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デビューから28年も経て、いまだ勢いの衰えぬロックバンド「人間椅子」。ここ数年、彼らの活動を間近で見てきた私(佐藤)は、2016年かなり衝撃を受けた。というのも、1年の間に3回ものツアーを行ったからである。全員が50代に突入し、決して若いとは言えないメンバーなのだが、俄然精力的に活動をしており、身体のことを心配していた。

ところが、それはあくまでも2017年を見据えた計画の一部だった。2月1日に発売したライブアルバム『威風堂々~人間椅子ライブ!!』には、2016年の活動のすべて。いや、ここ数年の飛躍的な活躍のすべてが詰め込まれているのだ。今作に込めた思いと、普段は聞けないライブの裏側を尋ねてみた。

・6年の歳月

人間椅子がライブアルバムを出すのは、実に6年ぶりのこととなる。ここ数年精力的な活動が、絶え間なく続いていたため、私は前のライブ盤『疾風怒涛』が6年も前であることをスッカリ忘れていた。

佐藤 「ライブ盤を出そうと思ったのは、いつ頃からだったんですか?」

和嶋慎治(ギター・ボーカル) 「アルバム『怪談 そして死とエロス』を出した時のライブだから、2016年2月だと思う。次はライブ盤で行きたいって思ってたから、その翌月の赤坂ブリッツの公演から、音を撮り始めたんだよね。今作のために3回ツアーをして、合計4会場で収録することができたね」

ナカジマノブ(ドラム・ボーカル) 「疾風怒涛の時に入れられなかった曲もあったから、レコ発の時とはまた違ったセットリストを組んで、ツアーに出たね」

佐藤 「ライブを録音するとなると、やっぱり緊張するんですか?」

和嶋 「いい緊張感だよね。もちろんライブは全力でやってるけど、これが形に残るってなると、いい刺激になるというか」

佐藤 「6年前のライブ盤と今作、ここが違うなってところがありますか?」

鈴木研一(ベース・ボーカル) 「DVD(初回限定盤)を見ると、6年経ったのがわかるよねえ。全員体形変わってる(笑)」

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・若々しい理由

ナカジマ 「僕ね、6年前と比べて体重が4キロ違うのよ」

鈴木 「4キロはすぐ落ちるよ。4キロなんて1週間単位で変わる。俺、91キロと95キロの間を行ったり来たりしてるから」

和嶋 「91キロも95キロも変わらない……」

鈴木 「体重よりも、ノブくんは髪がおかしいんだよ」

佐藤 「髪ですか?」

鈴木 「和嶋くんも俺も髪が減ったり白髪になったりしてるのにさ、ノブくんは白髪1本もないからね」

ノブ 「そう! 1本もない! でも小学校の頃、白髪で悩んでたんですよ。小学生で毛染めしてた」

和嶋・鈴木 「小学生で!?」

ノブ 「小学生の時は肉しか食べてなかったから、髪に養分が足りなかったんじゃない? お母さんが海藻をたくさん食べさせてくれるようになった、高校の時には真っ黒! 今でも真っ黒!!」

鈴木 「でもさ、ノブくんが若いおかげで、演奏も若々しくなるんだよね」

和嶋 「そう、ドラムが若いとバンドの演奏も若く聞こえる。活動の長いバンドがいくら現役でも、ドラムの演奏が老いた感じだと、懐メロに聞こえちゃうんだよね」

鈴木 「ノブくんのおかげで若々しいんだけど、全員老眼。それだけはどうしようもないんだよな~。『地獄の~』ってタイトルの曲がいくつかあるんだけど、『地獄の~』の続きが読めなくて、ツアー中に曲を間違えたりして(笑)」

和嶋 「老眼はねえ~……」

佐藤 「体力的にはどうなんですか?」

ナカジマ 「僕はね、ライブ大好き! ライブというか、ドラム叩くのが楽しいからライブが終わるときに、毎ステージさみしくなる。去年は3回もツアーあったから、楽しかったな~」

