・海を見たことがないパキスタン人を日本の海に連れて行ったらこうなった(その2)
海だ! 海が見えたぞ!! その瞬間、口々に雄叫びをあげるパキスタン人留学生たち。「キレイです! とてもキレイです!!」もはやウルドゥー語も通り越して日本語で感動をつぶやく。その目は太陽光を照り返す水面よりキラキラしていた。
いつからだろう? 初めて見るものや体験することにストレートに感動できなくなったのは……。彼らを見ていると思わずそんなことを考えずにはいられない。
おっといけない。海を前にして思慮は不要だ。本能の赴くままに! みんなついてこーーーーーい!!!!!
水着に着替え海にダイブ! ヒィィィハァァァアアア!! 最高!
と、その時、ヤストゥールが……
前回の記事で圧倒的真顔だったヤストゥールが……
めっちゃ笑ってるゥゥゥウウウウ! そんな笑顔できたのか!?
ヤストゥールだけでなく、満面の笑顔じゃない人が1人もいなかった。お前らホントキラキラやな!
……と!!
ラザ? どこ見てんの?
ラザ!
普段、ぼんやりした雰囲気のラザが水着女子に目を奪われていた。パキスタンでは宗教上の理由から、女性は肌を見せない。必然的に海でも肌を露出することはないのだ。もちろん、セクシービデオもない。
・ナンパにチャレンジするパキスタン人留学生
そう考えると、彼らにとって、日本の海はかなり刺激が強いのかもしれない。さらに「日本人の彼女が欲しい」というラザ。どうやらナンパをしたいみたいだ。
だが、パキスタン人留学生のふところ事情が寂しいのは以前の記事でお伝えした通り。海の家でお茶するお金を持ち合わせているわけがない。「ナンパしたいけどお金がない」とラザ。そこで、3000円を渡して言った。
「女の子をお茶に誘って、成功したらこの3000円を使え。失敗したら返す。オール・オア・ナッシングだ」
──と。かくして、ウサマとツーマンセルで声をかけに行くラザ。ちなみに、ナンパするのは初めてだという。その背中に緊張感が漂う。
……! 話しかけた!!
ドキドキ……
ドキドキドキドキ……
あっ(察し)……
どんまい……。なお、ラザが緊張の初ナンパに撃沈している間に、ヤストゥールは8人の女性に声をかけたという。
こっちはこっちでフィーバーしすぎなので埋めた。
・解き放たれる留学生たち
逗子海岸に溶け込むアハマド、見ず知らずの少年と遊びだすゼビ。解き放たれたようにフリーダムなパキスタン人留学生たち。あんまり遠く行くなよー! そうこうしているうちに遊泳禁止の時間となった。みんな集合!!
結局、2時間しか遊ばせてあげることができなかったが、初めての海はどうだったのだろうか? 最後に、みんなに感想を聞いてみたところ……
ヤストゥール「綺麗な女の人がたくさんいて楽しかった。とても」
タルハ「海は綺麗で、人もたくさんいて、友達と来れて楽しかった。2回3回来たい」
ウサマ「友達と一緒に遊べて楽しかった。女の子に初めて話しかけて恥ずかしかった」
ラザ「綺麗な女の子がたくさんいて楽しかった。スイカもおいしかった」
アハマド「泳いだりスイカ食べたり楽しかった。海がとても綺麗」
ゼビ「新しい友達もできてとても楽しかった。日本人は親切」
──言葉以上にその表情が語っていた。良い思い出となったようである。
夏休みもあと少し。2020年の3月には日本語学校を卒業する彼ら。卒業後は、車の専門学校に行く予定だという。専門学校に入るための日本語レベルは「N3(日常会話レベル)」と決して甘くない。
帰り道、高速道路から花火が見えた。
みんなで見る花火はとてもとても美しかった。
暗闇を走るバン。
ヘッドライトの明かりは夜の闇を照らすには心もとない。
だが、夜空に咲く大輪の花が照らしだす瞳には透き通るように真っすぐな光が灯る。
まるで、この夜の先にある「夢」を見据えるように。
取材協力:ホツマインターナショナルスクール
Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
▼マクドナルドが好きなパキスタン人留学生たち。みんなで食べるマックは格別だった。
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