悲しいけど、歳をとると自由な発想をしにくくなる。慣れ親しんだ日常の延長線上に、すべての物事があるような気さえしてくる。その点、子どもは自由だ。何にでも興味を示して、ハッとさせられることも。

そんな自由な発想を呼び起こしてくれる、面白い絵本がある。数年前にネット上で話題になった『うどんのうーやん』(ブロンズ新社)だ。この作品の作家、岡田よしたか氏の他の作品を読んでみると、どれも奇想天外! 想像を超えるユニークな発想が詰まっており、大人が読んでも楽しめる

・『うどんのうーやん』

『うどんのうーやん』とは、リアルに描かれたうどんを擬人化した物語。人手不足のうどん屋さんで、うどん(うーやん)自らが出前に出かけるというトンでもない物語だ。出前の道中でさまざまな食材と出会い、彼らを引き連れて出前先まで訪ねて行く。

もう設定からしておかしい。しかも「うーやん」はなぜか関西弁。だが、この物語はどうなるの? という興味をかき立てられて、最後まで読むとホッコリ笑顔に。何という自由な発想なのだろうか? と驚かされる。

ちなみに、岡田氏の食べ物擬人化シリーズは、2009年の『特急おべんとう号』という作品に始まったそうだ。うどんのうーやんは、『ちくわのわーさん』(ブロンズ新社)、『こんぶのぶーさん』(ブロンズ新社)に並ぶ3部作。

・『ぼくらはうまいもんフライヤーズ』

3部作以外にも、岡田氏の食べ物擬人化作品はいろいろとある。そのなかで、2016年発売の『ぼくらはうまいもんフライヤーズ』(ブロンズ新社)もまた、発想がぶっ飛んでいる作品だ。「うーやん」や「わーさん」、「ぶーさん」はそれぞれうどん・ちくわ・こんぶなど単体の主人公であったのに対して、フライヤーズは揚げ物チームだ。

野球チームを組むことになったエビフライとアジフライが、揚げ物仲間を誘って、練習に励み試合の日を迎える話。そこへ揚げ物ではない たこ焼きとたい焼きが現れて……。最後の対戦相手にも驚かされるのだ。

・『とてもおおきなサンマのひらき』

これらのなかでも、もっとも想像の斜め上を行っていたのが、『とてもおおきなサンマのひらき』(ブロンズ新社)だ。買い物好きなおじさん、「またやさん」が市場で途方もない大きさのサンマの開きを発見するところから、物語は始まる。4トントラックサイズのサンマを、「またやさん」はためらうことなく購入し、手で持って帰るのだ。

信じられない! 買う方も買う方だが、売る方も売る方だ。またやさんが購入することを決断すると、魚屋のおっちゃんは「おおきに」しか言わない。マジかよ! 「自宅まで配送しましょうか?」とか言わないのか!? この物語もまた、予想を裏切る展開が待っている。

・笑って癒される

いずれの作品も、最後はやっぱりホッコリとした笑みがこぼれてしまう。ぬくもりを感じる絵と、親しみ溢れる関西弁。そして、予想を超える展開。これらがひとつになって、岡田氏の作品を形作っているのではないだろうか。

もしも、仕事や勉強で頭が疲れている人は、休みの日に岡田氏の作品を読んでみて欲しい。発想はもっと自由でいい、ムチャクチャを考えたっていい。何だかホッと癒される作品である。

参考リンク:ブロンズ新社 岡田よしたか
執筆:佐藤英典