皆さんは「近大マグロ」なるものをご存知だろうか。近畿大学の水産研究所で養殖されたマグロのことである。世界で初めてクロマグロの完全養殖に成功──と過去に大きく報道されたのを覚えている人も多いはずだ。でも実際食べたことは?
今回は、いわば最新研究の成果物ともいえる近大マグロを食べられるレストランを紹介しよう。天然マグロにも決して引けを取らない美味しさに、ただただ感銘を受けたっ!
・Study!
日本人の食卓に欠かせないマグロ。なかでもクロマグロは「海のダイヤ」とも呼ばれる高級魚だが、その味の良さゆえに乱獲され個体数の減少が心配されている。
そんなクロマグロの完全養殖に世界で初めて成功したのが、日本の近畿大学だ。1970年に研究を開始して、完全養殖に成功したのは2002年。実に32年という、気の遠くなるような歳月をかけて達成された快挙であった。
この「完全養殖」という言葉だが……実はマグロの養殖自体は、近畿大学の研究以外にも広く行われている。ただしそれは野生の稚魚を捕獲して成魚に育てるというもので、稚魚を採取するという点で天然資源に負担を掛ける方法であるらしい。
近畿大学の行っている完全養殖とは、受精卵の孵化 → 育成 → 採卵という工程を全て人工下で行うもの。天然資源を圧迫しない生命サイクルを確立した点に意義がある研究なのだ。なんだか壮大な話……。
・研究所? レストラン?
そんな近大マグロを食べられるレストランが大阪にあると聞いて、やってきた。梅田の商業ビル・グランフロント大阪に居を構える「近畿大学水産研究所」である。
店名が「近畿大学水産研究所」。そのまんまだが、堅苦しい施設ではなく正真正銘のレストランだ。白衣を着た研究員がいるわけではないぞ!
店内はバルのような洒落た造りで、良い感じ。ランチタイムには手ごろな値段の海鮮丼なども用意されており、筆者は近大マグロと選抜鮮魚の海鮮丼(1800円)を注文することにした。
・近大マグロ、ウマし!
海鮮丼の到着である。マグロの赤身と、数種類の「選抜鮮魚」が半々くらいのボリュームで乗っている。まずはやはり、近大マグロから食べてみるとしよう。
養殖だから不味いという道理はないのだが、一般的に日本では天然モノの方が美味しいという風潮があるような気がする。こと魚介類に関しては。したがって味に関しては大目に見る必要もあるのかな~、と思って口に運んだのだが!
これが普通に美味くてビックリ!
赤身本来のモチモチとした食感が存分に楽しめる。質の悪いマグロにありがちな水っぽさが全然なくて、むしろ普段食べているマグロより美味しいかも。スッキリとした後味の和歌山産醤油との相性もグッドだ。近大マグロすごい!
シマアジ、カンパチなどの「選抜鮮魚」もクオリティが高い。こちらは白身魚で、弾力のある食感が鮮度の良さを物語る。店員さんの説明によると、マグロ以外の魚も近畿大学で養殖されたものだとか。
ひいき目なしに、海辺のレストランで食べるような海鮮丼と比べても遜色がない。予想を裏切る美味しさだったが、調べたところ鮮度を保つ工夫も色々されているようである。
例えばマグロ。マグロは水中から取り上げる際に興奮すると、体温が急上昇して身が変質してしまうことがあるらしい。それを避けるため、近畿大学では電気ショックでマグロを即死させ、食味が落ちないようにしているんだって。
そのあたりはお店のホームページで詳しく紹介されているので、興味がある人は読んでみてくれ!
・学びに触れる
美味しかったし、勉強にもなりましたね。マグロを食べながら思ったのだが、こういう学問上の成果に触れられる店というのは、非常に意義があって良いのではないだろうか。
筆者のような勉強が苦手な人間にとっては、大学の研究と聞くと「なんか机の上で難しい理論をこねてるだけじゃないの~?」と思ってしまう側面もなくはない。だが実際には、そういった地道な研究が我々の生活を下支えしているのだ。
水産学に限らず、農学や畜産学を研究している大学もたくさんある。食事というのは誰にでもスンナリ入ってくるアプローチだし、同じような店が増えていけば、理系分野に興味を持つ人が増える一助になるのかもしれない。
そんなことを考えながら、お店を後にした。また食べにこよっと。
・今回紹介したお店の情報
店名 近畿大学水産研究所 大阪店
住所 大阪市北区大深町3番1号グランフロント大阪ナレッジキャピタル6階
時間 11時~15時(LO/14時)、17時~23時(LO/22時)
休日 入居施設に準じる
参照元:近畿大学水産研究所
Report:グレート室町
Photo:RocketNews24.
▼みそ汁には魚のつみれ。これも美味しかった
▼ランチメニューはこんな感じ。筆者が注文したのは海鮮丼
▼近大マグロについて学べるタブレットも設置されている