アパホテルが “4泊5日で1万5000円” という破格の『テレワーク応援プラン』を実施している件については、先日の記事でお伝えした。カフェなどの相次ぐ休業で仕事場の確保に困り果てていた私が、すぐさま飛びついたのは言うまでもないことだ。
『テレワーク応援プラン』は当然ながらホテルへの出入りを制限するものではない。しかしながら私は今回、あえて5日間のべ108時間を “一歩もホテルを出ずに” 過ごしてみることにした。
今月に入ってから都内ホテルでは新型コロナウイルスの軽症者や無症状患者の受け入れを開始。注意しながら生活しているとはいえ、突然隔離を強いられる可能性は誰にでもあるのだ。心の準備がてらにプチ隔離を体験しておけば心強いと考えたのである。
・ほとんどシティホテル
作家さんがよくやるという「ホテルでカンヅメ」状態を体験してみたかった、というのも理由のひとつだ。テレワーク難民となってからは仕事がサッパリはかどらないのである。ホテルなら集中してバリバリ書けるに違いない。
今回私がカンヅメ隔離体験を決行するのは『アパホテル新宿歌舞伎町タワー』。
チェックイン後の精算などは全て機械で行えるしくみだ。なお今回の隔離体験ルールだが、基本的には部屋から一歩も出ずに生活するものだ。ただし栄養面を考慮して1日1回出前をとり、その受け取りの際のみエレベーターまで移動することとする。
キャンペーンで滞在可能なのは初日の朝8時から5日目の夜20時まで。もちろん急病など不測の事態が起きれば誰かに助けを求めるほかないのだが、可能なかぎり自力で対処し計108時間を乗り切りたいと思う。
ちなみに現在レストランや朝食ビュッフェ等は休業となっているが、最上階の大浴場はテレワークプランでも利用可能。通常の連泊と異なる点は「室内清掃は滞在中1回」という点のみだ。タオルやアメニティは毎日交換してもらえるぞ。
28階建ての『歌舞伎町タワー』はその名の通り細長くてマンションみたいな構造だ。シングルタイプのお部屋はオシャレで綺麗! ホテルによっては「セミダブルです」と2人で押し込まれそうなほど広さがある。
ベッドはフカフカだ!
窓から中央線と新宿のコンクリートジャングルが一望できる。
水圧もバッチリ!
・ドキドキの初日
私がバリバリ執筆することになるであろう机は申し分ない広さである。頭上にはライトも照らされており、視力低下の心配はなさそうだ。
荷物をほどいた私はさっそくバリバリと仕事をこなす。この時点で時刻は20時。開始から12時間が経過したことになるが、なんなら12日間でも書き続けられそうな気分だ。まさに絶好調! このまま朝までコースかな!?
・悪夢の2日目
……とか考えてたら寝てしまった。こう見えて不潔嫌いな私は通常、どれだけ酔っ払っても “シャワーを浴びずに寝る” ということをしない。にもかかわらず歯も磨かずに眠ってしまったというのは、非日常が生んだ落とし穴としか言いようがないだろう。
電気もテレビも付けっぱなしだったためか、夜中何度も目が覚めた。そのたびに「誰かに見られているような気配」を感じ、寝ぼけながらも恐怖を感じたものだ。残り4日間、一体どうなってしまうのでしょうか……。
そんな感じで迎えた2日目の精神状態はハチャメチャだった。机に向かい原稿を書くも、「自分が一体何を書いているのか」が自分でも分からなくなってくるのである。そんな時は気分転換に外の空気を、と言いたいところなのだが……
当然ながら地上25階の窓は開閉不可。気分転換といえば顔を洗うこと、あとは食うことくらいしかない。よって事前に買い込んでいたスナックやカップ麺を、腹も減っていないのに惰性で口に入れるという悪循環が生じる。
そうこうするうち「こんなみすぼらしいメガネデブの書く文章を、一体誰が読みたいというのだろう」という最悪な思考へと陥ってしまった。私の身なりは普段もこの程度であるはずだが、なぜかこの日は “迫りくるぜ痛烈な自己嫌悪!” といった塩梅なのである。
おまけに「誰かに見られている」という感覚が、昨夜より増している気もするのだ。まさか幻覚? 被害妄想? これが隔離の恐ろしさだというのか……?
…………ん?
アアァーーーーーーーーーーーーーッ!!!?
・笑いごとではない
目の前の大きな鏡を見て私は愕然とした。ホテルの机には鏡が付属しているパターンが非常に多く、ここアパホテルも例外ではない。つまり私は無自覚のうちに「自分の顔と向き合いながらの作業」を連続で行なっていた……すなわち「己のみすぼらしさ」を常に感じ続けていたということになる。
かわいい部屋着にフルメイクでもしていたならよかったが、私の現在の姿はといえば……ホテルの寝巻きを身にまとい、スッピンメガネに頭はボサボサ。おまけに部屋も汚いときている。こんなもん長時間見せられたら、そりゃ自己嫌悪にもなるだろう。
・ってことで
ここで「気分アゲるためにメイクしよ☆」と思えるほどの女子力を持ち合わせていない私は、目の前の鏡を隠してしまうことにした。
すると効果は歴然! マジで集中力が戻り、イライラや不安がなくなったのである!
と同時に、ずっと感じていた視線も消えた。
急なテレワークで仕事のしづらさを感じている方は多いはずだが、それは意外にちょっとしたことが原因なのかもしれない。まずは近くに鏡があったなら、とりあえず隠してみてほしい!
Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.
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