【実録】JASRAC(ジャスラック)に潜入してみた! 本社ビルの中で見た社員の「本当の姿」がコレだ!!(その4)

著作権について聞くという名目の今回のアポ。そこで聞くのは、私が登録する上で現役ミュージシャンとして引っかかっていることだ。まずは……


問1:著作権を信託した曲って、YouTubeに自由に投稿できるんですか?」


──これである。現在、YouTubeは音楽を発表する上で欠かせないツールの1つ。これに投稿できなくなるとか、投稿する上で申請が必要とかなるとめんどくさいことこの上ない。


山本「もちろんできます」


──他人が作った曲を使って投稿する場合はどうですか? 例えば、“弾いてみた” とか


山本「問題ありません。JASRACが管理する楽曲を使って投稿する分には、YouTubeが包括契約で使用料を支払っているので、投稿者に負担は生じません」


──なるほど。“弾いてみた” や “歌ってみた” 系は、JASRAC的にはクリアだということですね。では、CD音源をそのままBGMとして使用する場合はどうですか?


山本「著作権については、さきほどの包括契約でYouTube側が許諾を得ていますが、音源を使用する場合は、著作権とは別に、アーティストやレコード制作者の権利である原盤権をクリアする必要があります。

したがって、原盤権を有するレーベル等の許諾が必要です。誤解を受けることがあるのですが、JASRACは作詞家・作曲家の権利である著作権を管理している組織で、原盤権は管理していません」

──つまり、全部自分で作ってる私の曲の場合は、私の許可があればオールクリアと。まあ、私の音源を使う人はいないだろうけど、これを読んでる人の中で何かに使いたい人がいればご自由にどうぞ。ちなみに、今回登録した音源は『ロケットマン』という曲だ。

さて、宣伝も華麗にねじ込んだところで、BGM使用についても、著作権上は問題がないことが分かった。他に何か注意すべきポイントはありますか


山本「あくまで、問題ないのはYouTubeなどのJASRACと包括契約を結んでいるサイトだという点です。包括契約を結んでいないサイトへの投稿は、原則お控えいただいています」


──契約をしているサイトはどこかに書いてたりするんでしょうか


山本「全てではありませんが、JASRACと契約している動画投稿サイトやブログサービスについては、JASRACのウェブサイトで公開しています!」


──とのこと。少なくとも、一般的な動画サイトでの利用に関して、投稿者とJASRACの間には問題が起こらなさそうだ。

・問2:自分の曲でも複製すると利用料を払わないといけない?

でもでも! ミュージシャンがしたいことってもっと一杯あるはずだ。例えばそう……自主制作CDをリリースするとか。CDを複製する権利である複製権はJASRACの管理のはず。自分でCD複製して金取られたらインディーズとしてはたまらんでしかし。

山本「こちらは対価を得ない場合は使用料をお支払いいただく必要はございません。なお、スタジオやプレスの費用などの実費相当の対価を得る場合も、対価を得ないのと扱いは同じで使用料は不要となります」


──スタジオやプレスの費用まではOKなんですね。ただ、どうせ作るなら黒字出したいと思って作るもんじゃないですか? 自主制作なんて黒字が出るだけで凄いレベルなのに、さらに持っていかれたらインディーズ活動はキツイですよ。


山本「おっしゃる通りです。そこで、2017年から、製作実費を超える対価を得る場合であっても、複製枚数1000枚までであれば使用料が不要となりました」


──売る場合でも、1000枚以内なら自由に複製できるということですか?


山本「その通りです」


──むう……。確かに、事務所がついてないガチインディーズの自主制作でCD1000枚なんて普通売れる数ではない。今なら500枚でも凄い部類なんじゃないだろうか

ロットで500枚より1000枚の方が単価安いから1000枚作ったものの、家にCDが山のように積まれているインディーズミュージシャンって一杯いると思うし

・問3:ライブで自分の曲を演奏したら利用料を払わないといけない?

