2011年の東日本大震災から9年の月日が流れた。私(佐藤)はほぼ毎年、東京・新宿アルタ前に、14時46分に足を運んでいる。今年は新型コロナウイルスの影響を考慮して、追悼式典は執り行われなかった。したがってアルタ前の大型ビジョンに式典の様子は流れることもなく、アルタの親会社である三越伊勢丹グループの被災地に向けたメッセージが表示されるにとどまった。

約2分間のメッセージが終わり、その場を立ち去ろうとした時、ミュージカル映像が流れ始めたのである。2018年に制作された『MIRAI 2061』だった。

・メッセージ

3月11日が来る度に、あの当時のことを振り返る。地震発生後のJR新宿駅は混乱しており、駅の周辺に人が集まって、誰もがうろたえていた。電車が止まっていたので、自宅まで約1時間の道のりを歩いて帰った。その途中で立ち寄ったコンビニは、棚が空っぽになっていた。余震で建物が揺れる度に震えあがっていた覚えがある。

震災の翌年、2012年のアルタ前は休日だったこともあって、誰もが足を止め、大型ビジョンに映し出される追悼式典の様子を見ていた。ここ数年は、立ち止まって黙祷を捧げる人も少なくなったように感じるが、誰もが安心して日常を送れることは幸いだと思う。


2020年3月11日14時46分、株式会社スタジオアルタならびに三越伊勢丹グループから、次のメッセージが送られた。


「被災地の新たな再生を、強く願って
再生への新たな一歩を踏み出している被災地の皆さまのご健康をお祈り申し上げますとともに、三越伊勢丹グループとして明るい未来のために力を合わせてまいります。」


過去のメッセージと同一の内容ではあるが、大きな意義があると感じられた。


・MIRAI 2061

時間に合わせて黙祷を捧げ、約2分のメッセージ表示が終わり、その場を立ち去ろうとした時だ。突然近未来を思わせるような映像が流れ始めた。そこには「2061年8月21日 J-VILLY HILLS」と字幕が出ている。その後に軽妙な音楽と共にミュージカルが始まった。何事かと呆気にとられていると、福島県を舞台に50年後の未来をイメージして作られた映像作品であると気がついた。


のちに調べたところ、2018年に福島県が制作したショートミュージカル『MIRAI 2061』とであることがわかった。クリエイティブディレクター箭内道彦さん監修による作品だ。


作品の前向きなメッセージと、この映像を流すことを選んだスタジオアルタに、敬意を表したい。未来はこれから。


参照元:MIRAI 2061
Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
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▼ショートミュージカル『MIRAI 2061』

▼2020年3月11日14時46分、東京・新宿アルタ前の様子

▼2012年3月11日の新宿アルタ前

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