シリーズ「Twitterの闇 売り子へのインタビュー」、これまでに約10人の売り子にDMを通じて話を聞いてきた。Twitterで遭遇した買い手に、私物や動画などを販売している売り子たち。常に円滑な取引が行われる訳ではなく、匿名であること逆手にとって、売り子にムリな要求をする買い手もいるという

今回は危険な目に遭った人物のひとり、Dさんの話である。

・小さなきっかけ

なぜ私(佐藤)が、売り子に話を聞くのか? それは、普段誰もが使い慣れているコミュニケーションツール「Twitter」に、知られざる闇が潜んでいることをお伝えしたいからだ。大人であれば「危うきに近づかず」、自己判断で遠ざかることもできるだろう。

しかし、問題は若年層のユーザーである。単純にお金が欲しいという理由だけで、危険を顧みない──そんな若年層の実態について大人にも知っておいて欲しいと思い、インタビューを続けている。


売り子のひとりは、Twitterでの取引を始めるきっかけと自らの過去についてこう語っている。


証言「ほんの数年前ですけど、まだ私が高校生だった頃、月のお小遣いは1000円でした。必要なものは親に言えば買ってもらえましたけど、友達とカフェにも行けない。それでネットでお金を稼ぐ方法を調べたら、このやり方(売り子)で結構稼げると知って、始めたのがきっかけです」


・危険な直販売

単純にお金が欲しいという理由だけで、モノを売ったり自らの写真や動画を売っている。それも、数千円程度で繰り返し販売し、なおかつどこで流出するかも分からないのに、匿名の相手に顔出しの写真・動画を送ってしまっているのだ。

それだけでも十分危険なのに、さらにお金を求めてもっと危険な行為をする売り子もいる。それが、脱ぎたての下着を手渡しするという直販売。そして実際に直販売で危険な目に遭ったのが、今回のDさんで以下がインタビュー内容である。


・Dさんの場合

──「売り子を始められたのはいつ頃ですか?」

Dさん「始めたのは今年の4月頃だったと思います」


──「どうして、売り子を始めたんですか?」

Dさん「お金を貯めたいと思ったからです。ネットでお金を稼ぐ方法を調べていたら、制服や下着を売買する『ブルセラショップ』みたいなものにたどり着き、それがTwitterでも出来ることを知りました」


──「ほかに仕事はされていますか?」

Dさん「はい、介護系の派遣社員をしています」


──「月の売上はどれくらいあるんですか?」

Dさん「1カ月にいくらか、計算はしたことないんですけど、トータルで約10万円ですね。写真や動画を販売したものとは別に『お貢ぎ』といって、お願いしていなくてもご褒美のようなものをくれる人の分もこの金額に入っています」


──「売り子をしていて、いくら売るみたいな目標ってあるんですか?」

Dさん「目標というのは特にありません。目標というより、もともと承認欲求が強い方だと自己分析しています。だから売れるだけ売って、いろんな方に喜んでもらえると自分としてもうれしいです」


──「これからも売り子を続けられるんですか?」

Dさん「続けます。だって、普段の仕事よりも効率良く稼げるから


──「最後にもう1つ、お教えください。これまでに買い手に詐欺行為を受けたことはありますか? お答え頂ける範囲で、そのほか何かトラブルなようなことに遭われたのであれば、お教えください」

Dさん「あります。今はもうやめているんですけど、最初の頃、直販売で『生脱ぎ』をしていました。これは買い手に会って、目の前で下着を脱ぐことなんですけど、公衆トイレで下着を脱いだら相手の方が下着は持ち帰れないと言い出しまして、それで(下着購入の)金額分、身体を触らせて欲しいと言われたんです


──「え?」

Dさん「とても怖くて、振り払って逃げました。今思えば、そんな事態を想像できなかったなんて、浅はかだったと思っています。だからもう直販売はやりません」


──「そんな目を見ても、売り子を続けられているのは、やはり承認欲求ですか?」

Dさん「そうかもしれないですね。もう買い手に直接会うことはないですけど」


──「お話、お聞かせ頂き、ありがとうございました」


お金と承認欲求のために潜む危険を承知しながら、それでも売り子を続けてしまう……売り子本人の問題であると同時に、買い手がいることも理由なのではないだろうか。この闇は探れば探るほど、暗く深いものであると感じずにはいられない。

Report:佐藤英典
イラスト:Rocketnews24