その声を聞いた瞬間、私は膝から崩れ落ちそうになった。大阪市内を歩き回ってパンパンになった脚にとって、トドメの一撃になったと言っても差し支えない。


「本日の営業は終了しました」


──のひと言が。それにしても、なぜこんなことが起きたのか? 原因は新元号の「令和」なのだろうか? もしくは新元号割引サービス? いや、自分の名字か? そもそも この名前で生まれたことが悪かったのか?

・新元号割引サービスに狂喜して

原因を考えてもどうしようもないので、とりあえず何があったのかを説明したい。全ての発端は4月1日に発表された新元号。それが「令和」になったのは多くの方がご存知だろう。

では、その新元号にまつわるキャンペーンの一貫として、「氏名に “令” か “和” が含まれていたら飲食代割引」というサービスを実施しているお店があることをご存知だろうか?

たとえば、大阪にある『とんかつ小ばやし』では、 “令” か “和” のどちらか1文字が氏名に入っている場合はトンカツ1食半額で、2文字の場合はトンカツ1食無料になるらしい。ってことは……


自分の名字(和才)なら割引!

トンカツ半額ーーーー!


という気持ちを抑えられず、会社を飛び出して新幹線に乗り大阪へ向かったのは以前の記事でお伝えした通り


・大阪到着

その後、無事に大阪駅に到着。


当初はすぐにお目当てのトンカツ店へ向かう予定だったのだが、新幹線の中で「新元号割引を実施している店は大阪に結構ある」ということに気づいた私は、他の店を回ることにしたのだ。単純に、なるべくいっぱい割引を受けたかったからである

トンカツ店の方は大丈夫。だって、Googleで調べたら閉店は22時って出るし。


まぁ、ラストオーダーは30分前くらいかもしれないが、少なくとも21時30分までにお店に入っていれば大丈夫なはず……。そのようにタカをくくり、私は焼き肉店やら何やらを色々と回って新元号割引を堪能しまくっていた。


そして気がつけば21時前。ここで私はラストオーダーの時間がふと気になったので、お店に電話してみることにした。そしたら……冒頭の発言となった次第。

「じゃあ次の日の朝お店に行けばいいじゃん!」と思うかもしれない。私も同じように考えて、お店の人に聞いたところ午前の開店時間は11時30分。私が大阪在住ならば問題ないが、私は出張で大阪に来ている身であり、遅くとも翌朝9時台の新幹線に乗って東京に帰らないといけない。つまり……

トンカツ屋の新元号割引は……

自動的に……

アウツ……!


・なぜお店は閉店したのか?

視界がグラグラと揺れるような衝撃を感じながらも、お店の人に「22時閉店ではないのですか?」と聞いてみたところ、「品切れの場合は予定より早く閉めることがあります」とのこと。

よくある。実によくある理由だ。そもそも、こちらが「そういうこともある」と予測して動くべきだった。言うまでもなく原因は自分……なのだが、思い返せばイヤなことが起こりそうな予感はあった。新大阪駅の到着直後に送られてきた「雨雲接近」の知らせ。


街中を歩き出してすぐに始まったドシャ降り。


「今日は何かツイてないな」とは思っていた。しかしまさか、トンカツのために東京から大阪まで来て、トンカツを食えないという事態になるなんて……。

あまりにも悔しかったので、閉店になったお店の前まで行ってみることにした。


「外観だけで、なんとなく美味そうな予感がするな」と思いながら、そこでとりあえず自撮り。こんなことをしても無意味なのだが、気持ちだけは少し楽になる。だがしかし……


あとで写真を見たら、ブルーライトカットのメガネに反射した光が左目に思いっきり被っていた……。ことごとくか……!


4月1日のあの日、新元号が私に幸運を運んで来てくれたが、その分 ”運” の差し引きもきっちり行われていた……ような気がする。良くも悪くも忘れられない1日であった。


参考リンク:とんかつ小ばやしPRでっせ
Report:和才雄一郎
イラスト:原田たかし
Photo:RocketNews24.