数年前から突如始まったカメラブーム。誰もがスマホを用い、SNSで日々の写真をアップする時代になったからこそ生じた流れだろう。中には撮影にハマってちょっと良さげなデジカメを購入した方も多いのではないだろうか。

とはいえ、ぶっちゃけマンネリ気味……とか、重くて持ち歩かなくなった……みたいな人もそこそこいるのでは。今回はそういった、撮影のモチベーションが下がっている初心者の方向けに、ちょっと面白い撮影方法を提案したい。マジで簡単にできて、一風変わった写真を撮れるぞ!

・ストロボを使います

それが、ストロボのマルチ発光という、デフォルトで搭載されているであろう機能を使った撮影方法。


えっ、ストロボ? マルチ発光? やだ難しそう……もうおうち帰る……


みたいに思った方、どうか待って頂きたい。専門用語こそほんの少しだけ出てくるが、やることはマジで超イージー。必要なストロボも使うカメラも、共に安いもので十分だし、工夫次第で可能性は無限大。超楽しいからカメラをお持ちの方には是非試していただきたいのだ。


・残像的な感じ

具体的なやり方に入る前に、どのような写真が撮れるのかについて説明しよう。ざっくり言うと、動くものの残像的なものが撮れる。やや極端な例で申し訳ないが、仮にポールダンス中の人物を撮影した場合、ポールにつかまってぐるぐると回るその過程が、半透明な残像チックに写りこむぞ。



リアル分身の術。あるいは漫画などで一般的な、動いてるキャラクターの描き方をそのまま写真にしたような感じ。『はじめの一歩』のデンプシーロールだって、やってくれるモデルさえいれば、漫画そのままを写真で再現可能だろう。ちょっと面白そうでしょ?


・やり方

では肝心のやり方について説明しよう。根本的に行うこととしては


1.なるべく暗くして

2.シャッターが開いている間に

3.ストロボを好きな回数、好きなタイミングで光らせる


以上である。そしてストロボを光らせた回数だけ、光らせた時の状態が残像チックに写真に写るという感じ。もう少し各ポイントについて細かく説明していこう。


・どれくらい暗ければいいの?

まず1の「なるべく暗く」だが、これは何も撮影環境が暗くなければならないわけではない。カメラに写る光景が真っ暗ならいいのだ。ゆえに、環境そのものが暗いに越したことはないが、カメラ側の設定で暗くなるならそれでいい。

具体的にはレンズを絞るとか、ISO感度を最低にするとかである。例えば屋内なら電気を消して、レンズを最大まで絞り、ISO感度を100や50など、それぞれのカメラで下げられるところまで下げれば、おそらく写真的には真っ暗になるだろう。


・シャッターが開いている間とは?

2の「シャッターが開いている間」は、ようするにシャッタースピードである。これは撮影したい動きが何秒くらいかかるのか次第。例えば1秒毎に進む時計の針の軌跡を10秒分だけ写したいなら、シャッタースピードは10秒以上に設定するのが好ましいだろう。また、野球でボールがバットに当たる瞬間とかなら、恐らく1秒かそれ未満。

暗くなければならない理由もこの辺にある。動きには時間がかかるもの。この方法では多くの場合、シャッタースピードが遅めにならざるを得ない。ゆえに、明るいと何もかも真っ白に写ってしまいかねないということ。

なお、動きにかかる時間がモデルのコンディション次第で決まっていないとかなら、手動でバルブ撮影(シャッターを開きっぱなしにして、好きなタイミングで切る)でもいけるだろう。


・ストロボはどうやって光らせるの?

3については具体的なストロボの使い方に触れなければならない。方法は大きく分けて2つある。手動で好きにやるか、ストロボを設定して自動で等間隔に光らせるか……である。

まず簡単な手動の方法から。およそこの世に出回っている全てのストロボには、押したらカメラとか無関係にストロボを光らせるボタンがあると思われる。「パイロットランプ」、「トリガー」、「テストボタン」的な名前がついているヤツだ。多くの場合、それはストロボが光る準備が整ったときに、赤なり緑なりに光るボタンでもある。



目印として、雷っぽい形状のピカチュウのしっぽみたいなマークが描かれている。というか、これは各自でお持ちのストロボの説明書を読んでほしい。そいつを押せばとにかく光るので、動きの最中に像を写したいタイミングで押せばいいだろう。

