今まさに『アマビエ』は “時の人” ならぬ “時の妖怪” である。疫病退散にご利益があるとの言い伝えから、コロナ禍の守り神的ポジションに突如抜擢されたのだ。私を含むほとんどの国民は、今年初めてその存在を知ったのではないだろうか。

アマビエについて正式に定義するのは難しいが、よく描かれる姿は “魚寄りの半魚人” といった感じ。ちょうど往年のヒット曲『およげ! たいやきくん』の “たいやきくん” のようだ。そういえば横向きに描かれることの多いアマビエ、たい焼きに少し似ているなァ。

最近ではあらゆるシーンでアマビエグッズを目にするが、どうやら調べた限り『アマビエ風たい焼き』はまだ登場していないっぽい。これは……うまくすれば大ヒットの予感……!

・たい焼き下準備

さっそく購入したのは『おやつdeっse(でっせ)』というたい焼き器。一体ナゼたい焼き器にその名を付けたのか? 詳細は不明だが、通販サイトで多くの高評価を持つスグレモノらしい。購入時の価格は3288円(税込)。疫病退散と商売繁盛のためなら安いものである。

さて計画は至ってシンプル。たい焼き生地を食紅で着色し、お絵かきの要領でアマビエ風に仕上げるのだ。

食紅は混ぜたり濃度を調整すれば無限に色を作り出すことができる。アマビエといえばカラフルなウロコやロングヘアーが魅力であるから、10色ほど生地を用意しておくことにしよう。

生地レシピは『おやつdeっse』のパッケージに記されているのだが、今回は俗に言う “白いたい焼き” にチャレンジしようと思う。なんとなくその方がキレイに発色しそうな気がするから。白いたい焼きのレシピはネット検索すればいくつもヒットするので各自探してみてほしい。『タピオカ粉』や『牛乳』を使用するのが主流のようだ。

白い生地を小分けに着色して下準備完了! スッゴク簡単!

・脳内シュミレーション

私の作戦はこうだ。たい焼き器を加熱したら、まず最も表面側に配置したい色の生地を乗せる。焼き固まった部分は他の生地と混ざらないはずだから、そういった具合に少しずつ加熱しながら異なる色の生地を重ねていく……という段取りなのである。

目や尾ヒレといった、イラスト用語で言うところの「主線」から黒色で描く。うん、なかなかイイ感じだ。フッ素加工のたい焼き器は水分をはじく特性があるようで、想像みたいに “サラサラ” とはいかないけれど……時間をかけ、ゆっくり、ゆっくり描(えが)いてゆく……そして……

狙いどおりに熱で固まった主線は…………

私の鼻息で跡形もなく吹き飛んだのだった…………!

・灼熱と絶望

実際のところ、焼いた生地は予想外に軽く “パリパリ” としており、固まったそばから剥がれ落ちてしまうのである。おまけに液状の生地はユルユルとしてまるでシチュー。細かい作業は絶望的に難しそうな雰囲気だ。

ここまで来といて簡単に諦めるわけにもいかず、灼熱の鉄板に向かってチャレンジを続けること1時間。しだいに暑さと焦りで視界がぼやけてきたぞ。「ボツ記事」という言葉が脳裏をグルグルと回り始めたころ……

私は作戦変更を決めた。予定よりデザインを簡略化したのだ。まずは土台となる髪の毛を中央に配置。これが生地の流れをせき止める “土手” の役割を果たす。

そこから色を変えて髪の毛を増やし……

ウロコも描き込んだら……

ものすごい芸術作品みたいになった。

・意外にも

加熱と冷却を繰り返した生地は、気づけば端がめくれ始めてる。これはこれでキレイな気もするが、今のところアマビエじゃないことだけは確かだろう。

……とか考えていても仕方がない。「ままよ」とばかりにアンコを乗せ、隙間に生地を流し入れる。あとはフタをして神に祈るのみだ。

焦がさないよう慎重に両面を焼く。

恐る恐る鉄板を開いてみたら…………

おっ!? アマビエ……ではないかもしれないが、思ったより悪くないかも!?

・デザインはシンプルに

考えてもみればアマビエに限らず、私は “色の混ざったたい焼き” を見たことがない。要するに生地の性質上、色付きたい焼きは工程に手間がかかりすぎるのではないだろうか。

しかし今回作成した『アマビエ焼き』、アマビエかどうかはともかく、我ながらけっこうカワイくできたんじゃないかと思う。キャラクターにこだわらず「カラフルたい焼き」というつもりで挑めばよかったのかもしれない。

ちなみに『スライム焼き』『コイキング焼き』などは、けっこうそれっぽく仕上げることができた。

キャラクターたい焼きを作る際は、なるべく簡単なデザインのキャラをチョイスするといいだろう。

無念にも今回『アマビエ焼き』の商品化には至らなかったわけだが、改良を重ねればスゴイのが作れそうな予感だけはヒシヒシと感じた。それに自分で作ったたい焼きは非常にカワイイものだ。無病息災の祈りを込めて、家庭でお好みのキャラ焼きにチャレンジしてみたら……お子さんとか、大喜びする気がするな〜多分!

Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.

▼おいしいけど、ちょっと生地が厚すぎたようです

▼スライム焼き

▼コイキング焼き

▼戦いのあと