右なのか、左か。
思想をあえてどちらかに分類するなら、私はたぶん右寄りということになると思う。かといって街宣車に乗りたいとは思わないし、最近ハマっているのは中国旅行だ。
私の周りの中国人も韓国人もいい人ばかりだけれど、もし国際問題でモメたとしたら断固戦いたいと思う。お国のために死ぬのは嫌だけど、お国のために死んでった兵隊さんには手を合わせたいと思う。日本の政治にはよくないところもあるけど、日本で生まれ育ったからには信じるしかないと思う……まぁ、難しいことはよく分かんないけどね!
このような漠然とした考えは、バリバリ保守派の方々から見れば「ノンポリだ」と言われることがあるし、逆に左寄りの方には「極右だ」と言われたりもする。私のような日本人ってけっこう多いんじゃあないでしょうか?
例えば私は「軍服ってかっこいい」と密かに思っている。でも、そんなこと大きな声で言ったら誰かに怒られるんじゃないだろうか? 誰がどういう理由で怒るのかは分からないけど不安になるのだ。
例えば「戦争犠牲者の気持ちを考えろ」とか……? 差別用語なんじゃないかとか、不快に思う人もいるんじゃないかとか……だからこういった話題の全てを本能的に避けている。
なにが言いたいのかというと、私が「自分は右寄りである」とする所以(ゆえん)は、つまるところ要するにただ「日本を愛している」ということだ。
ともすれば難しい今回のテーマを扱うにあたって、まず自分の立ち位置を表明するとともに不勉強さもお詫びしておきたく、前置きが長くなってしまった。できれば世界が平和になって全ての民族が仲良くできればいいと願っております。
なお、本記事の内容は私個人の見解であり、当サイトを代表するものではないことをご理解ください。
・北新地ヘやって来た
大阪市北区。夜の北新地は3000軒の飲食店がひしめく歓楽街で、1度は訪れてみたいと思っていた。どこか裕福そうな身なりの男性や着物のお姉さんなどが多く行き交っており、若者や外国人の姿はあまり見られない。東京に置きかえれば銀座ということになるのだろうか。
知人から「面白いマスターがいる」と聞きつけ、向かった先は『Bar 高橋』。知人によるとそこは軍歌が流れる「軍歌バー」とのこと。なんだか昭和っぽくて素敵な響きだ。
巨大な雑居ビルの階段をのぼると、いかにも「この道ひとすじ数十年」といった落ち着いた風情の看板が見えた。ネクタイをした高齢のマスターが「……いらっしゃい」と静かに迎えてくれる姿が頭にうかぶ。予想では口ヒゲも生えているんじゃないだろうか。お名前はきっと「高橋さん」に違いない……。
緊張しながら扉を開けると……
に、に、日本兵!!!
思わず「すみません」と口をついて出た。人生で最も捕虜の心境に近い状態だったかもしれない。マスターは確かに「ヒゲの高橋さん」でこそあったものの、それ以外の予想は大きく外れていたようである……スゴイところに来てしまった。
小さく軍歌は流れているが、それ以外のインパクトが強すぎてBGMに気づいたのはずいぶん後のことだった。店内には所狭しと日の丸の旗や軍隊グッズが並んでいる。聞けばここは別に軍歌をウリにしているわけではなく、客が各自で「軍隊酒場」「軍パブ」など自由に呼んでいるとのこと。
どこか高貴な雰囲気が漂っていると思ったら、マスターが着ているのは日本海軍「中佐」の軍服なのだという。軍服のバリエーションは10以上。常連からは敬意を表して「中佐」と呼ばれることが多いのだそうだ。ちなみに数年前「大尉」から格上げになり、50歳までには「大佐」になるのが目標とのこと。昇格基準は不明である。
高橋中佐は御年43歳。この店のコンセプトからするとずいぶん若いな、という印象だ。関西風にいうと非常に「シュッとした」体型の「ええ男」であり、軍服姿がりりしくていらっしゃる。
ウイスキーとワインの品揃えが豊富な、いたって真面目なバーである。注文したハイボールの写真を撮ろうとしたら、そっとオモチャのミニ戦車を添えてくれた優しさに万感の思いだ。
・最初にズバリ聞いてみた
「おい貴様!」とか言われちゃうのかと身構えていたら、意外にも中佐は物腰柔らかく「一服いかが」とタバコをすすめてくださった。ちなみに「いっぷく」ではなく「いつふく」が正しい。常連になると「貴様」扱いしてもらえるそうだが「初対面なので……」と、その容姿に反してあまりにもマトモな受け答えだ。ちょっと残念に思っている私。
