切手や硬貨や小石、推しグッズからポケモンまで、「なにかを集めたい」という人間の欲求は根源的なものだと思う。

観光スタンプじゃありません、とたしなめられることもあるが、御朱印が大ブームになったのも「コレクション性」があるからだろう。

似たものに、全国の城跡で登城記念として販売される「御城印」がある。しかし遠方への旅行や観光がはばかられる現在、盛況とはいいがたい……と思っていたら、逆転の発想でレアものを誕生させた城があった!


・小倉城の御城印

福岡県北九州市、小倉城の御城印を見ていただきたい。通常の御城印は、城名が墨書きされ、城主の家紋などが入っているのが一般的。訪問の記念に登城日を入れてくれることも多い。

しかしこちら、登城じゃなく「籠城記念」と書いてある(※「記念」という言葉は、良い出来事でも悪い出来事でも使います)。

籠城とはその字のとおり城にこもって外敵から身を守ること。長ければ数年にわたるが、時間かせぎをしているあいだに援軍が到着して逆転勝利することもあったという。拠点にこもって、活路が開けるまで時間をかせぐ……


ステイホームのことじゃないかー!!


本来、日付が入るところには「緊急事態宣言中」とある。この御城印、緊急事態宣言中のみ、かつネット販売限定で発行されるレア御城印(500円)なのだ。「ご自宅で “籠城” 中の皆様にお届けする」とのこと。宣言が解除されれば販売終了する。

「外出自粛中」バージョン(400円)もあるぞ。こちらは新型コロナ感染状況が落ち着いたら販売中止予定だという。悲観的観測だが、しばらくは販売されるだろう。


通常、小倉城で取り扱っている御城印は「来城記念」と、天守閣への登城で購入できる「登城記念」の2種。いずれも現地販売だ。

○○スタンプラリー、鉄印帳、マンホールカードなど、旅に関連する収集アイテムは多いが、普通は「思い出」と結びつくことで価値が生まれる。だから人から譲り受けたものや、転売されたもの、ネットショップで手に入れたものってなんの意味もない……と思っていたけれど、これは違う!

自宅で購入するのにまったく違和感なく、何年かしてから「あの年は大変だった……」と振り返るきっかけにもなる。すごいアイディア! まさにピンチをチャンスに変える逆転の発想だ。


・籠城戦じゃ!

籠城戦は忍耐力の勝負。「自粛疲れ」とかいっている場合じゃない。一瞬の油断が敵の侵入を許すこともあるからな。

もちろん、ただ時間の経過を待っているだけでは解決しない。戦国時代にも勝敗をわけたのは援軍の存在だったという。のろしや伝令で外部と連絡をとり、互いに心が折れないよう励まし合いながら到着を待つ。日頃から食糧などの準備も必要だ。

現代に当てはめるならば、よく備え、長期戦の覚悟で臨んでいるうちに予防薬や治療薬の開発が進み「誰でも治る病気」になる。最前線で戦ってくれる援軍……たとえばエッセンシャルワーカーへの感謝と敬意も忘れちゃいけないな。今しばし、心して籠城しよう。


参考リンク:小倉城小倉城通販サイト
Report:冨樫さや
Photo:RocketNews24.