日本アニメ史に燦然と輝く作品『天空の城ラピュタ』。パズーとシータの出会いから壮大な物語が展開される本作は、ボーイ・ミーツ・ガールの教科書的作品です。そのキラキラとワクワク、そして切なさを残しつつも気持ちいいエンディング……最・高

今期、そんな『天空の城ラピュタ』のような普遍的な光を放つボーイ・ミーツ・ガール作品に出会ったのでご紹介します。

・『虫籠のカガステル』

その作品の名前は『虫籠のカガステル』。人が巨大な虫になる奇病・カガステルが発生し、人口の3分の2が虫に食い殺された世界が舞台です。そんな中でも、国家はなんとか形を保っており、人同士の争いも相変わらず続いている模様。舞台設定としては『風の谷のナウシカ』のような終末感が漂っています。

主人公のキドウは虫を駆除する駆除屋で、旅商人のジンの護衛で荒野を車で走っている際、虫に襲われている車を発見。救出へ向かいます。

『ルパン三世カリオストロの城』を彷彿とさせる導入とアクションの後、なんとか救出を成功させるキドウ。しかし、その車を運転していた男性グリフィスは瀕死の重傷で、死の間際に気を失っているヒロインの少女イリをキドウに託します。「この娘を母親のところへ連れていってくれ」という言葉と共に。

・物語の謎

ここまでは100点! さらに言うと、ボーイ・ミーツ・ガールが大好きな僕(中澤)は、この時点で「イリとグリフィスは親子ではない」と予想しました。『虫籠のカガステル』が実際どうなるかは置いておいて、あくまでこの時点での僕の妄想です

出自の謎がやがて壮大なストーリーに繋がっていくというのはお決まりのパターン。そして、それを踏まえると、『虫籠のカガステル』には物語が動き出した時点で以下のようながあります。

・イリは何者か?
・グリフィスはイリとどういう関係なのか?
・母親はどんな状況にあるのか?

──壮大なストーリーの匂いがしますね。この期待感も含めての100点だったわけです。とは言え、ここまでで100点を取るアニメって別に少なくないんですよ。問題はこの後

語り切れずに終わるパターンがむちゃくちゃ多い。ダイジェストみたいになったり、謎を放り投げたり、母親に会わずに終わったり……。

・王道ボーイ・ミーツ・ガールの宿命

話のスケールのデカさゆえに、落としどころを見つけるのが難しいのは、王道ボーイ・ミーツ・ガールのSFアニメの宿命と言えるかもしれません。あまりにその宿命を克服する作品が少ないので、僕は語り切れないこと前提で見てました。

勝負は「まあこれならアリ」っていう落としどころを見つけられるかどうかかなと。ところが、そんなことを思いながら続きを見たところ……気づけば一気見してました。

全12話を2日で。無意識に次の話を再生しているうちに夜になってました。でも、寝る前に、あと1話ねじこみたくなる余韻。正直、翌日が来るのが待ち遠しかった。

そして、何より壮大なスケールの話を12話で見事に語りきっています。王道に挑んでその高すぎる壁を打ち破っている稀有な作品だと思いました。

・表情

しかも、このアニメ、ほとんどがCGなのもスゴイところ。何がスゴイかって、僕、実はCGアニメがそんなに好きではないんです。妙にラインがツルッとしてたり、動きにギコちなさを感じたり、表情が乏しかったり……。

しかし、そんな僕でも感情移入できるくらい本作のCGはよくできてました。イリのコロコロ変わる表情は思わず胸キュンしてしまうレベル。声優・花澤香菜さんの演技も非常にマッチしており、瑞々しいヒロイン像が描かれています。

古くからの伝統を最新技術で表現した本作。個人的には『天空の城ラピュタ』にあるような王道ボーイ・ミーツ・ガールの良さをビシバシ感じました。「これ! これなんだよ……」って感じです。

・いまいち話題になってない理由

と、ここまで熱く語ってきましたが、あなたはこのアニメを聞いたことがありますか? 正直、僕は知りませんでした。人気のアニメはトレンドに上がるし、ニュースにもなる世の中なのに、おそらく『虫籠のカガステル』がそういう取り上げ方をされたことはないと思います。なぜなら本作は……


Netflix独占配信のオリジナルアニメだから

独占配信なので現状Netflixでしか見ることができません。そして、Netflixのオリジナルアニメは全話一挙公開。つまり、『虫籠のカガステル』は配信開始の2020年2月6日の時点で12話全てが公開されているんですね

一方、日本の地上波アニメは毎週決まった時間に1話が公開される形式。その放送がキッカケになり、ツイートなどが放送時間に集中します。それを毎週繰り返すことで話題感が大きくなっていき、トレンドに入ったりニュースになったりするわけですが……

全話一挙公開だと見るペースは人それぞれなため、話題が集中するキッカケがありません。そのため、話題が浮上しにくいのかなと僕は分析しています。ちなみに、Twitterの公式アカウントとかもありません。硬派すぎるぞ『虫籠のカガステル』!

・Netflixオリジナルアニメの強さ

それにしても、1話1話が映画みたいなクオリティーのNetflixオリジナルアニメ。これが資金力か。例えるなら、地上波全部がインディーズでNetflixだけメジャーっていうくらい質の平均レベルが違います。

というわけで、話題にはなりにくいけど現代最高峰のボーイ・ミーツ・ガールになっている『虫籠のカガステル』。良い感じに現代版ラピュタしてますので是非見てみてください。

参照元:虫籠のカガステル
執筆:中澤星児
(C)2019 橋本花鳥/徳間書店・「虫籠のカガステル」製作委員会
© NETFLIX, INC. AND IT’S AFFILIATES, 2020. ALL RIGHTS RESERVED.

▼『虫籠のカガステル』 PV