いっそ「貴様!」で来てくれたなら、なんというかそういう、鳥肌実っぽいノリのものと解釈すればいいと考えていたのだ。しかし今のところ分からない。ネタなのか、ガチなのか? モジモジしていたらシーンとしてしまったので、思い切って「中佐は政治的思想をお持ちなわけじゃないですよね?」とハッキリきいてみた。
「いえ、保守です」
あっ、そうなんですね……。
中佐が指差す先にはお店で発行しているフリーペーパー。そこには「決シテ “ビヂネス右翼” デハ御座居マセン!」という文言が。へりくだったつもりが、逆に失礼をしてしまった模様である。
ではこの記事を書くにあたって、お店をどう説明すればいいのか? 中佐にお伺いすると、慎重に言葉を選びながら答えてくださった。
「国のことを真剣に考えている紳士淑女が昔の日本を懐かしみながら日常の垢を落とすために語り合うことも場合によってはある」
──と、いうことだそうだ。
それにしても中佐自ら「うまいこと喋る商売」とおっしゃるように、誰の反感も買わない絶妙な言い回しには感服の至りである。よくまぁここまで、自分の考えを的確に言葉にできるものだ。
店にある軍歌の音源は数百曲にもなるが「著作権フリーのものしか流さない」とか、腰から下げたモデルガンの「弾倉は抜いている」だとか、誰かにゴチャゴチャ言われる可能性はことごとく始めからつぶしておいでなのだ。「開店以来、モメたことは一度もない」というのもうなずける。
・あえて偉そうにするのがポイント
そうこうしていると次々お客が入店してきた。
「たれか!?」と中佐。「だれか?」ではない。「たれ(誰)か?」が正しい。
(ドアが開く)
中佐「たれか? 何名か?」
客「2名であります!」
中佐「よろしい。端から座れ!」
客「はっ!」
中佐「飲みなさい」
客「ハイボールを……」
中佐「なんだと!?」
客「レモンを……」
中佐「我慢せい!」
客「はっ!」
中佐「1杯いただいてよろしいか?」
客「あっ、気づかなくてすみません」
中佐「バカモン! 気づけ!」
客「はっ!」
……求めていたやつが見られて感激である。「あえて偉そうにするのがポイントだよ」とコッソリ教えてくださる、どこまでも常識人な中佐なのだ。これこそがこの店の楽しみ方。好きな人にはたまらないだろう。
この日の客は常連さん、出張サラリーマン、ホステスさんなど。「とにかく客層がいい」という『Bar 高橋』にはOLさんから著名人、自衛隊員も訪れる。他店との調和を図るとともに、変な客が来ないよう あえて外観に軍事色を出していないそうだ。
・主張があるなら理論武装せよ
普段から読書好きで、旧仮名遣いで書かれた島崎藤村や谷崎潤一郎の著書もサラサラ読めるという中佐。国内外問わず歴史に精通しており、その博識ぶりは不思議と体からもにじみ出ているように感じられるほどだ。訪れる客たちもみな国際情勢や日本の歴史に異様に詳しい。無知をごまかそうとしても一発でバレるので、私は最初から「不勉強ですみません」の一手で乗り切った。
ここには書けない過激な内容の会話も多くなされる店内。ある人は「もし文句を言ってくる人間がいても理論武装で跳ね返す」とのこと。「論破されたらカッコ悪いでしょ」なんて一度でいいから言ってみたい。
たとえば、この日は途中でドイツ軍の話になった。ドイツ軍といえば、ナチス・ドイツのイメージから「悪いことをした人たち」という印象だけは多くの人が持っているだろう。じゃあ彼らはどういう悪さをしたのか? と問われると、私は「ユダヤ人をいっぱい殺した」の次が出てこない。
それは確かにそうなのだけど、店内の皆さんにうかがったところナチス・ドイツの軍隊にも種類があって、大量虐殺を行ったのは「武装親衛隊」と呼ばれる組織なのだそうだ。国防軍、空軍、海軍といった正規軍はまた別の話であって、ひとくくりに「悪いドイツ軍」と呼ぶには語弊があるらしい。
「なるほど! つまり新撰組みたいなものですね?」と、この日一番の知ったかぶりを決め込めば「それは違う」と一同から一瞬でツッコミが入った。やはり無知は罪である。
ナチス・ドイツのシンボルマークが入った服を着たタレントが非難される、という事案は過去何度も起こっているが、そういった歴史的背景を勉強していればそもそも着なかったか、あるいは知った上でのことであれば謝罪する必要もなかったのではないだろうか?
