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【デジタル遺品】死後に残る黒歴史どうする? 家族にたくす『デジタル遺品ガイドブック』や、自動でデータを消す方法について

2020年8月18日

「デジタル遺品」という言葉をご存じだろうか。故人がパソコンやスマートフォンの中、あるいはネットワーク上に残したデータのことで、写真や動画や書類、SNSアカウント、投稿、会員情報など多岐にわたる。テレビ朝日のドラマ『dele』で知ったという人もいるかもしれない。

小学生からシニアまで情報機器を持つ時代、家族が急に亡くなり、アカウントを削除したい、逆に保護したい、デバイスを処分したいといったときに困るケースが相当あるそうだ。

このたびパソコンのトラブル解決を請け負う「日本PCサービス株式会社」が『デジタル遺品ガイドブック2020』(PDF)を公開。誰でも無料でダウンロードできるので、この機会に考えてみるのはいかがだろうか。


・年々増える、デジタル遺品に関する相談

誰しも1度は「自分が死んだらこのアカウントどうなるんだろう」と頭をよぎったことがあるだろう。休眠アカウントになるのはともかく、荒らしや乗っ取りの被害に遭ってもどうすることもできず、永遠にネットの海を漂うのかと思うと悲しいものがある。

誰かに削除して欲しいが、利用しているサービスは自分にしかわからない。パソコンやスマホを見れば見当がつくものの、そもそも端末は自分にしか起動できない。

日本PCサービス株式会社では通常のパソコン修理のほか「デジタル遺品サポートサービス」を行っているが、年々遺族からの相談が増加。半数以上が「パソコンのパスワード解除」に関するもので、続いて「データ削除や移行の相談」「ソフト関連のトラブル・設定」「パソコンの設定見直し」が並ぶ。

具体的には故人のパソコンを処分したい、パソコンに不具合が起きたが設定がわからない、加入していた会員サービスの解約ができない、ネットバンクなどデジタル資産の確認ができない、といった相談があるという。

近年では自動更新のサブスクリプションサービスも多いので、知らないうちに契約が続いていることもあるだろう。中には故人が家族に黙って株式やFXの取引をしていたり、借り入れがあったりと、早急に手を打たなければならないケースもあるそうだ。

同社ではパスワード解除やデータ復旧、パソコンの初期化、さらには有料課金サービスの停止やアカウント削除のノウハウ提供を行っている。


※承諾なく他人のIDやパスワードを使ってネットワークにアクセスすることは「不正アクセス禁止法」に触れるおそれがある。また、サービスによっては故人の依頼や同意の上でのログインでも規約違反となることがある。同社が行っているのは規約に沿った「アカウント削除申請」のサポートまで。


・ガイドブックの内容は

このような困りごとが起きないように、同社では生前からの準備の大切さを訴える。ガイドブックの内容は「デジタル遺品とは」「よくあるデジタル遺品のお困りごと」「生前にするべき準備」「デジタル資産継承メモ」「デジタル遺品のお困りごと解決方法」の5章だて。

元気なうちに使っていないデバイスの処分やデータ整理、エンディングノートの作成を勧めている。家族写真のような大切な思い出は共有のストレージに保存することも一案だ。

基本的に、自分の死後は「家族に情報を残し、対応してもらう」という趣旨で、IDやパスワードを紙ベースで残せるようメモ欄もある。オンラインのサービスについては、家族が代理でログインしてもよいという「承諾の意志」を示しておくことが後々役に立つだろう。

記入したらいずれ誰かが見つけるよう、どこかに保管しておく形になる。「お盆休みにご家族で話し合うきっかけとなることを期待しています」とのことだった。


・家族に知られたくないときは?

……と、ここまでは信頼できる誰かに対応してもらう前提だが、たとえ親しい間柄でも人には見られたくない情報もあるはずだ。自分1人でできる対策はあるだろうか。

パソコン内のデータであれば、いわゆる「死亡時自動削除ソフト」「遺言ソフト」のような「デジタル終活」ツールが挙げられる。過去には『死後の世界』や『僕が死んだら…』といったフリーソフトが話題になった。

端末が起動されない期間で「死亡」を判断したり、遺族に特定の箇所をクリックさせることで、データの削除や遺言の表示が行われる。復元不可能とは言い切れないだろうが、実は国家機密を握っている、とかでなくプライバシー保護が目的なら十分だと思う。


iPhoneの場合、連続してパスコードを間違えた場合に「すべてのデータを消去する」設定ができる。こちらも完全ではないが、総当たりで突破されることは防げる。誕生日や記念日のたぐいだと家族は簡単に解除できるので、推測できないパスコードが必要だ。

ただし、ここに挙げた方法で「データが消去された」ことを知ったときの遺族の心痛は、おそらく相当なものがある。本人、家族どちらも納得できる方法はないだろうか?


・Googleの「アカウント無効化管理ツール」

こうした事態に先進的な姿勢を見せているのがGoogleだ。過去記事で報じた「アカウント無効化管理ツール」を現在日本でも利用できる。

必ずしも死亡を意味するわけではないが「一定の期間、自分のアカウントを利用していない状態」を検知し、アカウントを削除したり、あらかじめ登録した人に通知してくれる。その人にアクセス権を付与することも可能で「写真はOK」「メールは不可」などこと細かく設定できる。

システムが起動するまでのカウントダウンは、最短3カ月から最長18カ月まで。Gmailを使っている人ならほぼ毎日ログインするだろうから、うっかり作動してしまうことはないだろう。

故人のプライバシーを守る、遺族に大事な情報を残す、という2つを両立する画期的な仕組みだと思う。自分が本人側でも遺族側でも納得できるのではないだろうか。このようなサービスが今後、他社でもスタンダードになっていくことを願う。


なお、Facebook、Twitter、Instagramでは今のところこういった自動化された機能はないが、遺族などから削除申請が出せる。逆にデータを残して思い出を共有したい場合は「追悼アカウント」(Facebook・Instagram)に移行できる。

Facebookの場合、事前に「追悼アカウント管理人」を指定しておくことや、アカウント削除を希望することもできる。いずれも生前に設定しておく。


・備えあれば憂いなし

働き盛りだったり健康だったりすると、自分が死んだときの備え……といわれてもイマイチ現実感がないが、家族となると話は一変する。たとえば老父母や配偶者に万一のことがあった後、パソコンやスマホが開けない、という事態はかなり切実。自分が家族なら「なんとしてでも開きたい」となるのではないだろうか。

誰もが、どちらの立場にもなり得る。お互いのデジタル遺品の管理について、声をかけあうことをお勧めしたい。


参考リンク:日本PCサービス株式会社Google「アカウント無効化管理ツール」、死亡時のアカウント対応(FacebookTwitterInstagram
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.

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