カラオケの鉄人(通称:カラ鉄)の発行する『テレワークパスポート』がスゴい、という件については以前の記事でお伝えした。が、その期間が終了するのを待っていたかのように4月中旬、多くのカラオケ店と同様カラ鉄は休業期間に突入してしまったのである。
それから約1カ月……ついに俺たちのカラ鉄が動いた! テレワークパスが再び販売されていると知った私は、3密を避けつつ小走りで店舗へ向かう。すると店のドアを開けた瞬間、耳に飛びこんできたのは個室から鳴り響く爆音の『リンダリンダ』じゃないか。
時刻はまだ14時前である。こんな平日の昼下がりに “リンダリンダ大絶叫” はタダごとではない。自粛生活によって蓄積した民衆のフラストレーションここに大爆発、ということなのだろうか……?
・ルールを解説
「テレワークパスポートひとつ」とフロントで告げたところ、スタッフの男性は申し訳なさそうに「受付時間外なんですよ」などと言う。どういうことか尋ねてみれば、そこにはカラ鉄がこの非常事態に全力で戦いを挑んだ様子が垣間見えた。
まず本来カラオケとは歌を歌うところであり、当然ながらテレワーク利用のほうがイレギュラー。営業再開に際してカラ鉄はメチャ思い切った対策を打ち出したのである。
それは「 “1人カラオケのみ” での営業」だ。
新型コロナ感染拡大の恐れがあるとして一時期、特に糾弾されていた業種の中にカラオケ店も含まれていたように思う。しかしこれはあくまでも「複数人で密集する」状態に問題があるということで、歌を歌う行為自体は何も悪くない。
つまりカラオケは個室という特性上、1人で利用するのであれば飲食店やコワーキングスペース等より感染リスクは低いとも考えられるのだ。「カラオケが営業再開」ときけば眉をひそめる人もいるのかもしれないが、この判断をどうか冷静に評価してほしいと思う所存である。
さらにカラ鉄は1日の営業を二部制にし、一部終了の14時をもっていったんカラオケ客は全員店外へ退出(テレワークは継続して滞在可能)、2時間かけて換気と消毒を行うという徹底した対策も講じている。
このダメ押しともいえる対コロナ営業スタイルにより、ちょうど一部終了のタイミングで店舗を訪れた私は利用客の「ラスト曲」を耳にしたことになるワケだ。そういうことなら「昼からリンダリンダ大絶叫」も納得がいくというもの。
よって現状13:30〜16:00の時間帯は、テレワークプランを含む全ての受付業務が一旦停止になる、という事情らしいから注意が必要だ。
・激安そして良心的
今回発売のテレワークパスは3種類。
・おためしパスポート(入会日から土日祝を除く30日間の期間内で3回使える)
・ライトパスポート(入会日から土日祝を除く30日間の期間内で10回使える)
・マンスリーパスポート(入会日から土日祝を除く30日間の期間内で何回でも使える)
通常価格はドリンクバー付きで各1980円、2980円、3980円(税抜)とすでに十分安いのだが、『SNS割』を利用するとさらに各1480円、1980円、2480円(税抜)まで大幅に値引きされる。
『SNS割』は “テレワークプランのポスターを撮影しSNSに投稿する” だけで適用されるしくみだ。LINEの『タイムライン』や、フォロワー・投稿がゼロのアカウントでも問題ないとのことなので、テレワーク利用者のほぼ全員に適用されると言っていいだろう。
ええと、「土日を除く」となると……1カ月間で利用可能なのは20日間強か。20日間強のうち11回以上利用するなら『マンスリー』がお得なワケだけど、絶妙に微妙なラインだなァ……う〜ん。
……とかケチなことを考えつつプランを選択した私は、渡されたパスを思わず3度見した。そこに記された利用期間は確かに「5月14日(入会日)〜 6月24日」とある。
つまりこの場合の「土日祝を除く30日間」とは、「土日祝をあらかじめ除いたトータル30日間」のこと……! あまりにも良心的、ある意味で商売下手ともいえるカラ鉄の『マンスリー』は、正真正銘「ガチ30日間」だったのだ。な、なんたるお得度!
「ガチ30日間で11回以上」なら多くのテレワーク難民が確実に消化するラインだろう。「基本は自宅だけどたまに気分転換」という人なら『ライトパス』もいいかもしれないね。
・利益なんか無いのかもしれないけど
マンスリーパス税込2728円で仮に30日間フル利用した場合、1日あたりの使用料は約91円となる。
充電し放題、ドリンク飲み放題、おまけに使用後は消毒作業。この金額で店に利益があるとは思えない……というか間違いなく赤字に近いだろう。しかしながらカラ鉄側とて、もはやそういった次元で営業しているわけではない気がするのだ。
苦境のカラオケ店はそれでも従業員のため、困っている利用者のため、ひいてはコロナ騒動の終息を見据えて「開店状態を保つために」、あえて開店しているという側面もあるのではないだろうか。
自営業の我が父は記録的大雪のさなか「 “よく閉めている店” という印象を持たれるのが一番ダメ」と言い残し、客のひとりも来ぬ仕事場へ出かけたものだ。そんな父の姿とカラ鉄とが、今は不思議とダブって見える。
現在のところカラ鉄ではカラオケ・テレワーク利用ともに原則として1部屋につき1人利用のみ受け付けている。ただし例外として家族での来店であれば複数人での利用が可能だ。
また通常時は「飲食物の持ち込み不可」であるが、現在カラ鉄ではフード・ドリンクメニューの提供を中止しているため一時的に飲食物の持ち込みが可能となっている。
現在の料金設定はカラオケ・テレワークともに「ドリンクバー込み」だ。ただしカラ鉄にはもともとドリンクバーの機器がない店舗もある。私の利用している店舗の場合は即席のドリンクコーナーを設置して対応している様子なのだが、どうしてもドリンクの種類が限られてしまう。
よって「絶対にアイスコーヒーが飲みたい」等といった事情を抱えている人は、必ず事前に確認してからパスを購入しよう。間違っても後から「いつもはアイスコーヒーがあるのに」などと苦情を言わないであげてほしいのだ。だってカラ鉄こんなに頑張ってるんだから……!
・注意点まとめ
それではカラ鉄のテレワークパスを利用するに際して、現時点での注意点をおさらいしておこう。
・最適のプランを見極めよう
・SNSアカウントを用意しておこう
・利用時間は連続して滞在可能
・ただし受付のみ13:30〜16:00は不可
・カラオケは利用できない
・家族以外の複数人での利用不可
・ドリンクバー付きだが店舗によって内容が違う
・時間内の出入りは自由
……と、大きくはそんなところだろうか。1枚のパスポートで多数の店舗を利用可能だが、詳細は各店舗によって異なるため事前にHPなどで確認が必要だ。
いかんせん現在は通常時ではない。カラ鉄に限らず施設や飲食店はこれまでと違うマニュアルで動いている。そりゃあ利用者にとって多少の不自由はあるやもしれないが、誰もが「開店してくれてありがとう」という気持ちを持って利用してほしいものです。
参考リンク:カラオケの鉄人HP
Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.
▼多数の店舗が利用可能
▼手厚いコロナ対策
▼カラオケ利用は1人30分350円(税抜)