でも、著作権の自己使用ってなにもCDだけじゃないよな? むしろ、普通はライブの方が多いのではないだろうか。そして、ライブって大体入場料とかで対価を得るもんだ。ライブで自分の曲を演奏する場合も金取られたらインディーズバンド活動できないんですけど。


山本「おっしゃる通りだと思います。ただし、ライブ利用に関してもミュージシャンが著作物使用料を支払うというパターンは稀だと思います」


──なぜですか?


山本「ライブの場合も、CD同様、一定の条件のもと自己利用に使用料はかかりません。ライブでの自己利用で利用料が発生するのは、入場料と会員定員数との積が400万円を超える場合です」


──400万円ということは、入場料が3000円だとして……1333人! 渋谷クラブクアトロは収容人数750人だからまだOKか。クアトロ以上となると、もう次はZEPPとかSTUDIO COASTになりそうだ。BLITZもライブハウス営業停止したし。


山本「ちなみに、ホットスタッフなどのコンサートプロモーターが入った場合、主催者はそのプロモーターになるため、著作物使用料はプロモーターからJASRACへ支払われます


──確かに、それだとミュージシャンが払うことはあまりないかもしれない。1300人規模のホールにイベンターなしの自主企画って、そもそもこれまで開催されたことがあるのかどうかもちょっとよく分からないくらい凄いことである。

では、カバー曲を演奏する場合はどうなるんですか? これだと、小さいライブハウスでも著作物使用料の対象になりますよね?


山本「毎日ブッキングライブを行っているような店舗ですと、多くの場合、主催者は店舗になると思われます。そのため、ライブハウスとの契約で利用に関する著作物使用料は支払われているため、出演者の中澤さんが別個に支払う必要はございません

──契約をしていない店舗で演奏した場合は?


山本「その場合も、通常はライブハウスとJASRACが契約をすることになるので、ただちに問題になるということはありません」


──むむむ……インディーズミュージシャンの目線で言うと、ネットもCD発売もライブも活動する上での問題は特になさそうだ。

・問4:JASRACの会員になることでミュージシャンがもらえる著作権印税について

でも、信託契約申込金が2万7500円、入会金が2万5000円って高くね? キレそうなんだけど


山本「確かにそれはおっしゃる通りかもしれません……。契約を検討されている方の中には、申込金等の初期費用がネックとなって申し込みをためらう方もいらっしゃいます。JASRACとしても著作者の目線になって、見直しを検討しなければならないと思います」


──元を取りたいんですけど、作詞・作曲の印税って曲が売れる以外で何でもらえるんですか?


山本「テレビやラジオなどの放送や、カラオケ、映画などでの使用とか……」


──そんなに売れてません(半ギレ)


山本「あとは、インタラクティブ配信での再生数、YouTube・ニコニコ動画などのネット配信での再生数……」


──え? それも著作物使用料もらえんの? 広告料とか以外で? でもそれって自分で投稿したものも大丈夫なんですか?


山本「YouTubeなどプラットホームが契約している場合、自分で投稿した動画でも著作物使用料が支払われます

もちろん、他の人の動画にBGMなどで使用された場合でも同様です。こういった利用料をアーティストに還元するための包括契約ですので。あと、ライブ演奏も同様ですね

──ライブハウスで自分の曲を自分で演奏したとしても、著作物使用料をもらえるということですか?


山本「そうですね。料金や会場のキャパに応じて定められた著作物使用料が著作者に支払われます。こちらは、先ほども申し上げた通り、多くの場合、プロモーターかライブハウスが利用者になります」


──実際の集客は関係なし


山本「利用分野によって実際の集客(収入)に応じた使用料としているものもありますが、ライブやコンサートについては基本的に関係ありません

事前に使用料を算定できる利便性を確保するため、使用料はあらかじめ定められた料金やキャパに応じて決められます。もちろん、各利用分野の団体の皆さまと十分協議を行ったうえで」

・問5:どうやって曲が利用されているかを調べているのか?

──そこは、どうやって判断しているんですか? 莫大なデータ量ですよね?


