街にはさまざまなナゾが潜んでいる。とくに繁華街には、一般人の理解を超えたナゾ、「怪奇」とも言えるような不思議があちこちに隠れている。

2019年12月のことだ。私(佐藤)は新宿歌舞伎町で怪しい貼り紙を発見した。そこには「雪栄さん、戻って来て。」と記されていた。

この貼り紙は歌舞伎町と池袋、それぞれの繁華街でしか見ることができなかった。手がかりのないまま月日は流れ、半ばその事実さえ忘れようとしていた頃、Twitterを通していくつかの目撃情報が報告されたのである。最新(2020年3月)の貼り紙には、新たな文言が加わっていたのだ。これは一体……

・月日が記されるようになった

あの記事を公開した後、たびたびTwitterのDMで目撃情報を受け取るようになった。年末までの間は、私が見たものと同じものの報告が続いていた。冬の風雨にさらされて、古いものは剥がれはじめ、このままこの貼り紙のナゾは時が忘れさせていくものだろう。そんな風に思っていた。


ところが、年が明けると少し様子が変わる。あの文面に年月の記載が入るようになっていたのだ。「2020年1月」と言った具合に。


貼り紙の主はまだ、雪栄さんのことを時の流れに任せて風化させる気はないらしい。たかが年月が書いてあるだけだが、そこには強い意志のようなものが働いているように感じられる


・誰だ!?

しかしながら、やはり手がかりのないまま数週間が過ぎたある日のこと、立て続けにタレコミが入った。私にDMをくれた人物は、新宿西口の大型家電量販店周辺で、新しい貼り紙を見たという。実際に現地に行ってみると、そこには「2020年2月」と記された貼り紙がある。なんとそこには……。


「雪栄さん、戻って来て。」

「圓山くん 会いたいです」


ちょっと待ってくれ! ただでさえナゾ多きこの貼り紙に、新しい人物が登場しているじゃないか! 圓山くんって誰だよ!? まだ1歩も前に進んでいないのに、100歩くらい引き戻されたみたいじゃないか。何なんだよコレは!! 神は俺を試そうとしているのか? チキショーッ! 俺はなんて無力なんだ……。


これはかなり予想外の展開だ。だがしかし、別の見方もできる。雪栄さんと圓山くんは、無関係の可能性もある。というのも、圓山くんの記述はシールで貼り付けてあるように見えるからだ。2人には一切接点がなく、誰かが便乗する形で、圓山くんへの願望を勝手に添えたというケースも十分にあるだろう。2人について推測は慎重に行わなければならない……。


・切実な事情……

一瞬混乱したが、幸い私は落ち着きを取り戻し、もう1つのタレコミの検証へと向かった。もう1つのタレコミは池袋の目撃情報だった。そちらは、大型書店周辺の自販機とのこと。現地に到着し、私は愕然として膝から崩れ落ちそうになった……。


「■■■■(名字)雪栄さん、また一緒に暮らそう。2020年3月」


なんて切実な内容なんだ。私はてっきり、職場とか何かの組織からいなくなった人を探していると思っていた。以前の記事では、三流恋愛小説みたいな展開を妄想していたのだが、「そんな訳ねえよな」って思ってんだけど、かなり切実な事情を感じずにはいられない。

ナニがあったんだ、貼り紙の主と雪栄さんの間にナニがあった? なぜ自販機に貼り紙を貼っているんだ。貼り紙でなければ、声の届かない相手なのか? ナゾは深まるばかりだ……。

Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24