かつてどこにでもあった自販機は、コンビニの勢力拡大もあってか年を重ねるごとに数を減らし続けている。清涼飲料水はまだしも、タバコなどの嗜好品は目に見えて減少。お酒の自販機に至ってはほとんど見なくなった。やはり時代が変わればモノも変わる……と思いきや!
つい先日、都内某所の酒店にて現役バリバリで働いているお酒の自販機を発見した。珍しいし、記念にビールでも買っとくかな〜なんて思ったら何コレ! 購入するには酒パスカードなんてものがいるの!?
・タスポのような身分証明書
酒パスカードについてお店の人に話を聞こうと思ったが、その日は運悪く定休日。仕方なくネットで検索してみると、新しい情報はほとんど出てこなかった。ヒットした数少ない情報によれば、どうやらその昔はお酒を自販機で買うためにカードが必要だったそうな。
酒パスカードを分かりやすくいえば、タバコを買う際に使う「タスポ」のような身分証明書。ちなみに今回見つけた自販機は運転免許証にも対応していたが、ここまできたら絶滅危惧種かもしれない酒パスカードでお酒を買ってみたい。
・酒パスカードが欲しい
それから数日後、お店を訪れたところ長らく看板娘を務めていると思われる女性から話を聞くことができた。以下がそのやりとりである。
──すみませ〜ん、酒パスカードが欲しいんですけど作ることはできますか?
「えっ、なんですか? なんのこと?」
──えぇっと……お酒の自販機に書いてあるカードなんですけど、今もまだありますかね?
「あ〜それね。カードのところは壊れてて使えないのよねぇ。今はね、普通にお金を入れたら買えますよ」
──あっ、そういうスタイルでしたか(笑)
「そっ! そのままいける」
──ちなみに酒パスカードって、今はもう作れないんですか?
「少なくともうちではやってないですね。酒パスカードはもうなくなっちゃったと思いますよ、随分と古い機械だからねぇ」
──詳しくは大体何年前くらいのことで?
「う〜ん、だいぶ前よね。15〜20年くらい前かな」
──結構前ですね! でも、当時はみなさん酒パスカードを使って買っていたんですよね?
「そうそう。ただね……」
──ただ……?(ゴクリ)
「1000円札と酒パスカードの位置が近くにあるでしょ。間違えて入れてしまう人が結構いたのよ。そのことはよく覚えているわよ」
──間違えていても機械は吸い取っちゃうんですか(笑)
「そうなのよ。いちいちメーカーに電話しないと取り出せなかったし、えらく大変でしたよ」
──そんな時代があったとは。この酒パスカードは全国探してもないんでしょうか?
「私の知る限りだと、もうないでしょうね」
──むぅ……残念……。そういえばお酒の自販機も珍しいですよね。全国的に少なくなっていますか?
「自販機もほとんどないんじゃないですか。うちのも古いからいつまで使えるか。でも使えるうちは使おうかなと思っています」
──そうでしたか……。いろいろと知ることができてよかったです。ありがとうございました!
・幻の酒パスカード
もしかしたら日本のどこかで使用している人が存在するかもしれないが、話を聞く限りだと酒パスカードは絶滅寸前……いや、絶滅している可能性もゼロではなさそうだった。もはや幻とも言える「酒パスカード」。持っていたらプレミアがつく日がくる……かもしれないし、自慢してもいい1枚だろう。
Report:原田たかし
Photo:RocketNews24.
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]