その際のストロボの強さについては、何回かトライして明るすぎたら適当に弱くし、暗すぎたら強くしてくれ。ぶっちゃけその場次第である。明るさの表記が分からない場合についてはこの先で簡単に説明している。

次に、ちょっとだけ難しいストロボ側の設定で、等間隔に光らせる方法である。よっぽど微妙なストロボでもない限り、マルチ発光モードというものが備わっているはずだ。筆者が2000円くらいで買った、メイドインチャイナなストロボにもついている。ストロボのメニューは英語表記が多いのだが、「Multi」と書いてあるのがそれだ。


・1Hzで1秒間に1回の間隔で光る

マルチ発光モードにすると、多くの場合「Hz」、「Times」、そして1/1 とか 1/64 とかそういう分数みたいなのが書いてある画面が表示されると思う。ちょっと難しいので、順番に簡単に説明していこう。まずは「Hz」から。



これはもうそのままヘルツ……周波数を意味する単位。学校で習ったヤツである。物理の授業的には1ヘルツは1秒間に1回の周波数、あるいは振動的な意味だった。ストロボ的には、1ヘルツは1秒に1回の発光という意味である。2ヘルツなら 1/2 秒ごとに1回。100ヘルツなら 1/100 秒ごとに1回。

そして光る回数を決めるのが「Times」。まあ単語の意味の通りである。ゆえに、例えば「Hz=1」で「Times=10」に設定した場合、1秒間隔で10回光る。あるいは「Hz = 10」で「Times = 15」にしたら、1/10 秒間隔で15回光る。

そして最後に変な分数である。それはストロボの光る強さを示している。1/1 が一番強く、分母の数字が大きくなるほど威力は弱くなる。ちなみにバッテリーが乾電池なストロボの場合、強い設定で連続発光はできないだろう。設定的にはできても、多分光らないと思う。エネループとかだとそこそこイケたりするが……まあその辺はストロボの出力次第でもある。

こうしてストロボのマルチ発光機能を使えば、手動では対処不可能な速度でも像を残すことができる。ただし、きっちりと撮りたい動作にかかる時間を計り、いくつ残像を残したいのかなどを事前に決めてかかる必要があるだろう。

撮りたい動きがほんの数秒からそれ未満である場合。また、被写体がプロのスタントマンだとかダンサーだったりして、とても正確に動けるとか。もしくは、何か動く機械を撮る場合なら、マルチ発光モード待ったなし。ただ、素人同士で動きの時間も長いものを撮るには、手動の方がいいかもしれない。どちらが適しているかはその場で試して判断してほしい。

ということでマルチ発光の勧めである。ぶっちゃけカメラを長くやっていても、なんとなく触れることなく使わずに生涯を終える人もいたりする。インスタグラムのような、写真がメインのSNSでも遭遇率は低めだ。

専門でやる人も中にはいて、スゴい写真を生み出しまくっていたりもするが、全体としては間違いなく少数。やるだけでとりあえず「ちょっと違う」写真になると思われる。そしてどんな残像ができるかは動き次第。発想によってはとても独創的な写真を生み出すこともできるだろう。マンネリ気味だった方、試しにやってみてはいかがだろう。

執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.

▼光ればいいのでストロボじゃなくてもできるっちゃできる。この記事を書いている最中に思いついてやってみた。絞りはf22、ISO100、シャッタースピードは5秒。その5秒間で適当にエナドリを止めて、1秒ずつくらい懐中電灯で照らしてみた結果がこちら。「マルチ発光は選ばれし者のみの技!」「こんな雑にできない!!」的なこと言ってハードル上げたがるハイパーカリスマプロカメラマン的な人いるけど、できる。長秒露光できるならスマホでもいけるんでないの。

▼ただし動く人を相手に、タイミングも明るさも何もかも理想通りに……となると話は別。モデルにも何度も同じ動きを頑張ってもらうことになるし、人だと中々動きの速度は一定にならず、しかもモデルは疲弊していく。そういう意味では難しい。マルチ発光自体は簡単だし、機械相手でも簡単。人を相手に理想を突き詰める場合がかなり大変。これは鏡の無い方向から撮りたかったけど、画角的にスペース足らんかった。