徹底的に搾り取る。JASRAC に対して、年貢の取り立てのようなイメージを持っている人も多いだろう。現在、そんなJASRAC に、真っ向から対立しているのがヤマハ音楽教室だ。音楽教室から著作権料の徴収を目指すJASRACと反論するヤマハ。
2017年9月6日、対立はついに裁判へ。NHKによると「ヤマハ音楽振興会」の三木渡常務理事は、「使用料を徴収されれば日本の音楽文化が細る」と語ったという。ネットからも同様の声が多くあがっているが……ぶっちゃけ音楽教室がなくなっても日本の音楽は衰退しないと思う。
・JASRACを支持するわけではない
まず、はっきりさせておきたいのは、私(中澤)は決して JASRAC を支持しているわけではないということ。むしろ、権利にまとわりつくような JASRAC のやり方は好きではないし、ヤマハには頑張ってほしいと思っている。
だが、それはあくまで JASRAC と音楽教室の対立の話だ。音楽教室がなくなったところで、日本の音楽のクオリティーには関係ない。そう思う理由を以下に述べたい。
・音楽の最前線でのこと
現状、日本で最もCDが売れている音楽ジャンルはJポップだろう。Jポップの定義はかなりあいまいだが、今回は、アイドル、バンド、ソロシンガーなど日本人の歌う歌もの音楽を全てまとめて「Jポップ」と呼びたい。
バンド活動を10年間している私。色んなバンドでCDも何枚か出したが、音楽教室や専門学校の出身者に会うことの方が珍しかった。レコーディングの現場でも、ライブハウスシーンでも。
これはおそらく、出身者の多くが、常に新しく生まれ変わり続けるシーンで「通用しない」からだと思われる。その証拠に、たまに会うことがあっても変に古くてカタい音楽やアレンジをやっていたりする。
もちろん、出身者全員がそうというわけではないが、習うことによって「音楽の常識」が固まってしまっている人は多い。それは、むしろクリエイトの妨げになっているような気がしないでもない。
・上の世代のプロの現場
また、プロの現場のクリエイターや演奏者においても、音楽教室や専門学校の出身者は意外なほど少ない。これも、バンド活動をする前の2年ほど、プロギタリストの付き人をやっていた私の経験だ。
劇伴や、CMソング、超有名人のバックなど、日本の音楽を作ってきた上の年代の音楽人は、ほとんどが「自分で勉強した人」なのである。ちなみに、その人たちの中には講師をしている人もいたが、ある時、専門学校についての話を聞いたところ「音楽を習おうとは思わない」と言っていた。
上記の音楽業界の現場について、もしピンと来ない人は、他の芸術分野に置き換えると良いかもしれない。例えば、マンガや絵画、デザイナーなどのクリエイターに、専門学校や教室で習ってプロになった人はどれくらいいるだろうか。
もちろん、JASRAC が今後徴収の幅をどんどん広げた結果、音楽が衰退するということはあるかもしれない。なので、「ここでヤマハが一矢報いれば痛快だな」という気持ちはある。
しかし、みんなが口を揃えて「音楽業界が衰退する」というなら、私は実感として「教室や専門学校はそこまでではない」と言いたい。ぶっちゃけみんなJASRACが嫌いなだけでしょ?
参照元:NHK
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.