平成の時代、我々のんべえは千円でべろべろに酔える店を「せんべろ」と呼んだ。時は令和、ついにその「せんべろ」を超えることになる……。
「わんべろ」。その名の通りワンコイン(500円)でべろべろに酔えるという、未曾有のサービスを生み出したのは大手居酒屋チェーン「金の蔵」だ。わんべろ誕生の経緯(いきさつ)と、金の蔵に挑んだ孤独な男の末路を見届けていただきたい。
・飲み放題定期券に隠れていた最強定期券
今年(2019年)3月、金の蔵を運営する三光マーケティングフーズはアプリ会員向けに定期券サービスを導入した。プレミアム飲み放題券とファーストドリンク券だ。前者は月々4000円で1800円の飲み放題が毎日利用できるという攻めたもので、「毎日利用すれば一回130円で飲み放題」というパワーフレーズで注目を集めた。
しかし私が注目したのは、後者。月々290円で1杯目のドリンクが無料になるというもので、たしかに飲み放題定期券と比べると弱い。だが飲み放題定期券は2品以上の料理注文が条件なのに対して、ファーストドリンク定期券は1品以上の料理注文が条件。しかも1杯300~400円が相場だというのに、たったの290円。毎日飲みたい真ののんべえなら、こっちに目が行くのである。
・業界最強定期券の限界に挑む
この2つの定期券には、次のような但し書きがある。
「1日に同一店舗1回利用可能(別店舗であれば同一日で利用可)」
別の店舗に移れば、またファーストドリンクが無料になるということだ。「そんな金の蔵いくつも無いよ~」と思われるかもしれないが、新宿には11店舗の金の蔵がある。そう、私(瀧川)が挑戦するのは「1日で新宿11店舗はしご酒」である。
・ビール1杯(おつまみ付)173円!?
緊張の1店舗目は新宿西口2号店。金の蔵アプリのお通し無料券は定期券とも併用できるそうで、サービスの全てを堪能。とりあえずビール、ということで数量限定オリンピックジョッキ(555mL)に入ったスーパードライを注文。
グビグビグビ~~~、ップハ! “神が人類に与えた至高のご褒美” と書いてビール。白目むいちゃうほど美味。お通しの枝豆も進む進む。ちなみに枝豆はおかわり無料である。
1品以上の料理注文が条件ということで、注文したのは最安の「手作り厚揚げ」。熱々の厚揚げに薬味がついてたったの173円(税込み)である。気になるお会計であるが、これが大変面白いことになってしまっている。
お通し 313円
手作り厚揚げ 173円
アサヒスーパードライ(555mlジョッキ) 599円
アプリお通し無料 -313円
アプリファーストDR無料定期券 -599円
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\ \ \ 合計金額 173円 / / /
173円!? これだけ食べて飲んで、たったの173円だとっ!? 2店舗回っても346円。346円で1L以上のビールが飲めてしまう。これを「わんべろ」と呼ばすに何と呼ぶ! ニューカルチャー誕生の瞬間である。
・11店舗制覇
お店からすれば迷惑でおバカな企画にもかかわらず、皆さん快く受け入れてくれた。特に新宿3丁目店ではお茶とお冷を用意していただき、「頑張ってくださいね!」と励ましの言葉までいただいた。なんて素晴らしい居酒屋なんだろう。私が金の蔵ファンになった瞬間である。
金の蔵巡りを続けること5時間。ついに最後の新宿東口総本店に到着。総本店らしく荘厳で薄暗い店内を、私はチャンピオンロードのつもりで闊歩した。相変わらず愛想の良い店員さんからいただいた品を平らげてお会計。これが新宿11店舗制覇のレコードだ!!
11店舗の合計金額
誤って注文してしまったものなどが含まれているが、鶏皮ポン酢や握り寿司まで食べて合計2936円! 11店舗もはしごをした経験がないため相場が分からないが、激安ではないだろうか。全て最安の厚揚げで回った場合、たったの1903円。割引額は最高で1万32円になる。もう訳が分からない、最高だよ金の蔵。
・現実的な使い方を考察
とはいえ、11店舗もはしごする暇人は私くらいだろう。そこで現実的なファーストドリンク定期券の使い方を考察してみた。
厚労省によると、1日の適切な飲酒量は純アルコールで20g。ビールでいうと500mL相当。つまりファーストドリンク “だけ” で十分なのだ。仮に金の蔵でもう一杯飲んだとしても400円前後。これにお茶漬け(313円税込み)を注文したとして、お会計は700円ほど。290円以下のメニューだけでも充実しているし、もちろん枝豆は食べ放題。大満足ではないだろうか?
・まとめ
通勤経路に金の蔵がある方は、通勤定期以上にファーストドリンク定期券が必須であることが分かった。ただし一部対象外店舗があるので、金の蔵アプリをいれて確認していただきたい。
ただしお酒は20歳になってからだぞ! 何はともあれ、金の蔵10周年おめでとう!!