に見えたというのだ。いやコイツ止まんねーな!
え、ゲンドウさん「エア味噌汁」とか作ったりしてましたっけ? さすがにそれは妄想が過ぎるのでは? しかし中澤によれば、電車のシーンになった途端、割とスコンとゲンドウが様々なことを認め、熱い手のひら返しをするくだりが『刃牙』そのものだという。だからッッ! さすがにそれは考えすぎ……
とも言い切れない……ッッ!!!
・なくもない
そういえば単行本数冊にわたって繰り広げられた刃牙と勇次郎の親子喧嘩も、「エア夜食」が始まった途端、勇次郎が急に大人しくなり割とスコンと決着がついたような気がする。ま、まさか……。本当にシン・エヴァとは『刃牙』だったのか……?
最後、駅のシーンが終わり、宇多田ヒカルによる目も眩むような2曲の主題歌が流れる中、私はすべてに決着がついたエヴァという神話。そしてエヴァと過ごした小学生時代から子供が生まれるまでの自身の半生に思いを馳せていた。25年……25年である。
それと同時に、なぜ自分はこんな必死にエヴァと『刃牙』の共通点を探っているのか? と自問自答しなくもなかったが、結果的には感無量であったと言えよう。この偉大な2作品に奇妙な類似を見出すかどうかは、あなた次第だ。真実は君と共にある。迷わず進んでくれ。
参考リンク:シン・エヴァンゲリオン劇場版、秋田書店
執筆:あひるねこ
Photo:RocketNews24.
©︎板垣恵介(秋田書店)1992