東京都葛飾区亀有といえば、人気漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の舞台として有名で、週末には多くのファンがこち亀ゆかりのスポットを訪れている。だがその一方で、こち亀とは無縁のすご~く気になる店が存在するのだ。
それが「内山菓子店」。地元民さえ知る人ぞ知るお店である。というのも、いつもシャッターが半開きで、とても営業しているようには見えないのだが……その理由が、下町ならではの人情にあふれていたのでご覧いただきたい。
・シャッター半開きの謎
そもそも「シャッターが半開き」とは、一体どういうことだろう? 飲食店なら暖簾(のれん)や看板が出ているかで営業中と分かるが、シャッターの半開きは判断に困る。むしろ「準備中」と思ってしまうのが普通ではなかろうか。
「シャッターが故障しているのか」あるいは「店主のやる気の問題」か……どちらにせよ、何か特別な理由がありそうである。そこで! 下町出身の記者として謎を解き明かすべく、さっそく内山菓子店に潜入してみたというわけだ。
・90歳の店主
内山菓子店は、JR常磐線「亀有駅」南口から徒歩15分ほどの住宅街にある。周辺は地元住民が行き交うのみで、昼間も人通りが少ない。古くからの寺院や家屋が立ち並ぶ光景は、まるで昭和にタイムスリップしたと錯覚するほどだ。
私(りょう)が訪れたのは平日の午前10時過ぎ。内山菓子店入口のシャッターは3分の2ほど開いていた。同店を知る住民によると、中には半分しか開いていない日もあるという。「今日は店主の機嫌が良いのかな?」と店内に入ったところ男性が声をかけてきた。
「いらっしゃ~い」と笑顔の様子からすると、この男性が店主のようだ。名前は内山吉雄さん、2016年10月で90歳を迎えたという。気さくな人柄で、初来店の私に対してもよそよそしさを見せない。そばにいるだけで明るい気持ちになれる人である。
・半開きなシャッターの理由
内山さんによると、同店の創業は約50年。初めは菓子店だったそうだが、年齢を重ねるにつれ体力的に厳しくなり、現在はタバコのみ販売しているという。
だが、営業しているにもかかわらず、なぜいつもシャッターが半開きなのか? 素朴な疑問を内山さんにぶつけてみると……意外な答えが返ってきた。
「一昨年、店頭にバッグの忘れ物があって保管しているんだよ。本当は閉店しても良いんだけど……持ち主が取りに来るかもしれないから、少しだけシャッターを開けているんだ」
まさか持ち主のためにシャッターを開けていたなんて……素敵すぎるやないか! 下町ならではの温かい理由に、ほっこりしてしまった。ちなみに、バッグの中身はよく見ていないそうだが、「機械のような物」とのこと。持ち主が早く見つかってほしいと願う次第である。
ともあれ、内山さんはタバコを買いに来るお客さんとの触れ合いを楽しみながら、今日も元気に営業している。シャッターが半開きの内山菓子店は、実に下町人情に溢れたお店だった。
Report :りょう
Photo:RocketNews24.
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▼下町人情にあふれた内山菓子店。たまにシャッター全開の日もあるぞ!