ふらっと入ってツルッと食べられる。そういうところが良さの1つである立ち食いそば屋にとって立地は重要だ。駅から離れているというのは潰れる理由になりかねない。

だが、そんなマイナスをものともせず行列ができる立ち食いそば屋がある。高円寺の『江戸丸』だ。駅から少し歩いた環状七号線沿いにあるこの店が人を惹きつけるワケとは?

・環七にポツリ

アスファルトタイヤを切りつける音が響く環七。東京をぐるっと一周するこの道路は、車を持つ人にとってはお馴染みの名前かと思う。高円寺駅で下車し線路沿いを東に進むと、広い川のような道路の向こう岸にポツンと『江戸丸』が佇んでいた

ここまで来ると、高円寺のガチャガチャした雰囲気は影をひそめる。駅前との温度差で風邪をひきそうだ。横断歩道もないため、歩道橋を渡って『江戸丸』へ。

・昼時は行列

そんな場所にある『江戸丸』だが、昼時になると人が次々とやって来た。カウンター席は5人くらいでいっぱいのため気づけば行列に。

忙しいはずなのに、対応しているおばちゃん店員さんはとても朗らかだ。その対応や話を聞いていると、常連が多いようである。「春菊天そば(税込380円)」を注文すると、やはり朗らかな対応をしてくれるおばちゃん店員さん。

・人生の味

「はい! 春菊天そばね」と答えるその笑顔は、ただ明るいだけではなく安心感のようなものを感じる。さらに、出てきたそばもまた心を温められるような一品だった

甘みとコク深さのあるつゆは優しくホッとするような味。衣が薄い春菊天は色鮮やかで、かじると濃厚な苦みが口に広がった。その苦さでつゆがさらに深みを増す。中太そばに絡む苦みまじりの深さ。それはまるで人生のような味ではないか

・人が惹きつけられるワケ

私は思わずうなずいてしまった。あの店員さんがいて、この味がある。社会が人とのかかわりを減らす方向に進んでいる一方で、この店からは人の温もりを感じずにはいられない

その証拠に、他の客が注文するメニューには特に偏りがなく、店に来ること自体が目的となっている人も多いもよう。全てを含めて深い味のあるこの店。人が惹きつけられるのも納得である。

・今回紹介した店舗の情報

店名 江戸丸
住所 東京都杉並区高円寺南5-32-4
営業時間 月~土・祝5:00~15:00
定休日 日・祝日の月曜

Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

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