
生まれ育った地元を離れ、なかなか慣れない新生活に疲れやストレスを感じている方も多いと思うが、そんな時はもう一度しっかり荷物整理をしてみるといいかもしれない。もしかしたらカバンの中に、家族からの手紙や故郷の土産が入っているかもしれないからだ。
数年前、私(筆者)は日本を離れて東アフリカの「ジブチ共和国」にある日本法人の施設内で働いていた。慣れない仕事はさておき、日中の気温が軽く40度を超え、蛇口をひねっても少量の塩水しか出てこない過酷な日々。あっという間に私も同僚も疲労がMAXになっていた──。
・地獄の新生活
寝るとき以外は、食事も仕事も全員一緒の寮生活。アフリカという土地柄なのか、勝手な外出は禁止だったが「寮内Wi−Fi完備」という情報がまさかのウソだったため、日が暮れてから社員寮をコッソリ抜け出し、Wi−Fiを求めて灼熱の暑さの中をさまよう……新生活はそんな感じでスタートした。
また、同じく渡航前に伝えられた「食事は、社員寮にいるシェフが日本食を用意します」という情報もウソで、朝はフランスパンのみ、昼・夜は「勤務地である施設の残飯をテイクアウトする」というのが定番……絶句するしかない環境に、退社する職員も続出であった。
・深まる社員同士の絆
ただ、メンバーの入れ替わりは激しかったが、約15人のオッサンが1つ屋根の下で過酷な生活を共にする「カイジ」的な毎日のおかげで、社員同士の絆がマッハで深まったのは間違いない。「無事に帰国をしてビアガーデンで乾杯する」という目標を掲げて社員は一致団結。そして奇跡が……。
・荷物の中から羊羹
ジブチでの生活も約2カ月が経過した頃、50代社員のカバンの中から「娘さんからの手紙」と佐賀県名物「小城羊羹(おぎようかん)」が出てきたのだ……! 愛情に飢えていた社員一同、涙をこらえて拍手。そして先輩が一言。
「羊羹を……皆で分け合って食べましょう」
まぶしい、なんというか、一切れの羊羹があまりにもまぶしい。口に入れると……ああああああ~~なんと上品な味。舌の上で溶けていくきめ細かな甘さは、江戸時代から受け継がれる伝統そのもの。地球で1番暑い国・ジブチでは決して味わえない、日本の心の味である。
「一杯のかけそば」ならぬ「一切れの小城羊羹」に社員一同、激しく感動を覚え、それぞれが深く深~く先輩、そして神に感謝を伝えた。それにしても羊羹がこんなにウマいとは……。帰国をしたら佐賀に直行して小城羊羹をもう一度食べる。そう心に決めた瞬間であった。
・どら焼きを食べたい……
さて、一度ウマいものを食べると「次は○○を食べたい」となるのは当然の流れである。小城羊羹のおかげで和菓子の美味しさに目覚めた私たちは「次は絶対にどら焼き」という結論に達した……のだが、もちろんジブチには売っていない。そこで、日本の本社に連絡をして、どら焼きを送ってもらうことに。
ただ、ジブチの社員寮には住所が無い & 郵便配達員も存在しないため、基本的に郵送は無理。それなら「日本からやって来る新規社員に、どら焼きを持たせればOKなのでは!」ということで、私が全社員を代表し「現場は過酷な環境で頑張っているので、人数分のどら焼きを……」と本社にお願いしたところ……
「今回は特別に、あなたの来月分の給料から天引きをして、どら焼きを買います……が! 今後2度と、仕事に関係のないお願いはしないように。ガチャッ、ツーツー……」
・激怒
──それから1週間後、何も知らない新規社員がコンビニ袋を持ってジブチ入り。1個150円のどら焼きが5~6個入っていたのだが、どら焼きの数が全然足りない & コンビニで買った & 給料から天引き……って、バカにしてんのかコラァァァアアアアアアーーーッ! となって大騒ぎ。
その後も、社員へのヒド過ぎる扱いが問題となり、ジブチ人職員はストライキを起こし、日本人職員は集団で体調不良になり……で、気がつけば会社ごとジブチから撤退することになっていた。そういえば、ジブチで入院した社員もいたな~。みんな元気にしているだろうか。
・荷物を整理してみよう
──とにかく、数々のトラブルはさておき、私たちは佐賀県名物の「小城羊羹」に救われた。また、娘さんからの手紙を読んだ先輩は「辛くても頑張る」と気合が入ったという。大変な思いをしている方は、時間を見つけて荷物整理をしてみてほしい。もしかしたら嬉しいサプライズがある……かもしれないから。
Report:砂子間正貫
Photo:RocketNews24.
砂子間正貫






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