突然だが、皆さん! 誰かに「だいてやる」と言われたら、どんな気持ちがするだろうか。嬉しい? 不愉快? いずれにせよ、まずドキっとしたり、ビックリするのではないだろうか。
さて、先日、富山県であるポスターを発見した。そこには、落語家の立川志の輔さんの姿と共に、まさにこう書かれていたのだ。「だいてやる」。ちょっと公共の場で何言ってんのよ~っ! しかもこのポスターは、自治体が作ったというではないか。……見た側は、一体、どう反応すればいいのか。ポスターを作った射水市に聞いてみた。
・「だいてやる」について射水市に聞いてみた
射水市。水を射ると書いて「いみず」である。ポスターを制作した港湾・観光課で聞いてみたぞ。
──志の輔師匠のポスターを見ました! 単刀直入に聞きます。“だいてやる”ってどういうことですか!?
「 “おごってやる” の意で使われます。おごってやる → だしてやる → 富山弁でなまって “だいてやる” という感じです。つまり、“だいてやる” は “おごるよ” や “ご馳走するよ” ということになりますね」
──!!!!!
富山弁、だったのか! なるほど、そういうことですか!! 「だいてやる」と見て、一瞬、別の意味が頭をよぎった私は、心が汚れていたのだろうか。そんな自分をなかったことにしたい。それはさておき……
・誰が、いつ使うの?
──私にも富山出身の友人います。ですが、実際に「だいてやる」と言うのを聞いたことがありません。誰が、いつ使うんですか?
「やっぱり目上の人が使う言葉ですね。上司が部下におごるときなどです。男性が使う男前な言葉なんですよ」
──確かに言われてみると、男前な響きですね! ……ときに、男性が男性に使ってもいいのでしょうか?
「男性が男性に使ってもOKです! ただ男性が女性に使うと、別の意味でとられるとアレなので女性に使うのは仲間うちですかね」
方言の男性言葉! それも40代50代以降で使われることが多い言葉!! なるほど、私の友人はほとんどが女性なので、聞いたことがないのも納得だ。
とはいえ、「だいてやる」は死語になった方言ではない。若者も意味がわかるばかりか、何なら別の意味にかけて冗談で使うこともあるのだとか。「きときと(活き活きした)」「きのどくな(ありがとう)」に並んで、県内では最もよく知られる富山弁のひとつであるそう。
ちなみに、実際に使う際は「だいてやるちゃ」と言うこともあるとのこと。“ちゃ”、だなんて、なんだか可愛いなぁ! 想像してみよう。仲良しのカッコイイおじさまに「今日はだいてやるちゃ」とか言われたら、なんだか萌えはしないだろうか。方言女子もいいけど、方言男子にもドキっとしちゃうものだ。
・だいてやるって言われたら、こう答えよう!
いやぁ、勉強になりました! しかし、よくこのフレーズを全面に押し出したものだなぁ! 聞けば、ユーモアと、富山弁の温かさがあわさったインパクトのあるキャッチフレーズということで、この言葉が選ばれたそう。そして、
「まずは、射水市を知っていただきたい。そして、県外の人にはドキっとしてもらえるような、県内の人にはニヤっとしてもらえれば。そして、方言のあたたかみを感じていただければと思います」
と、ポスターに込めた思いを聞くことができた。この話を聞いて、再度ポスターを見てみると、最初の「ファッ!?」という印象から一転、あったか~い気持ちになってくる。いやはや、まんまと射水市の手の上で踊らされてしまいました!!
大事なことなので覚えておこう。富山弁の「だいてやる」は「おごる」ということ。富山弁で「だいてやる」と言われても、ビビる必要はない。素直に「ありがとうございます!」とご馳走になっちゃおう!
なお、まったくの余談だが、観光課の方(男性)に、だいてほしい男No.1を聞いたところ、
「仕事を頑張ったとき、課長に “だいて” ほしいですね」
とのことだった。……わかる。それメッチャわかります、私も上司に “だいて” ほしいです! ということで、お誘い待ってます! いつでも “だいて” くださいな♪
参考リンク:射水市公式サイト[きららか射水NAVI]
Report:沢井メグ
Photo:射水市 , used with permission
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▼こちらがそのポスター! 射水市(旧新湊市)出身の立川志の輔師匠、射水の海鮮、射水の割烹とオール射水なポスターでもあるそう
▼嬉しがりなので、さっそく使ってみました