先に断っておこう。ここで言う「ジャイアントコーン」とは、江崎グリコの同名のアイスではない。酒のつまみとして揚げたものがその辺でよく売られている、デカいとうもろこしのこと。それの加工前のものをゲットして、焼いて食べてみた……という話である。
この試み自体はぶっちゃけ新しい話ではない。ググってみると先駆者はそこそこいて、それなりに美味いらしい。が、どれもちゃんとタレなどを使って味付けをしている。そこで思ったのだ。味付け無しでシンプルに焼き、同時に普通のとうもろこしと食べ比べた場合、どちらが美味いのか……と。
・白くてデカいとうもろこし
食べる前にジャイアントコーンについてもう少し説明しておこう。先述のとおり、加工されたスナック的なものは普通にその辺で売られまくっている。最も身近なところで言えば、ローソンの「ミックスナッツ6パック入り」など。
しかし未加工のものはガチで日本じゃほとんど見かけない。ミックスナッツでも、大々的にジャイアントコーンとは書かれていないため、全くご存知無い方も多いのではないだろうか。
そんなジャイアントコーンだが、外見は1粒1粒がデカくて色白なとうもろこし……といった感じ。粒はデカいが、全体のサイズそのものは普通のとうもろこしと同じくらいしかない。
固体によっては、おなじみの黄色いとうもろこしの方が少し長かったりする。ただ、粒のデカさだけは半端ないのだ。我々が日常的に目にする黄色いとうもろこしの、2倍から3倍ほどはあるだろうか? まさにジャイアント。
Wikipediaによると、ペルー中南部の限られた地域でしか収穫できないなどと書かれている(2019年10月25日時点)。その根拠とされているネットの記事によれば、インカ帝国でおなじみの都市クスコ付近の村の限られた地域でしか生産できないとか。本当ならとんでもない希少植物である。
ちなみに英語だと Choclo Corn や Peruvian Corn というらしい。後者の Peruvian という単語的にも、やはりペルーで主に産出されるコーンなのだろう。ただ、揚げたスナック状のヤツなら日本だけじゃなく、私がかつて住んでいたアメリカでもスナックとして売られていた。
この感じだと世界中に出回っているんじゃないだろうか。どうも推測できる供給量的に、Wikipediaなどにあったような、超極小なエリアでのみ生産されているという話には違和感しかない。
雑に食べ比べるのがメインの本記事においては蛇足以外の何物でもない気がするが、この違和感について調べた結果も記載しておこう。南米の作物の出荷量を調べたところ、アメリカ合衆国農務省による「Foreign Agriculture 1990-91」というペーパー内の、エクアドルとボリビアに関するページで以下の記述を発見。
エクアドル:”choclo” corn are grown in the mountain region. (”チョクロ” コーンは山岳部にて生産される)
ボリビア:has the cooler climate and favors the production of potatoes, soft “choclo” corn for human consumption(寒冷な気候は、食用のポテトと “チョクロ” コーンの生産に適している)
これだけではあるが、ジャイアントコーンがペルーだけでなく隣のエクアドルやボリビアでも生産されていることを示唆している。察するに、恐らく南アメリカ大陸を縦断するアンデス山脈沿いの、標高が高く寒冷なエリアで広く栽培され、現地では一般的に普及しているのではなかろうか。
寒冷で標高の高い場所でしか採れないのは確かなようだが、ペルーの特定の村でしか生産されていないなどというのは多分間違いだろう。まあ、そりゃあそうだよなという感じだけど。
・焼いてみる
ちょっと小難しい方向に脱線しかけたが、話を元に戻そう。重要なのは美味いかどうかである。残念ながら編集部には、お祭りの焼きとうもろこし屋的な、コーンを焼くためのナイスな設備は無い。とりあえず火が通ればいいだろうということで、Amazonで買ってきた焼き網を使い、ガスコンロで焼いてみることに。
火加減やらが良く分からなかったので思いのほか時間がかかったのと、そもそもどうなれば「焼けた」と言えるのか……初めてのことなのでそれすら手探りだったが、40分近くかかってどうにかそれっぽい感じに。一部コゲたりしているものの、焼けているという点において間違いはない。
さっそく焼いたジャイアントコーンを食べてみると……
めっちゃマズい
