都内屈指のターミナル駅・池袋。大型ビルが立ち並ぶ派手な駅前はまさに都会である。だが光があれば影があるように、都会を歩いていると気持ちが暗くなるようなシーンにぶち当たることも多い。

つい先日、私(中澤)が強烈に「都会」を感じさせられた話をしよう。閲覧注意

・街中で

突然だが、あなたは街中で死体を見たことがあるだろうか。多分ほとんどの人が見たことないのではないだろうか。なんだかんだで治安の良い日本では、街中に死体が転がっていることなんてほぼない。

そのため、仮に人が死んでいるように見えたとしても、「まさか本当に死んでるはずはない」と1度現実から目をそらすのが普通ではないかと思う。少なくとも、先日の私はそうだった

・夕方の池袋駅

そう、あれは1週間ほど前の夕方のこと。私は、JR池袋駅の改札から待ち合わせスポットの石像「いけふくろう」を通り、東口に出るため階段を上がった。西日の射しこむ東口は、休日のためか行き交う人々で大混雑状態。道に出るまでの短い構内を行列のようにジリジリと進む。

異変を感じたのは、出口2m前くらい。駅と道の境目にある駅ビルのパルコの角で少しだけ人の流れが歪んでおり、建物と行列の間に人1人分くらいの隙間ができている。どうやら、誰かがそこに寝ているようだ。人の波はその人物を舐めるように歪んでゆっくりと流れていく。

・ホームレスが寝ている?

近づくにつれてその隙間にいる人物が見えてきた。ホームレスだろうか? 50~60代の男性が丸まって寝ている。足を出口方向に向けているその男性。

列に沿って男性の頭の前に立つとゲロがあった。池袋ではホームレスがこんな感じで寝ているのは珍しくもないのだが、なぜか圧倒的な違和感を感じる。この違和感は何だ? 列は蟻の行列のようにゆっくりゆっくり進む。

列が男性のお腹の前に来た辺りで、違和感の正体に気づいた。寝ているにしてはかなり不自然な体勢なのである。くの字に折れ曲がった体、体と真っすぐになって地面から浮いている頭。男性は、全く脱力できなさそうな姿勢で、まるでパントマイムのように完全に静止していた

・さらに気づいた衝撃の事実

これは本当にホームレスが寝てるだけの事態なのだろうか? でも、誰も通報したり驚いたりする気配がない。人波は平然と進んでいく。やっぱり寝てるだけか? と、その時、私は衝撃の事実に気づいた。


目が開いてる……。


気配がなさすぎて気づかなかったのだが、両目がバッチリ開いていた。そして、そのどこも見ていない目を見れば、否が応でも理解できた。男性がすでに生きてはいないことが。落ちていたゲロは血反吐だったのである。

・通報

もちろん、出口を出てから速攻で警察に通報した。それにしても、あの人ゴミで、なぜ夕方になるまで誰も通報しなかったのかが不思議でならない。突然、死体が現れたわけでもあるまいし……。

考えてみたら、あの場には「スルーする空気」のようなものが流れていた気がする。明らかに異常なのに「まさか死んでいるわけがない」「誰かが通報するだろ」とチラ見して通りすぎる人々。最初に動きづらい圧力のような空気感。死体はもちろん、その空気感に都会の怖さを感じた私だった。合掌。

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.