普段、電車を利用して出勤通学している人は多いと思う。電車は時間通りに運行して当たり前と思うかもしれないが、列車の運行会社のたゆまぬ努力によって、ダイヤは守られ、人々の足として運行を続けているのである。決して当たり前ではなく、乗務員をはじめとする運行関係者が努力を積み上げ続けているといっても過言ではない。

しかし、中には乗務員に対して残念な行為をする人がいるようだ。都内のある駅で見かけたポスターには「○○行為は犯罪です」とある。そんなことするヤツがいるとは。残念というよりほかない……。

・保線の仕事は重労働

私事だが、私(佐藤)は20代前半に保線の仕事に従事したことがある。地方のローカル路線で1時間に1本電車が走る程度の、のどかな区間だったが、その仕事はかなりきつかった。

重さ60キロの枕木を手で交換。100キロを超えるコンクリート製の枕木も手で交換。それが真夏であっても、真冬であっても、作業の基本は手作業だ。ただ重いものを運ぶだけでなく、精度も求められる。レールの高低差をミリ単位で合わせなければ、電車はスムーズに走ることが出来ないのである。


・「電車が走る」とは

夏の暑い日、日陰もないなかで早朝から作業に当たる。レールの温度が42度になったら、レールが熱で歪むため、作業は中止されるのだが、その温度に行きそうで行かない。熱中症になりそうになりながら、ひたすらバラストをかき分けたり。

冬の雪が降り積もるような寒い日、線路の分岐交換を行ったこともあった。電車の走らない深夜から作業を開始して、午前6時台の始発が走り出すまでに作業を完全終了しなければならない。寒さと眠気に襲われながら、何とか無事に作業を完了した記憶がある。


「電車が走る」、その一言の裏には、一般的には見ることのできない作業が無数に存在しているのだ。その上で時間通りに走るというのは、もはや普通のことではない。運行本数の多い都会ならなおさらだ。


・まさかの注意喚起

その陰の働きを多くの人が知らないのは仕方がないとして、最近駅で見かけたポスターはとても残念な注意喚起だった。運行状況とか、そんなものは関係ない。人としてどうなんだろうか。



「乗務員などへの「ツバかけ」行為は犯罪です。」(JR東日本、注意喚起ポスターより)


ポスターを掲出するに至ったということは、残念なことにこんな行為が繰り返されているからだろう。いくら電車が遅れたからとはいえ、いくら電車に関して不都合なことが起きたとはいえ、ツバを吐きかけるとは、人としてどうかしていると言わざるを得ない。

運行会社だって望んで電車を遅らせている訳ではない。時と場合によるが、安全な運行のために速度を遅くしたり、運行本数を減らしたりしているのだ。どんな理由があったら、ツバを吐きかけようと思うのだろうか。とにかく、そんなことは絶対にやめよう。

Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24