山本「YouTubeなどのネット利用者やプロモーターが主催するコンサートについては、それぞれ全ての曲目の報告を受けています。ライブハウスの利用に関しては、これまでサンプリング調査で分配楽曲を特定していましたが、2020年3月からは全曲分配方式へ変更します」


──でも、日本全国+ネットですよね? 特にネットなんて、YouTubeも正確に把握できているのか微妙な気がするんですが……


山本「利用楽曲の把握の正確性と効率性の確保は、永遠の課題でもありますね。会員様からのお声も多く、日々、試行錯誤を重ねています。

YouTubeやライブハウスでの利用について会員の皆さまが把握した情報をそれぞれご報告いただいていますが、ライブハウスなどの演奏による利用については、本人がオンラインで届け出ができるシステムを2019年7月に開始しました

──ライブして、自分で曲目を届けたらお金がもらえるということですか


山本「その通りです」


──少なくとも、自分の活動に関してはちゃんと著作物使用料をもらうことができそうだ。私自身、今でもバンドをしているため、活動していく上で気になる部分を聞く形となったことはご容赦いただければと思う。

・潜入した思ったこと

JASRAC本社の中に潜入することが1番の目的だった今回の突撃。ロケットニュース24の記事の中では、異例とも言える長さのレポートとなったが、正直、著作権についてや、JASRACの問題を語りきるには全然足りないと思っている。それほどに複雑なのだ。

例えば、記事中に何度も登場した「包括契約」という言葉。JASRACの言い分は、効率的にミュージシャンに著作物使用料を還元するためのものとのことだが、これについても見る人の立場によって否定的な意見もある

じゃあ、ミュージシャンがJASRACに入る意味って? 入らなきゃいいのかというと、そういう問題でもない。例えば、ライブハウスに出演して「著作物使用料を払ってください」と自分で交渉したとすると、ライブハウスはお金を払ってくれるだろうか

私は払ってくれるとは思えない。おそらく、契約の話にもならず門前払いされるだろう。出演依頼なんて来なくなりそうだ。ここら辺はJASRACがミュージシャンを守っている部分だと個人的には思う。

そのため、1番良いのはJASRACが潰れることではなく、そのシステムがミュージシャンの需要と合致することではないだろうか。それに近づけるため、会員の意見を聞いてJASRACもやり方を試行錯誤しているのでは。

その証拠が、著作権の自己利用についてのオンライン届け出開始や全曲分配方式へ変更されたこと。繰り返すが、正会員はこういった経営面での方針を決める権利を持っている

というわけで、私が潜入して見たJASRACの本当の姿は全然秘密結社ではなかった。気になることがあるミュージシャンは普通にJASRACに問い合わせてみたら良いと思う。契約の意思があれば、本社ビルに話を聞きに来るだけでもウェルカムらしい。

・最後に

最後に、今回の記事を潜入だけではなく、システムを説明するレポートにしたことには理由がある。それは私自身もそうだったように、私の周りのミュージシャンの中にも、JASRACをよく知らずに悪感情を抱いている人がいるということ

ただでさえ複雑な上、世間一般のイメージは悪の秘密結社なため、そうなってしまうのは非常によく分かる

だが、音楽で食べていきたいと願うなら、「JASRAC潰れろ!」とよく知らずに叫ぶより、もう一歩先に進んでみるのも良いのではないだろうか。

もちろん、この記事は、冒頭で触れたヤマハ音楽教室への包括契約問題についてJASRACを擁護するものではない。私はその是非は、人が判断するものではなく裁判所が決めるものだと思うからだ。また、JASRACへの入会をオススメするものではない。やっぱり入会金は高いし。


ただ、音楽でお金を稼ぐというのはとてつもなく難しいことも事実。お金が稼げないことが音楽活動をやめる原因になることが多いのも事実。


そのため、ミュージシャンは自分の活動の内容を鑑みて、JASRACはじめ著作権管理団体の意義をちゃんと知った上で、それぞれで選択する必要があるのではないか。そう思いこの記事を書いた。音楽を愛する売れないミュージシャンの参考になれば幸いである。

Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.