CMは、短時間でどれだけのインパクトを与えられるかが勝負だ。だが、そればかりを追い求めると、誰かを傷つける結果にもなりかねない。
最近、問題視されている中国CMがまさにそうだと炎上している。衣類用の洗剤CMなのだが、“黒人を洗ったら色白のアジア人になった” という内容が国外で「人種差別だ!」と批判されているのである。
・中国の洗剤CMが炎上
問題視されているのは中国の洗剤ブランド「俏比(Qiaobi:チャオビー)」の洗剤CMだ。その内容は動画でご確認いただけるが、ザックリと説明すると以下の通り。
「洗濯中の美女のもとに、ペンキまみれの黒人男性が現れる。今にもキスしそうなイイ雰囲気に……と思ったら、美女が男性の口に洗剤をパクッ! そのまま洗濯機で洗うとなんと色白細マッチョなアジア人になっちゃった!! 美女ニッコリ」
──というものである。このCMは2016年3月に発表されたものだが、最近になりネットを介して他国にも広まった。すると中国国外ネットユーザーから「あまりにもヒドイ!」「レイシストだ」と批判が殺到し炎上、欧米メディアも「最低の人種差別」と大きく報じたのである。
・マッハで謝罪
この炎上騒ぎを受け、「俏比」はマッハで中国版Twitter・Weiboで声明を発表。そこには、
「人種差別の意図は全くありません。皮膚の色で何かを評価しているわけではなく、我々は人種差別に対しては徹底的に反対しています」
「しかし、このCMの放送、世論の行き過ぎた脚色により、アフリカ系の方々を傷つけてしまったことに対し、ここにお詫び申し上げます。同時に、ネットユーザーやメディアの皆さんには深読みしすぎないでいただければと思います」
などのコメントが掲載されている。
・メーカー責任者「人種差別の意図はなし」「少し過敏なのでは?」
また、「俏比」のメーカーである上海雷化粧品有限公司の責任者である王氏は、中国メディア『環球網』に対し、人種差別の意図はないこと、そして海外メディアやネットユーザーは少し敏感すぎる気がする、とも話しているという。公開当初、CMは単純に「黒人、イケメン細マッチョ、美女の三角関係」を描いたものとされていたのだとか。
それにしても、両者には温度差があるなぁ……。この点について、BBC中文版は、「一般的に、中国人は黒人に接する機会が少ないこと」「アジアでは色白の方が価値があるとされていること」などの状況を紹介している。
・過去に類似のCMがイタリアでも制作か
あくまで差別の意図はなかった、という立場の「俏比」だが、指摘を受け問題のCMはすでに削除したそうだ。CMとは、様々な人が見ているものだ。制作の際はできる限り、あらゆる受け取られ方の可能性を考える必要があると言えるだろう。
余談だが、同様のCMが2006年にイタリアでも制作されており、「パクリに失敗した」という意見も出ている。ただ、中国版との違いは「イタリア人が黒人になる」というものだったとのことである。
参照元:YouTube、Sina Weibo、環球網、BBBC
執筆:沢井メグ
▼台湾ニュース動画で、問題のCMとイタリア版のものが紹介されている