正直に打ち明けよう。私(佐藤)はラーメンがあまり好きではない。私が学生だった頃、地元に有名なラーメン店はなく、そこまでこだわりを持って食べるモノという認識がなかったためだ。そんな私が上京して驚いたのは、ラーメン店が多いこと。そしてタオルを巻いた店主が、めっちゃ威張って見えることだ。
もちろん、1000円以上するラーメンが存在することにも衝撃を受けていた……はずなのに! 何を血迷ったのか、2500円もするラーメンを食っちまう日が来るとは……。きっとアノ頃の自分が、今の私を見たら「お前マジかよ……」と言うに違いない。
・篝の跡地
そのお店「麺屋ま石」は以前、名店の「篝(かがり)」があった場所だ。数多くのブランドや高級飲食店の立ち並ぶ銀座のド真ん中でありながら、細い路地裏のおよそ “銀座らしからぬ” 立地である。
店の前に立つと、きらびやかな街並みから隔絶された秘密の場所に足を踏み入れたような、妙な気分になる。
その店構えが新しく見えるのもムリはない。2018年4月にオープンして、まだ半年と経っていないからだ。ちなみに、日本橋の寿司屋さんがプロデュースしたお店なのだとか。
それにしても、こんな場所に寿司屋さんがラーメン店をオープンするなんてね。なぜここを選んだんだろう? なんて思いながらメニューを見ると、価格は銀座の相場。ラーメンなのに!?
ベーシックな鯛ラーメンが1000円。桜海老鯛ラーメンが1300円、帆立が1400円で牡蠣が1500円。やるじゃな~い! まさに面白いように上がっていく。そして、その頂点に立つのが、雲丹三種盛り鯛ラーメンである。
そのお値段はなんと!
2500円!!!!
ラーメンなのに2500円だとッ!?
なんでやねん! 関西人でもないのに、暖簾に向かって裏拳を繰り出してしまった。まさか、ラーメンで1000円札2枚も出すなんて、ちょっとちょっと……。そのまま店の前を素通りしたはずが、ふと気がつくと、わずか7席のカウンターに座り、「ウニのヤツください」と言っている自分がいた。
う~ん……。また血迷ってしまったらしい。どうしてこういつも、高額メニューを見ると血迷ってしまうのか、自分でもよくわからないのだ。夏が暑すぎたせいにしておこう……。
・ウニだよ、ウニ
お店に入って注文すると、10分と待たずにラーメンが来た。これが2500円のラーメンか!
う~ん、ウニだ。ウニだな~。うん! ウニだ!!
トッピングの鳥チャーシューとメンマも別皿で添えられているが、どうしてもウニの方に目がいってしまうのは仕方がない。あらためて、器の中をよく見てみると……
中央に鎮座するウニ3種。それを囲うように円形に描かれたウニソース。それが元はあのトゲトゲした海洋生物であることを忘れさせる。そんな美しさだ。
もっと言うなら、これがラーメンであることさえも、私は一瞬忘れていた。それくらいウニの存在感は絶大なのである。
ちなみに、使用しているウニの産地は入荷状況によって変わるそうだ。では、今回のウニの産地はどこかと言うと……分からない。というのも、私はわざわざ「どこ産のウニですか?」と尋ねたのに、聞いた産地を忘れてしまったからだ。それくらい興奮していたことを理解して頂きたい。
・鯛出汁 VS ウニ
さて、まずはスープを一口すする。これが驚くほど鯛! 鯛出汁がどっしりと来る!! 「ガツンと鯛!」っていう名前のアイスクリームを売り出したくなるほど、強烈なインパクトだ。
鯛の力が強すぎるため、ウニの旨味や風味が消えてしまうのかと思いきや、その心配は無用だった。ウニを崩さないようにレンゲですくいつつ、口のなかに放り込んだら……
濃厚な甘さとウニのウマさが口にジワリジワリと広がってくる。鯛出汁には全然負けてない! むしろ勝ちだ。ウニが勝ってる。最後は絶対にウニが勝つんだよ、いつもいつでもッ!!
・アノ頃の自分に一言
という訳で、私の印象としてはほぼほぼ麺の出る幕はなく、鯛出汁とウニの一騎討ち状態。麺は脇役に徹しているような状態で、最後までその存在を主張することなく、私の食事は終わった。
まさか2500円も費やしてラーメンをすする日が来るとは……。アノ若き日の自分は、今の私にガッカリしているかもしれない。しかしこう言いたい! 「血迷ってるからセーフ!」と……。
・今回訪問した店舗の情報
店名 麺屋ま石
住所 東京都中央区銀座4-4-1 銀座Aビル1階
営業時間 11:30~15:30 17:00~22:30 / 土日祝11:30~21:30
定休日 なし
Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
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