佐藤 「ノブさんはバリバリですね、体力的にも。老眼を除いて(笑)。和嶋さんはどうですか?」

和嶋 「僕は、毎ステージ出し切ってるから、1ステージ終わると眠くなる(笑)」

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・ソロは「神との対話」

鈴木 「そういえばさあ、ソロの時にスッとキーを変えるでしょ。アレも歳を重ねてできるようになったことだよね?」

和嶋 「技ですかね。冒険なんだけど、ああいうことが出来るようになったんですよ。転調したように聞こえると思う。お客さんはきっとハッとするよね。ソロを飽きさせないようにしてる。気づきましたか」

鈴木 「気づきますよ」

和嶋 「僕の思う良いソロって、無我の境地というか、無意識につながる感じがいいですよ。自分で後から振り返って、思い出せないくらいがいい」

鈴木 「外国人のアーティストだと、誰がそういうソロを弾くのかな?」

和嶋 「ジミ・ヘンドリックスとかですかね」

鈴木 「ああ、あれは完全に「神との対話」だね。我々も威風堂々だから、神との対話だね」

和嶋 「いや~、まだ神との対話というよりは、挨拶程度かな。「こんにちは!」くらいで」

佐藤 「先ほど、思い出せないソロと仰しゃいましたが、今作もそういうソロはありましたか?」

和嶋 「『狂気山脈』(DISC1:9曲目)とかそうですね。後から聞いて、こんなことしてたのか。って思いましたよ」

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・ツアーのピーク

佐藤 「今作を作る過程、つまり昨年のツアーで何かハプニングとかありましたか?」

和嶋 「ハプニングではないけど……。ツアーでステージを重ねていくと、段々息が合っていくようになる。そうすると、全員の呼吸というか、ノリが合うピークを迎えるんだよね。最終日に向けてそのピークを合わせて行こうとするんだけど、途中でバチっとピークを迎えてしまうことがあった。それはそれでいいことなんだよ。でも、その日に録音してなかったりしたのが、ちょっと残念かな」

鈴木 「そういう時に録音してたいよね。そうしたら、もっといいライブ盤ができるかも」

ナカジマ 「機材買って、毎回録音すればいいかも」

和嶋 「それはアリかも! 次のライブ盤はそれで行きましょう!」

・DVDを見るとわかる

ライブの話は尽きることがない。メンバーがライブに対して、並々ならぬ思いがあることを、このインタビューで改めて知ることができた。音源だけでなく、ライブの醍醐味を味わいたい人は、DVD付きの初回限定盤を購入することを強くオススメする。2016年7月10日新宿ReNYの公演がまるまる収められている。それを見れば、彼らが今回話した内容を、より深く理解できるだろう。

特に『狂気山脈』のソロは圧巻である。ライブ中に自然に曲のアレンジが変わることもあるという。それも約30年の活動の歴史から紡がれた、自然のロックだからなのではないだろうか。言葉では語れないものを、3人はライブで体現している。

ちなみに2月9日、和嶋氏の初の自伝『屈折くん』が発売となっている。唯一無二のバンド、人間椅子の中心人物である彼が、どのような人生を歩んできたのか、垣間見ることができるだろう。とにかく2017年も、人間椅子は激しく疾走していくに違いない。“威風堂々” たるロックの魂を見よ!

・ライブ盤リリース記念ワンマンツアー「威風堂々」(全14公演)

2月24日 栃木 HEAVEN’S ROCK Utsunomiya
2月26日 仙台 CLUB JUNK BOX
2月28日 高崎 club FLEEZ
3月3日 博多 DRUM Be-1
3月5日 高松 Olive Hall
3月6日 高知 X-pt.
3月8日 神戸 Chicken George
3月10日 大阪 梅田 AKASO
3月12日 名古屋 Electric Lady Land
3月14日 山梨 甲府 KAZOO HALL
3月17日 札幌 CUBE GARDEN
3月19日 青森 Quarter
3月22日 千葉 LOOK
3月25日 赤坂 BLITZ

参考リンク:人間椅子
Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24