普通のとうもろこしの方は、それはもう甘くておいしい。多少コゲている部分も、むしろ香ばしくていい感じ。しかしジャイアントコーンはどうだろう。皮が硬く、中はネトネトで、ほとんど味がしない。ネトネトしてるくせに、なぜか口の中の水分が吸われてモサモサしてくる。
ゆでたジャガイモに極限まで不味くなるよう呪いをかけたら、きっとこうなるだろうという感じ。わずかに謎の酸味を感じるのがよりマズさを加速させている。これが美味いという前評判はいささか信じがたい。
もしかして、焼きとうもろこし用の醤油だれを塗れば美味くなるのか? 例えそうであっても、素材自体の味はどう考えても美味くない。ジャイアントコーンの名誉のためにフォローしておくが、全く食べられないというほど不味いわけではない。
ガチでこれを食うか餓えるかという状況なら、仕方がないので黙ってモサモサと食べるだろう。あるいは何か他に強烈な味付けのシチューでもあれば、コーンをコメやタロイモのような主食扱いにして、流し込むのも可能かもしれない。
・みんなの意見も聞いてみた
とはいえ、もしかしたら味の好みや味覚の問題もあるかもしれない。たった1人の意見で「マズい」と決め付けるのは早計というもの。そこで、その時編集室にいた人々にも食べてジャッジしてもらうことに。
・GO羽鳥「焼いて食べるものではない」「食料にはなるよね……でも、好んで食べたくはない」
・原田たかし「もっちりしてますね……食えなくはないですね」「コーンパンとかにしてマヨネーズとかかけたら何とか」
・中澤星児「なんだこれ(笑)すげぇパサパサしてる」「何か味がなくて……皮が厚い」「これマズいね……ちょっとジャガイモっぽい。ポテトサラダみたいにしたらまだ食べられるかもしれないけど、この皮の部分を全部取りたい感じ」「(黄色いとうもろこしの方を食べながら)めっちゃ美味く感じる」
・佐藤英典「……美味くねぇなこれ」「何かに似てる。何だっけこの食感。思い出せないけど何かに似てる」「美味くない。炊いたらニョッキとか作れないかな……」
・韓国の白いとうもろこし
ということで、不味い方向でそれなりにまとまった意見が出る結果に。多少なりとも意見が分かれることを期待していたのだが、まさかここまで一致するとは衝撃だ。
不評のみで終わりそうだったが、実はあひるねことP.K.サンジュンのところに持っていった時に、P.K.サンジュンから興味深い情報がもたらされた。その際のやり取りを紹介しよう。
あひるねこ「ガッカリしますね! なんだこれ……メチャクチャ美味しく無いなぁ……食感も良くないなぁ」
あひるねこ「ブニブニしてる。甘さもないし、良いところがない」
P.K.サンジュン「あのね、白いとうもろこしって、韓国にあるのよ。これ(ジャイアントコーン)はデカいけど、韓国の白いとうもろこしは甘くなくて……」
あひるねこ「なんか甘くなきゃヤダ」
P.K.サンジュン「味はちょっと違うけど……これ醤油かなんかついてない?」
筆者「何もついてないです」
P.K.サンジュン「モチモチした食感はこう」
あひるねこ「デカすぎるとちょっとキモいですね」
P.K.サンジュン「これよりは全然美味しいけど、モチモチしてて、甘くない とうもろこし は韓国に売ってる。屋台とかに売ってる」
筆者 & あひるねこ「へぇー」
P.K.サンジュン「これをちっちゃくして美味しくした感じ」
日本では基本的に黄色い、あの甘みのある とうもろこし が一般的。とうもろこしが甘くないこと自体に抵抗を示す あひるねこ の感覚も分からなくはない。しかし韓国ではどうやら、白くてモチモチした とうもろこし がそれなりに一般的なようす。黄色いとうもろこしとは違う方向の美味しさがあるのだとか。
その味を知っているからだろうか、P.K.サンジュンが最も抵抗なく焼きジャイアントコーンを食べていた。とはいえ、焼いたジャイアントコーンよりも、韓国の白いとうもろこしの方が美味いとのこと。
普段はわりとジャッジが分かれるロケットニュース24編集部の面々。しかし、こと焼いたジャイアントコーンについては満場一致で不味いという評価。
ネットの前情報ではそれなりに美味そうな雰囲気だったため、普通のとうもろこしと接戦になるかも……的な想定をしていたのだが、焼いただけのジャイアントコーンは圧倒的に不評だった。
ということで皆さん、焼きジャイアントコーンは美味しくなかったです。ほとんど本体に味がないので、タレとかつけたらタレの味がそのまますると思われます。そういう意味では美味しくなるかもしれません。ただし食感も微妙という罠が。現場からは以上です。
参考リンク:Wikipedia、exciteニュース、Foreign Agriculture 1990-91(英語)
Report:江川資具
Photo:RocketNews24.