人生とは数奇なものだ。33歳で無職だった私(中澤)は、ロケットニュース24の記者になってからそう感じることが多い。まさか37歳で記者をしているなんて想像もしていなかったからである。
そんな私が子供の頃、同年代でテレビやドラマに出まくっている女のコがいた。安達祐実さんだ。時代の寵児どころか、時代そのものだった彼女。現在も女優として活躍しており、大人の色気も感じるインスタグラムは大人気である。
2019年6月のことだった。彼女のインスタグラムにバンドTを着た姿が投稿されたのは。まさかのバンド好き!? もうイングヴェイするしかないだろ。
・イングヴェイとは
イングヴェイ・マルムスティーンは1980年代に速弾きギタリストの先駆けとなった人物だ。そのハイスピードかつエモーショナルな速弾きは、現在も多くのギタリストに影響を与え続けている。
一方、彼女が着ていたのは、『NOT WONK』というバンドのTシャツ。北海道苫小牧出身で、2018年のフジロック新人オーディション「ROOKIE A GO-GO」を勝ち抜いたインディーロックバンドだ。
・ワンチャンあるんじゃない?
売れているバンドや洋楽ならいざ知らず、昨年の「ROOKIE A GO-GO」のバンドというところにガチ感が出ている。そこまでガチのバンドTを着ているということは、きっと彼女はインディーロックファンに違いない。そして、こう思っているはずだ。「バンドやりたいな」と。
そんな時、もしボーカルを探すイングヴェイと出会ったら……これワンチャンあるんじゃない? バンド結成されちゃうんじゃない?
・映画取材のフリして
というわけで、映画『ゾンビランド:ダブルタップ』の取材が行われている都内某所にインタビューをするフリして潜入してみた。
安達祐実さんがゲストキャラ・マディソンの吹き替え声優を務めるこの映画は、ゾンビがあふれ返る世界を描いた『ゾンビランド』の続編である。ゾンビ映画だが、コメディータッチな切り口が軽やかな本作。ひと足早く公開された全米では初週2673万ドルを叩き出している。
・なぜか変な空気に
それにしても、会場は妙な空気に包まれていた。和やかな対応の中にどことなくピリピリしたオーラが立ち込めているのである。まるで、中身が辛子のシュークリームみたいな雰囲気だ。
そうこうしているうちに安達さんが部屋に入ってくる。向かい合って座る安達さんと私。安達さんの表情がどことなくひきつっている気がしなくもない。一体なぜ?
あっ!
グラサンかなあ?
──私は今イングヴェイっぽいグラサンをかけている。インタビュアーがグラサンかけてることって、そう言えばあんまりないよね。ひょっとしたら変な人と思われてるかも。そこで、緊張をほぐす意味も込めて優しくこう聞いてみた。
──インタビュアーがグラサンをかけてるのは初めて?
安達祐実「多分初めてです」
──なるほど。それは驚きもするかもしれない。誰だって初めてのことは怖いものさ。気にしなくて良いからね。さて、映画の質問に移りたいと思います!
安達祐実「えっ、ハイ」
──今回の映画で演じてるマディソンは安達さんに近いですか? それとも遠いですか?
安達祐実「真逆かもしれません。マディソンは凄いテンション高めのギャルなんですが、本当に私と共通する要素がなくて。普段の私は本当にテンションの低い人間なので……。自分の中での最大限のテンションを引き出したという感じですね」
──凄いナチュラルな感じでしたよ。
安達祐実「嬉しい!」
──オウフ……
可愛いな……。
安達祐実「マディソンはある意味純粋で。考えずにパッと言ったことが、ちょっとおかしなことだったりとかグサッとくることだったりするという役なので、そういったセリフを『何の意図もなく素直に言ってる』という感じを出すのが難しかったです」
──安達さんは普段はそういう感じではない、と?
安達祐実「(笑)そうですね(笑)全部意図的に(笑)」
──オウフ……
めちゃくちゃ可愛いがな……。
グラサンをしていて良かった。もし、裸眼だったら、今の笑顔がまぶしすぎて目が潰れているところだ。いや~今日ホント来てよかったわ。グラサン越しでも眼福でした……
どのタイミングでギター弾こう?
相変わらずギターを弾き出すタイミングが全くつかめない。これは企画自体がムチャなんじゃないだろうか。いや、今回ばかりは大丈夫なはずだ。なにせ、日本のインディーロックのバンドT着てるくらいだぜ? バンドに魅力を感じていないはずがない。
・不安と情熱の間
だが、そもそもインディーロック系が好きな人はイングヴェイ嫌いなのでは? ここに来てそんな不安が顔を出す。気づけば震える手。ピックを握る指から力が抜ける。
いやいや、このままピックを置くわけにはいかない。なぜなら、私はギタリストだからだ! 今こそ轟けハートビート!! 安達祐実のバンド魂に火をつけろ! 同情するならファー・ビヨンド・ザ・サン!!!!!
演奏中のことは覚えていない。ただ、唯一記憶に残っているのは、演奏直後の安達祐実さんの笑顔。楽しんでくれたようで何よりだ。ミュージシャンはその笑顔を見るために生きているのだから。
・手ごたえアリ
ひょっとしたら今回こそイケたんじゃね? 少なくともライブ後のウケはバッチリだ。きっと安達祐実さんもウズウズしているはず! さあ一緒にバンドをやりませんかァァァアアア!?
安達祐実「やりませんね」
空と君との間には──
今日も冷たい雨が降る──
君が笑ってくれるなら──
僕は悪にでもなる
──マディソンのような軽いノリでは「Yes」と答えてくれなかった安達祐実さん。身を持って知った。「普段は真逆」というのは真実だと。
しかしながら、『ゾンビランド:ダブルタップ』の日本語吹替版を見ていると、安達さん演じるマディソンが非常に自然だから不思議だ。時代を越えてさらに光る演技力。ゾンビ映画好きだけではなく安達祐実ファンも必見だ。
・『ゾンビランド:ダブルタップ』
11月22日(金)<ゾンビ深まる季節に>全国ロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
参照元:ゾンビランド:ダブルタップ
Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
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