2016年2月3日に、通算19枚目のオリジナルアルバム『怪談 そして死とエロス』をリリースした、日本を代表するロックバンド人間椅子。2月から3月にかけてリリースツアー(全15カ所 + 追加1公演)を敢行。
6月末から夏のワンマンツアー「地獄の道化師」(全8カ所)を行い、ツアー途中にROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016(8月6日)。ツアー後にRISING SUN ROCK FESTIVAL 2016 in EZO(8月13日)への出演を予定している。年々勢いを増す彼らの活動が、ついに大型ロックフェスへと結びついた。
今回のインタビューで、今春のツアーを振り返りつつ、中止になってしまったロシア公演の裏話、そして夏のツアーの話などを伺った。
・春のリリースツアーについて
記者「春のリリースツアーはどうでしたか?」
和嶋(ギターボーカル:和嶋慎治)「リリースツアーは、アルバム(怪談 そして死とエロス)が自分たちでも力作と感じていたし、鈴木くん(ベースボーカル:鈴木研一)も前職を辞めてバンド1本で臨んだツアーだったので、バンドに勢いが出たと思います。アルバムの楽曲は妥協せずに作ったと思っています。いいアルバムができたと思っていたので、ツアーが楽しみで出かけました。実際新曲に対する反応が良くて、いいツアーになったんじゃないかな」
ナカジマ(ドラムボーカル:ナカジマノブ)「新曲が聞きたくてライブに来てるって雰囲気はあったよね」
和嶋「うん、結構久しぶりに行った会場でも反応が良かったよね。秋田や岩手は久々で、昔馴染みのお客さんもいたけど、新曲の反応はよかった」
鈴木「(秋田や岩手で)久々にライブできてよかったよね。「待ってました」って声が聞けてよかった」
和嶋「あと、思ったのは、客層が以前と少し変化したかな」
記者「どう変化したんですか?」
和嶋「年齢層よりも、男性客が増えたかなって思いましたね。少し前は、男女半々かな? って思ってたけど、男性の割合が増えたような印象を受けたかな」
・行ったことのない場所へ
記者「今回のツアーは15本(+追加公演)だった訳ですけど、結構な本数だったんじゃないですか?」
和嶋「うん、今回はね、ライブの本数増やしたんですよ。今後の布石を打つ意味で、行ったことのないところに行きたいってのが、今回のツアーでした」
ナカジマ「夏のツアーは、また春とは違った場所に行く予定です。長野は初ですね。新潟は久々だよね」
鈴木「ツアーごとに新しい場所に行く、そういう流れが出来てきたよねえ」
ナカジマ「行ったことのない会場や、久々の会場だと、店の人が喜んでくれるんですよね。長野は、人に会場の連絡先を教えてもらったんですよ。そうしたら、店の人にスゴイびっくりされて」
和嶋「連絡しただけでびっくりするの?」
ナカジマ「びっくりされたよ、新潟も」
鈴木「そりゃバンド(人間椅子)本人から連絡くれば、びっくりするよ(笑)」
・中止になったロシア公演の裏で……
記者「話は少し変わりますが、ロシアでの公演は残念でしたね」
和嶋「残念でした。セキュリティの都合と言われると、僕らではどうしようもないですしね」
ナカジマ「あまりに急だったんで、対応のしようがないですよね」
鈴木「ノブは、スーツケースやドライヤーまで買ってたのに」
和嶋「せっかくパスポートまで取ったのにね。10年のパスポート(笑)。これで10年の間、何度でも海外公演行けるよ。でも、今回の中止でファンの方の “愛” を感じましたよ」
鈴木「お守りをもらったりね、変圧器をもらったりね。すごく心配してもらって。僕らのステージを見るために、すでに行ってたファンの方もいるんですよ。今回は残念だったけど、ロシアはいい国ですよ。ロシア人は人がいいし」
ナカジマ「そう、いい国だって聞いた。ライブは見られなかったけど、ロシア旅行としては良かったって聞いたよ」
和嶋「物販がアレだったよね」
ナカジマ「そう! ロシア版のフライヤーとTシャツを送ったのに、返って来ない!」
記者「え! Tシャツが返ってきてないんですか!?」
ナカジマ「そうなんですよ。今回のフェス企画運営会社の代理人の方いわく、港に荷物が届いたっていうんだけど、それを引き取りに行くのに、お金がかかるらしいんですよ。そのお金がないから、荷物を引き取れないらしくて。それで返って来ない。というか、そもそもTシャツがどこにあるのかもわからないし」
鈴木「大体、ロシアの港ってどこなんだよ」
和嶋「今回に限ったことじゃないと思うんですけど、海外は日本ほどカッチリしてないから、注意した方がいいってアドバイスを受けました。勉強になりましたね」
・夏のセットリストについて
記者「話がまた変わってしまってすみません。またツアーのことを伺いたいんですけど、半年と空けずにツアーをされる訳ですが、セットリストは当然春と夏で違いますよね?」
和嶋「そうですね、春は新曲を中心にやりましたが、夏はレア曲もやる予定です。最近やってなかった曲もやるつもりですよ」
ナカジマ「久々にやる曲は、新鮮な気持ちで演奏できるからいいよね」
和嶋「春とは違う曲をどんどんやって行く予定なので、春のツアーを見た人も、夏のツアーを見てもらいたいですね」
記者「ちなみにリストの選曲は、みんなで考えるんですか?」
和嶋「そうですね、コレやろうかアレやろうかって感じで」
記者「意見が合ったものをやる感じですか?」
鈴木「みんなの意見が合う曲ってあまりないよね」
記者「いろいろと意見を出しあって、セットリストを決めるという感じですかね」
和嶋「とにかく、いつでもそうですけど、自分たちが楽しむって気持ちを大事にして、ツアーに臨みますよね」
・ツアー途中だからこそ
記者「今回はツアー途中にフェスがありますが、大変じゃないですか?」
和嶋「むしろちょうどいいかなって思ってます。ツアーでは、ライブを重ねるにつれて、“音楽をする身体” になっていく。身体が音楽に馴染んでいくというか。体力も筋肉も音楽していくというか、2時間半の身体になっていく。今夏8本のツアーの途中、8月6日に「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016」があって、ツアーが終わった後すぐの8月13日に「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016 in EZO」があるので、相当出来上がった状態でフェスに出演することになる」
ナカジマ「僕たちを知らない新しいお客さんに、良いコンディションで曲を届けられると思いますね」
和嶋「ツアーの間にフェスがあるからこそ、最高の演奏をしたいですね」
2016年は、これまでの彼らとは状況が違う。アルバムをリリースし、ツアーを行うだけでなく、それぞれがコラムの執筆やイベントへの参加を積極的に行っているからだ。年を追うごとにスケジュールは過密になり、イベントやフェスの参加も増えている。そんななかでこそ、より良いものを作ることができると、和嶋氏は語る。この夏のツアーと2つのビッグフェス出演を経て、人間椅子はさらに自らのロックに磨きをかけることになるだろう。
・人間椅子夏のワンマンツアー「地獄の道化師」詳細
6月29日 長野 CLUB JUNK BOX
7月1日 新潟 GOLDEN PIGS RED STAGE
7月3日 高松 Olive Hall
7月5日 名古屋 Electric Lady Land
7月8日 大阪 味園ユニバース
7月10日 東京 新宿ReNY(SOLDOUT)
8月9日 仙台 CLUB JUNK BOX
8月11日 青森 Quarter
Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
▼都内スタジオでのリハーサルの様子
https://youtu.be/HQwCtaJc4Hk
▼夏のツアー「地獄の道化師」のフライヤー