病(やまい)流行らば早々に私を写し人々に見せよ──弘化3年(1846年)、熊本の海中から現れて未来を予言したという妖怪アマビエ。
電話もネットもない江戸時代に「拡散希望」とはSNS社会を先取りしているが、新型コロナウイルス収束を願う最近の世情とぴったりマッチして一躍注目を集めた。自作の絵や立体作品を思い思いに披露する「アマビエチャレンジ」も記憶に新しい。
和菓子や雑貨、縁起物など商品化も盛んだが、ここに最強のアマビエグッズが誕生した。繰り返すが間違いない、最強である。江戸時代のオリジナル版アマビエと、巨匠・水木しげる先生版アマビエをセットにして文具にしたものだ。とにかくすごい迫力なのでご紹介したい。
・アマビエ クリアファイル&シールBOOK(税込990円)
商品名を「アマビエ クリアファイル&シールBOOK」といい、宝島社から2020年5月に発売。
セット内容はA4クリアファイル、チケットサイズファイル、シール15枚、アマビエの謎に迫る小冊子の4点。
書店や雑貨店のほか、宝島社のオンラインストアでも購入できる。ほとんど厚みのないコンパクトな商品なのだが、店頭で見ると思わず「うおっ」と声が出る迫力である。
多くの商品に埋もれていたにもかかわらず、筆者には後光が差しているように感じられた。それではセット内容を詳しく見ていこう。
・A4クリアファイル
江戸時代の瓦版(京都大学附属図書館蔵『新聞文庫・絵』より)をプリントしたA4クリアファイル。厚生労働省の啓発アイコンにも登場し、見慣れた姿のアマビエである。
が、とにかくデカい。図書館のハンコが押されており、そのサイズから考えるとかなり拡大印刷されていることがわかる。おそらく現物の2倍くらいにはなっているだろう。大迫力である。
裏面には瓦版の文面がそのままプリントされている。渋い。
なお、もともとは役人が江戸へ報告する際に写した絵で、現存するアマビエの記録はこの1点のみ。しかし実は、農業の豊凶と疫病の流行を予言して、厄除けに「私を描き写せ」という妖怪は珍しくなく、多くは「アマビコ」という名なのだという。アマビエはアマビコの誤記である可能性が高いのだとか。
・チケットサイズファイル
続いて水木しげる先生バージョンのアマビエ。圧倒的画力! 神々しい!!
水木先生も「神に近い妖怪なのだろう」「妖怪というより神怪とでもいうべきものか」と解説している。そのためか、不気味でおどろおどろしい妖怪画ではなく、どこか幻想的で女性的な描き方をされている。瓦版にはない「手」があるのは水木先生のアレンジ。
水木先生は2015年に亡くなっているので、もちろん最近の「アマビエチャレンジ」で描いたものではない。同梱の小冊子によると『水木しげるの続・妖怪事典』(1984年)に収録するための作品だったという。
チケットサイズで、裏にはフラップつき。マスクを入れるのにもちょうどいいサイズになっている。アマビエ柄のケースにマスクを入れるなんて、ものすごく「守られている」感じがする。
・シール15枚(台紙A5判)
スマホや文房具など、好きなものに貼ることができるシール。オリジナル版と水木先生版の両方が1枚になっている。枠あり、枠なし、顔だけトリミング、文字ありなど、よく見ると大小いろいろなパターンがあり凝っている。身の回り品に貼ろう。
・アマビエの謎に迫る小冊子(8ページ)
最後に「アマビエの謎に迫る小冊子」。オリジナル版、水木先生版、それぞれに解説がなされている。単なるキャラクターグッズに留まらず、知識が得られる内容になっていることがとてもよい! この冊子がなければセットの価値は半減といってもいい。わずか8ページのミニ冊子だが、永久保存版である。
・ご利益ありそう
疫病を予言する妖怪アマビエ……人々の記憶から去り、過去のものになることが本当は幸せだ。しかし、しばらくはその加護にあやかりたい。
ちなみに筆者は店頭でビビッときて即買いし、ここ数年で入手したもののうち最高の文具だと思っている。アマビエ伝承を信じるかどうかはあなた次第だが、妖怪グッズとしても秀逸なのでぜひ。