・若者も若くない人も、勉強しよう
「“天皇陛下バンザイ!”って、ちょっと安っぽいんだよな〜 」と中佐。じゃあどう言えばカッコいいんですかとたずねると……
「せいせんをこじたてまつり……」
「われのせきせいごきんしんたてまつりそうろう……」
「とくせんけのごきんりのごしん……」
──聞きとれなかったうえに漢字も分からなかったよ!
聞けば昭和天皇という人は生涯で2回だけ、ご自身の意見を述べられたのだそうだ。色々とお話をうかがったのだが、予備知識のない自分が文字にして語弊が生じてはいけないので差し控える。ただ、中佐が噛みしめるように「昭和天皇エライ!」とつぶやいたのが印象的だった。
むかし学校の図書館で読んだ『はだしのゲン』によって、小学生だった自分はなんとなく「昭和天皇=戦争をした人」という構図をおぼえたものだ。しかしこの日聞いた昭和天皇像は、あの時感じたイメージと大きく異なるものだった。
べつにどちらが正しいというのではない。ただ、自分が正しいと思うことを自分の頭で判断するためには、知識が必要なのだと痛感した。
知識があれば自分の意見を堂々と言えるようになる。
・中佐の新元号予想
ご存知のとおり、今年は新元号となる。それを祝して『Bar 高橋』では4月30日〜5月1日、新天皇即位パーティーが華々しく開催される予定だ。来店者には紅白まんじゅうが配られるほか、貴重なワインも飲めるらしい。
ちなみに中佐の新元号予想によると、「文」か「久」の文字が入るのでは? とのことだ。
結局私は開店から閉店まで7時間も店に滞在。中佐にお見送りまでしていただいた。この日過ごした濃密な時間は、書けない内容が多すぎてあまりにもクヤシイ。ここを一歩出たらあとは本人の気持ち次第。「密室芸」ともいうべき『Bar 高橋』での思い出を、むやみやたらと外へ持ち出したりしないのが真の淑女なのだろう。
ビンビンきた人だけがここを訪れてほしい。
・今回ご紹介したお店の詳細データ
店名 Bar 高橋
住所 大阪府大阪市北区曾根崎新地1-7-6
時間 19:00〜2:00(土曜日は12:00まで)
休日 日曜日
※予算は2〜3杯飲んで約5000円ほど。カード決済も可能だが「敵国に利する恐れがあるため」現金(日本円)の使用が推奨されている。
Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.
▼手の角度に厳しい指導が入った
▼夏用の海軍帽子。オシャレ!
▼手の込んだフリーペーパーは中佐の自作
▼常連になると「召集令状」が届くらしい
▼貴重な陶器製の手榴弾。ちなみに「しゅりゅうだん」ではなく「てりゅうだん」
▼昔アニメでみた『のらくろクン』の元祖は、兵隊だったのらくろクンのおじいさんの物語らしい! 知らなかった……
亀沢郁奈























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