bangongshi

日本の会社は面倒くさい。例えば、同僚の呼び方ひとつにしても「上司は役職名で呼ぶべきだ」と主張する人がいたり、「取引先の担当者には “さん” ではなく、“様” でないと失礼だ」とか言い出す人がいたり……。

個人的には、「そんなことに文句を垂れる前に仕事しろ」と言いたいが、 “呼び方マナー” で周囲の反感を買ってしまったら、それはそれで賢いやり方とは言えないだろう。——と、思っていたのに! 「思わぬ落とし穴にハマってしまいました」という私の体験談を以下で紹介したい。なぜ、こんな面倒な事態になったのだろう……。

・面倒なことが起こった背景

個人的な話で恐縮なのだが、私は「仕事を通して知り合った人は全員 “さん付け” で呼ぶ」と決めている。単純にそれが一番楽だからだ。あの人は “さん付け” で、あの人は “君付け” で、あの人は “役職名” なんてしていたら、それだけで面倒くさい。

しかも、そんなことをしていたら、運が悪いと「あいつ、先輩には下手(したて)に出るのに、なんで自分だけは偉そうやねん!?」という風に受け取られる可能性もある。こちらとしては相手によって態度を変えているつもりはなくても、呼び方を変えたりしたら、周囲からそのように思われかねない。

そうなったら……想像するだけで面倒くさい。ゾッとする。会社、辞めたくなる。なので私は、先輩も後輩も上司も同期も年上も年下も社内の人も社外の人も関係なく、仕事関係の人はことごとく “さん付け” で呼ぶことにしている。「相手のことを考えて」というより、ただ自分が面倒な事態を避けたいからだ。

そして、このプチ・マイルールは私が社会人になった24歳の頃から現在(35歳)まで、10年以上貫いてきたのだが……つい最近、諸事情により変更を余儀なくされたのだ。何があったのかを簡単に語ろう。

・不自然さとの葛藤

世の中には、「どう考えても “さん付け” が似合わない人」というものが存在する。そして、そういう人が会社に後輩として、しかも一番年下の立場で入ってきた場合どうなるのか? 当然、社内の人は誰も “さん付け” では呼ばない。絶望的に似合わないからだ。

仮にその人の名前をN澤S児とした場合、周囲は「S児」と呼び捨てにするか、「S児くん」の “君付けパターン” のどちらかで呼ぶことになる。

そんな状況で、私が “さん付け” ルールを貫いたとしたら……どう考えても不自然な空気感になってしまう。1人だけ距離を取ろうとしている感じというか、慇懃(いんぎん)無礼な感じというか(“さん付け” は全く慇懃ではないのだが)、とにかく、気持ち悪い感じになってしまうのだ。

だったらもう仕方がない。色々と面倒だから、ルールを変更して、例外的にN澤S児(仮名)だけは “君付け” で呼ぶことにしよう。——となったのだが……! それだけでは済まなかった。もう一丁、面倒なことが待っていたのだ。

・さらに新人が

この時点で、私が “君付け” で呼んでいるのはN澤S児、ただ1人。それ以外の人は、“さん付け” を貫いており、例えば本サイトの外部ライターであったAのことも “さん付け” で呼んでいた。

そして数カ月前、そのAが内部のスタッフとなり、同じフロアで働くことになったのだ。つーことは……N澤S児のことを “君付け” にする一方で、一番の新人であるAを “さん付け” にするという、極めて不自然なことになったのである。

こりゃ、どう考えても変だ。というか、変とか考えるのがマジ面倒くさい。こういうことに頭を悩ませたくないから、全員 “さん付け” で呼ぶと決めていたはずなのに。なぜ、こんなことに……

もうお前ら全員、面倒くさいんじゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!

——こうして、結果的に私は今まで “さん付け” で呼んでいたAのことを、途中から “君付け” にするという、不自然な対応をする羽目に。それまで大人しかったのに、ある日 突然友達を下の名前で呼び始める “大学デビューしたヤツ” みたいなダサさを発揮したことは認めざるを得ないだろう。

とにもかくにも、私と同じように職場の人を “さん付け” で呼ぶと決めている人は覚えておいて欲しい。そう呼んでいれば安心というワケではないことを。そして、世の中には「どう考えても “さん付け” が似合わない人」が存在するということを。

執筆:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.