2016年11月12日の封切り後、2018年7月24日現在も脅威のロングラン上映が続いている映画『この世界の片隅に』。ちょっとした社会現象を巻き起こした感のある大ヒット作でご覧になった方も多いのではないだろうか。

こちら、実は原作を同じくする同名のTVドラマがTBSにて放送中なのだが、映画版公式Twitterのあるツイートが物議を醸し、TVドラマ版に対するヘイトが上昇しつつある事態となっている。

・映画版公式Twitterからの突然の「お知らせ」

発端となるツイートは本日7月24日の正午に「映画『この世界の片隅に』製作委員会からのお知らせ」として投稿されたもの。


「現在放送中の漫画『この世界の片隅に』を原作とする実写ドラマに「special thanks to 映画『この世界の片隅に』製作委員会」と表記されておりますが、当委員会は当該ドラマの内容・表現等につき、映画に関する設定の提供を含め、一切関知しておりません。
2018年7月24日『この世界の片隅に』製作委員会」


これに対するネット民の反応は、概ね2種類に分けられるようなものとなっている。


1:「ドラマ版での演出と、映画版での演出に酷似した点がある」ことについて、「何の契約関係にもなかったのに演出をパクったのか」という方向で、ドラマ版に怒りを向けている人。

2:「Special thanks to」という言葉から「契約」や「協力」という両者の関係性をイメージしていたものの、そうではなかったことを知って「無許可でspecial thanks to 映画『この世界の片隅に』製作委員会」と表記していたことについて問題視している人。


前者についてはノータッチとさせていただくとして、私(江川)が気になったのは後者の人達である。

・Special thanks toとは

SNSが発達し、誰もが自由に誰とでも意見を交わせるようになった昨今よく見るのが、言葉の意味に対する認識の違いから発生するいざこざだ。皆さんも1度は目にしたり、巻き込まれた覚えがあるのではないだろうか。

今回のもその類だと思う。そして、そういう時に私が心がけているのは、その言葉の今あるイメージを捨ててその言葉本来の意味に立ち返ったり、他の場面での使われ方に目を向けることである。

では、Special thanks toは、本来どの様な意味だろう。

「Special」は「特別」thanksは「感謝」……つまり「特別な感謝を」といったところだ。そこに「契約」や「提携」「協力」的な意味は無い。フランクに言うと「マジでありがとな!」って意味しかない。

・他の映画の場合

他の場面ではどうだろう。『君の名は。』のヒットも記憶に新しい新海誠監督が、2015年に公開された岩井俊二監督の『花とアリス殺人事件』のエンドロールに「Special thanks 新海誠監督」と記載されていたことについて、気づいた人のツイートに対する、新海誠監督ご本人のツイートが以下の通りだ。


「えええ、クレジットに!?気づきませんでした。スタッフは確かに美監の滝口さんはじめ『言の葉の庭』からたくさん参加なさってます。僕は蚊帳の外ですが」


その後、実は『君の名は。』のエンドロールにspecial thanksとして、本作に全く関わっていない岩井俊二監督の名前が入っている。

・本来の意味通りの使われ方

これらを見る限りspecial thanksというのは、無償で協力してくれた方や、日頃からの感謝を伝えたい相手、あるいはインスピレーションを受けた相手など、作品には権利や契約上全く無関係の人の名前を一方的に掲載していいものなのだろう。

・まずは落ち着こう

確かにspecial thanks toを、それだけで専門的な意味を持ちえる1つの熟語として捉えた結果、「契約」や「提携」「協力」的な関係性をイメージしてしまうという心理はわかる。

また、ドラマの制作会社が何かと炎上案件を生み出しがちなTBSだという点が悪影響を及ぼしている感も否めない……。

しかしそれらを踏まえた上でも、「問題では!? 」や「勝手に○○したってこと!? 」などと反射的に事を荒立ててしまうのはどうかと思う。こういうときは、本件に限らず一度落ち着いてその言葉本来の意味や、他での用法に目を向けてみるべきではないだろうか。

ということで、Special thanks to 読者のみんな

参照元:Twitter @konosekai_movie@shinkaimakoto
執筆:江川資具

▼映画『この世界の片隅に』の公式ツイート

▼こちらが新海誠監督のツイート