【検証】目隠しして通勤したらこうなった / 目の不自由な人のためにだけでも「歩きスマホ」はやめるべきだと思った話(後半)

・交差点の恐怖

視界が無い状態で初めて辿りついた交差点。感想を一言で表すならば「恐怖でしかない」となる。エンジン音もブレーキ音も頬をかすめる車の風も、その全てが怖い。しかも、音が鳴らない信号だった時点でゲームオーバー。

実は「音響用ボタン」があったらしいが、それがあることにすら気付かないのだから役立たない。信号はYoshioの「青になった!」という合図で何とか渡りきった。


次なる山場は「階段」である。なんとか手すりを発見し、いざ階段を降りはじめると……あら意外。めちゃめちゃ安心感がある! 手すりさえ掴んでいれば道は外さないし、足も階段だとわかっていれば1歩1歩が「正解コース」だと教えてくれているようなもの。これは予想外の発見であった。

その後、改札機もなんとかクリアし、いよいよ難所の「電車の乗り降り」である。いつも乗車する先頭車両付近まで壁伝いで移動し、電車が来るのを待っていたが、どこがドアなのか全くわからない。うーむ、目の不自由な人はどうやってドアを探しているのだろうか?

結局、私はドアが開いた音を聞いた瞬間、電車にひたすらタッチし、凹んだところにすかさず乗り込んだ。難易度的にはそこまで高くなかったが、ドアの前に人が立っていたら当然ぶつかってしまう。さらに手すりのあるドア前は、最短距離で辿りつける安住の地。今後、なるべくドア前にポジショニングすることは避けようと思った次第だ。

電車に揺られている間は、ひたすらボーナスタイム。検証中、唯一ホッとした瞬間だった。続いての乗り換えは、メチャメチャ時間はかかったものの(いつもは3分、今回は30分くらい)点字を頼りに何とか成功。そして最終関門、エスカレーターの登場である。

エスカレーター前のザラザラした床の質感と、稼働音を頼りにゆっくりとエスカレーターに乗り込む……お、これも意外とイケる。降りる時も床がなだらかになるので、そこまで危険には感じなかった。だがしかし、この後の「普通の道路」は本当にヤバかった。

編集部はそこまで大きな道路に面しておらず、点字も設置されていない。さらには信号も音が出ないタイプなので、身動きのしようがないのだ。ここは建物をひたすら手で触りながら、Yoshioの「青だよ!」という合図で乗り切り、何とかゴール地点まで辿りついた。

結局、通常30分の通勤路にかかった時間は約2時間。電車に乗る時間を考えれば、通常10分のところ、1時間40分もかかった計算だ。さらに先述した通り、Yoshioのサポートが無ければ絶対に辿り着けなかった。……というか、死んでいた。慣れた通勤路でこれなのだから、他のルートについては想像もしたくない。

今回の検証を経て、私は少しだけ目の不自由な人の気持ちがわかったように思う。視覚がない分、耳は研ぎ澄まされるし、日差しなども肌が敏感に感じ取る。おそらく、目の不自由な人たちは、視覚以外のあらゆる神経を集中し、外の世界に飛び出しているのだろう。

そして言うまでもなく、私よりは慣れていると思う。なので「そこまで大変じゃないんじゃない?」という意見もあるかもしれないが、もし歩きスマホなどで向こうからぶつかって来たら、回避のしようがない。絶対に無理である。その1点だけでも「歩きスマホはやめなきゃな」と思った次第だ。

また、最も怖かったのは「方向がサッパリわからなくなったとき」だった。慣れた道のりなので常に明確なイメージはあったが、1度だけ右も左もわからなくなった際は、本当にお手上げ状態。視覚を奪われるということは、方向感覚も奪われることでもあるのだ。

自分が怪我をするだけではなく、目の不自由な人を含め、ヨソ様を事故に巻き込む可能性がある歩きスマホ。事故が起きてからでは遅い、スマホを使う際は立ち止まって、迷惑にならないように利用することを推奨したい。

Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.

▼本当に怖かった。

▼電車に乗る瞬間の映像はこちら。

▼目の不自由に人にぶつかる可能性があるってだけでも、歩きスマホはやめようと思った。

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