本日4月6日は「新聞をヨム日」だ。日本新聞協会販売委員会が2003年に制定したこの記念日。だが、どんなタイミングであろうと誰が何と言おうと、私(中澤)は2度と新聞は取らない。そう心に決めたのは、ある新聞販売員との出来事がキッカケだった

・出かける直前に声をかけてきた販売員

話は10年前までさかのぼる。大阪から上京してきた直後でひとり暮らしも慣れない私の家へ、ある日大手の新聞社を名乗る男性が販売営業にやってきた。普段は友達以外の訪問には居留守をしていたが、その時は出かける直前で、外に出たところで声をかけられたのを覚えている。

短髪に刈り上げた髪、浅黒い肌の色……サッカー選手の長友の目をパッチリさせたような爽やかな雰囲気の男性。渡してきた名刺には全国3大紙のうちの1社の名前が書かれていた

・新聞を取る余裕がガチでない

だが、私は新聞を取る気なんて一切ない。というか、当時の私は、フリーターでバンドマンで東京ひとり暮らし……生活基準は最底辺でかろうじて生きているという感じだった。新聞を取る余力なんてあろうはずもない。

というわけで、その辺の事情を包み隠さず打ち明け本当に不可能なことを真摯に伝えた。マジですみません。取捨選択しているわけではなくシンプルに死にそうなんです。実は借金もあるんです。

・それくらいなら大丈夫

すると、長友は「凄くわかります」と生活苦に同感してくれた上で、自分もノルマがキツイという話をしだした。ガチで怒鳴られると。年齢が近かったこともあり長友の話に共感せざるを得ない私。そこで、長友が借金の額を聞いてきた。

これも正直に答えたところ、「それくらいなら全然大丈夫っすよ!」と長友。いやいやいや、他人事だなお前は! 一瞬はそう思ったが長友は長友で大変なんだろうな。それはにじみ出てるわ。もし、金があったら長友のノルマに協力したいんだけどなあ……。

・長友の代案

ともかく、もう1度ハッキリ断った。すると、「仕方がないスね……」と納得した様子の長友。良かった。わかってくれた。これで終わりか……と思いきや、なんと長友は驚くべき代案を提案してきたのである!

その代案とは、とりあえず来年から新聞を取り始めるという予約を入れて、長友がキャンセルしておくというもの。予約段階ではお金はかからず長友のノルマの足しにもなるという。お金がかからないならいいか。

念のため「絶対キャンセルしてね」と念押ししたところ「バッチリキャンセルしますよ! ありがとうございます!!」と帰っていく長友。一応メモもしていた。かくして、私はやっと出かけることができたのである。

・1年後

そして、1年が経った。そんなエピソードがあったことも忘れていた私の元に、突然、大手新聞社からお知らせが届いたのである。勘の良い人ならもうわかると思うが、それは「明日から配達します」という購読開始の通知だった

その通知を見た瞬間、全てを鮮明に思い出した私。速攻で新聞社に電話し、その販売員とのことを話してキャンセルの申し込みをした。その時に対応した人のセリフは今でも忘れられない。

・衝撃の回答

大手新聞社「こちらでは営業所の販売員まで把握してません。ただ、そういうことをする人もいるので騙されないようにしてください

──コンプライアンスとは何なのか? 確かに、私がアホだったことは間違いない。世間知らずだった。だが、まるで騙されるヤツが悪いというような対応はいかがなものか

というわけで、私は騙されたくないので新聞は一生取らない。新聞の販売営業の話も一生聞かない。だって会社で嘘をついてノルマを取る人を「そういう人もいる」と終わらせるなら、何がウソかなんて見極められないもん。

・4月はキャンペーン

なお、これはあくまで10年前の私の体験であり、現在の新聞販売所の内情は知らない。ただ、何かしら改善されていたところで過去のことは改善できないことも事実である

4月は転勤や入学等で住いを移す人が多いことから、「これを機会に新聞を読み始めませんか」というキャンペーンが行われるという。新聞を取る気がないのであれば、基本的には対応しないことをオススメしたい。

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.