普通に生きていると、劇的なシーンに遭遇することはそこまで多くない。飛行機の機内で乗客が倒れ、「お客様の中にお医者様はいませんか!?」という客室乗務員の呼びかけにスッと立ち上がる一人の男……なんてことはめったに起こらないものだ。
そもそもドラマ以外でそんなことあるんかいな? と、私(あひるねこ)などは思ってしまうのだが、先日たまたま入った松屋で、若干それっぽいシーンに出くわしたためお伝えしたい。と言っても、非常に些細な話なので、軽~い気持ちで読んでもらえると幸いだ。
・松屋での出来事
2~3週間ほど前だろうか。私は遅い昼食を取りに、編集部近くの松屋へと向かった。普段はお弁当を買うことが多いのだが、この日は目的のメニューがあったのだ。なんでも、松屋の『ごろごろ煮込みチキンカレー』というカレーが激ウマだという。
特に編集長・GO羽鳥が「いつなくなっちゃうか不安……!」と汗をダラダラ流しながら食べている姿がクソうけたので、そこまで言うなら食べてみようかという気分になり、久しぶりに松屋に入った次第である。
注文してみると、話に聞いた通りたしかにウマい。本当にチキンがゴロゴロ入っているし、カレー自体も好きな味だ。このレベルが24時間食べられるのはスゴイなぁと思いながら、私は一人黙々と食べ進める。その途中、券売機の調子がおかしいのはなんとなく感じ取っていた。
・調子が悪い券売機
なぜなら、先ほどからアルバイトらしき男性店員さんが鍵を持って、厨房と券売機の間を行ったり来たりしているから。そこそこベテランっぽい雰囲気だが、私もアルバイトの経験があるからよく分かる。こういった機械のトラブルは、自分の手に負えないレベルだと非常に焦るものなのだ。
・鳴り響くエラー音
食べることに集中しながらも少し気になっていると、新しく入ってきたおじさんがその券売機の前に立った。食券もお釣りも問題なく出たようだが、おじさんが席に着こうとしたところで「ビーーーーー!」というエラー音が店内に鳴り響いてしまう。
慌てて出てきた店員さんが機械のフタを開けることで、券売機はひとまず機嫌を直したらしい。ようやくブザーが鳴り止んだ。しかし、その後もガチャガチャと券売機の中をいじる店員さん。大変だなぁと横目で見ていると、そこへさっきのおじさんが「俺、なんかしちゃったかい?」と尋ねた。
・予想外の展開
「いえ、大丈夫です! すいません!!」と返しながら作業を続ける店員さんを、おじさんは心配そうに眺めている。40才くらいだろうか。作業着を着たそのおじさんは、虫の居所が悪い券売機に悪戦苦闘している店員さんに向かって、再び話しかけた。
「俺、仕事でそういう機械が専門なんだけど、よかったら見ようか?」
マジかよおっさん! これは予想外の展開だ。「お客様の中に〇〇はいませんか?」とは少々異なる逆オファー状態だが、なんかめっちゃ熱いぞ! のそっと席を立ったおじさんは、店員さんに代わって券売機をいじり出す。
・ちょっとした出来事
作業自体は、おそらく1分ほどのわずかな時間だったと思う。機械を指さしながら「とりあえず〇〇を××しておいたから」的な解説をして、席へと戻っていくおじさん。「すいません、ありがとうございます」という店員さんの声を聞きながら、すでに食べ終わっていた私は店を出た。
失礼な話だが、決して小ぎれいなおじさんというわけではなかった。もちろんお医者様でもない。しかし、困った様子の店員さんにスっと手を貸すおじさんは、やたら頼もしく見えた。誰かができないことをできる人がいる。そうやって社会は成り立っているのだな。そんなことを考えながら、私は編集部へと戻ったのだった。
執筆:あひるねこ
Photo:RocketNews24.