現在、爆発的な人気を集めている音声SNS「Clubhouse(クラブハウス)」。有名芸能人が続々と参加しており、それにともなう形で登録者が増えている。一体何がそんなに人を魅了するのか? トークイベントのプロに意見を求めたところ、興味深い話を聞くことができた。まるで “流し” のように、さまざまな「ルーム」で話をする人もいるようだ。

・クラブハウスとは?

クラブハウスについて簡単に説明しよう。これは現在(2021年2月9日時点)のところ、iOSのみで利用可能な音声SNSアプリだ。「ルーム」と呼ばれる部屋でフォロワーとおしゃべりしたり、たまたま入室した人とも話をすることができる。他のSNSとの違いはコメント機能がないこと

そして、しゃべった内容を録音したりメモに残すことが禁止されている。したがって、話す内容はその場限りなのが特徴の1つ。詳細については、IT系の専門サイトを参考にして欲しい。


・意外な人物のマッチング

芸能人や著名人が続々と参加するにしたがって、クラブハウスの注目度はドンドン上がっている。状況は「盛り上がっている」と見て良いだろう。とはいえ、何がそんなに魅力なのか、私(佐藤)はサッパリわからない。登録してみたけど、いまいち良さをつかめずにいる。

そこで、東京・高円寺のトークライブハウス「パンディット」の奥野テツオ店長にその魅力について伺った。リアルイベントとの違いは何なのだろうか?


佐藤 「奥野さん、クラブハウスは何が面白いんですか?」

奥野 「たぶん、今が1番面白いんだと思います。何が? というよりも、「盛り上がっている」ってだけで人を惹きつける理由になってる気がしますね。何より、まだ始まったばかりだからルールみたいなものが無いんですよね。それが面白いと思います」


佐藤 「決め事がなければ、何でもできる気がしますからね。具体的に、奥野さんが面白いと思った場面はありましたか?」

奥野 「ありますよ。自分が聞いていたルームに、業界の大御所が来て「お!」と思いましたね。意外な人がルームに入ってくると、それだけで聞いてる方はテンションが上がりますよね

あとは、対立関係にある人同士が、たまたまルームでかち合ってしまって、「この人たちは何を話すんだろう?」って場面に遭遇しました。段取りがあったら起きないようなことが、今のクラブハウスでは自然に起きるんですよ。そういうのハラハラして面白いじゃないですか」


佐藤 「それは面白いですね。なるほど、意外な人物のマッチングが起きる可能性があるんですね。それは聞き逃せない」

奥野 「そうなんですよ。1回でもそういう面白さを知ったら、また聞きたくなりますよね」


・告知の場として

佐藤 「奥野さんはトークイベントのライブハウスをやってる訳ですけど、これからクラブハウスが盛り上がることに危機感はないですか? リアルイベントにとって代わるかもしれないでしょ?」

奥野 「そりゃ危機感はありますけど、僕らの業界よりもラジオ業界の方が戦々恐々としてるって聞きましたよ」




佐藤
 「たしかにラジオっぽいところありますもんね」

奥野 「でも今のところ無料だから、クラブハウス自体でお金を稼ぐのは難しいんじゃないでしょうか。先々はわからないですけど」


佐藤 「いずれは課金要素が入ってくるかもしれないですね」

奥野 「課金要素については不透明ですけど、今、クラブハウスを生かすなら、イベントの告知に使ったらいいかな? と思ってます。どんなジャンルのイベントでもいいんですけど、出演者とか共演者が事前の座談会みたいな感じでクラブハウスを使う。

そうすれば、興味のある人はルームに参加するでしょうし、興味のない人でもクラブハウスをきっかけにイベントを知るかもしれないですしね」

佐藤 「事前告知の場としては、十分に使えそうですね」


・クラブハウスの “流し”

佐藤 「奥野さんもルームを立てて、お話してるんですか?」

奥野 「少しずつですけどね。今はいろんな方のルームを覗いて、お話を聞いています。やっぱり肩書きのある人の方が、スピーカー(ルームで発言権を持つ人)に向いてるみたいです。誰かわからない人よりも、多少なりとも名の通った人や業界に精通した人の話を聞きたいじゃないですか。肩書き関係なく、他愛のない10人くらいの雑談も聞いてて面白いんですけどね」

佐藤 「トピックにもよると思うんですけど、その話題に詳しい人にしゃべって欲しいですよね」


奥野 「でも、肩書きがいい意味で裏目に出ることもあるんですよ」

佐藤 「というと?」


奥野 「知り合いの芸人さんで「コラアゲンはいごうまん」という方がいるんですね。ノンフィクション漫談のピン芸人さんなんですけど、その方が美容系のルームに入ると「コラアゲン」が目につくらしく「しゃべってください」って言われるそうです(笑)

佐藤 「美容とはあまり縁のない方のはず(笑)」


奥野 「ベテラン芸人さんですから、しゃべりは上手い訳ですよ。聞いてる人を満足させられるだけの話はできちゃうんですよね。ほかのルームに行っても、個性的な名前なのでスピーカーになることもあるそうです」

佐藤 「クラブハウスの流しじゃないですか(笑)」
※「流し」とは、ギターなどを手に飲み屋を回り、その場でリクエストに応える歌手のことを指す


奥野 「そうですね(笑)」

佐藤 「いずれにしても、今後はどうなるでしょうね」

奥野 「わからないですけど、まだみんな手探りなので、今が1番面白いと思いますね


──もしかしたら、入ったルームでスピーカーの意外なマッチングが起きるかも? その期待が人を惹きつけているのかもしれない。クラブハウスはこの先、どうなっていくのだろうか? 気になるところだ。

取材協力:高円寺パンディット
執筆:佐藤英典
Screenshot:iOS「Clubhouse」(利用はiOSのみ、招待制)

▼コラアゲンはいごうまんのノンフィクション漫談
https://youtu.be/n2IibLGKTIg