柔らかな日差しが差し込むある日の午後、まとわりつく気だるさを振り払うように私(中澤)はクロレッツを噛んだ。パチパチとキーボードをたたく音が響くオフィスには、今日もただただ穏やかな時間が流れている。まるであの日の出来事が夢だったかのように……。
これから私が語るのは、オッサンがドサクサに紛れてアイドル・鈴木亜美さんに抱きつこうとする物語である──
・憧れの存在
あなたは『ASAYAN』を知っているだろうか? 90年代後半、「モーニング娘。」をはじめ、多数のアイドルやミュージシャンを輩出した伝説のオーディション番組である。その出身者の中でも、特に人気が高かったのが「アミーゴ」こと鈴木亜美さんだ。
なにせ彼女の洗練された雰囲気は、デビュー当時から別世界の住人のようだった。あまりにアミーゴがかわいすぎるため、抱きつきたい男性は星の数ほどいるはず。オッサンとなった私は、今でも隙あらば抱きつきたいと考えている。
・どうやってハグしよう?
しかし、ドブネズミのように薄汚い私が鈴木亜美さんに簡単に会えるわけがない。かたや90年代にミリオンヒットを連発した歌姫、かたやオッサンである。この2人の道が交わるわけがない……。
だが、捨てる神あれば拾う神あり。本当に神様はいた。「クロレッツスッキリ応援歌メーカー」が鈴木亜美さんに近づくチャンスをくれたのだ。
なお、「クロレッツスッキリ応援歌メーカー」とは、小室哲哉さんが作曲したクロレッツ応援歌に歌詞を投稿できるキャンペーンである。「スッキリ総研」で検索して、歌詞フォームに簡単な内容を入力し、試しに投稿してみると、ニュースサイトのようなページと自分の歌詞が入った曲の動画がマッハで生成された。これは90年代チルドレンにはたまらん……!
・アミーゴに抱きつく作戦
このキャンペーンで、投稿された歌詞の中から選抜したいくつかの歌詞を、鈴木亜美さんが実際に歌ってレコーディングするという。近づく機会というのは、そのレコーディングの取材である。そこで私はゲスを極めることにした。
作戦はこうだ。インタビューと称して急接近 → 抱きしめる。シンプルながら完璧である。取材はクロレッツのどのフレーバーが好きかでも聞いておけばいいだろう。抱きつくことさえできれば私の勝ちなのだ。
しかしながら、私が素のまま……しかも突然、鈴木亜美さんを抱きしめたら、後々シャレにならないことになりそうだ。どうしたものか。ポク……ポク……ポク……チーン!
全長2メートル50センチのクマ・アンジェリカを着て “ネタです感” を演出しつつ、ドサクサに紛れて抱きしめたら許してくれるのでは? 名づけて「中身はオッサンなのに外見がクマならアミーゴに抱きつけちゃった大作戦」だ!!
・レコーディング中の鈴木亜美さん
レコーディングが行われている都内某スタジオに撮影担当のシノミヤ、Yoshioと共にやって来た私。鈴木亜美さんは一般の応募者の中から選ばれた応援歌を録音している真っ最中だった。サウンドディレクターやエンジニアと試行錯誤をしながら、粛々と作業が進んでいく。わずか1分ちょっとの曲だが、声のニュアンスやタイミング、ピッチなど様々な部分を細かく調整していた。
それにしても、あの鈴木亜美さんがガラス1枚隔てた向こう側で歌っている! 夢にまで見た憧れの世界……おいら、今アミーゴと抱きつけるまで数十センチの距離にいるよっ!
・ナカジェリカ出動!
今回選抜された歌詞の中には、有名ブロガーのしおたんさんの作品もあり、彼女の歌詞の録音が終わると小休止に入った。次はついにクマの中に入った私・ナカジェリカの出動である。
クマになってレコーディングルームで待ち構えていると、空調設備が整ったスタジオ内でも信じられないくらい暑い。また、鼻の裏側の布が気道を塞いでとてつもなく息がしづらい。今すぐ脱ぎ捨てたい欲求に駆られながら待つこと5分……
スタジオ内が騒がしくなり始めた。辺りの状況は全く見えないが、鈴木亜美さんの気配を感じる。「よろしくお願いします」。うおおおお、すぐ隣からアミーゴの声が! いつ抱きつくか……今でしょ。抱きしめるの今しかないっしょや!! ガオー! と、その時!!
・変な空気
「ざわ……ざわ……」なんだ? 周りの空気がおかしいような。その雰囲気に普段、寡黙で無表情なシノミヤも目が泳いでいる。ふと見ると、鈴木亜美さんが眉をしかめて手の平をこちらに向けていた。まさか拒否られてる……?
そ、そんな……女の子はみんなクマが好きちゃうのけ!? クマに入ってもあふれ出るドブネズミ臭は消せないとでも言うのか。ていうか、嫌がる顔もかわいいなオイ。
・事案を発生させるわけにはいかない
これ以上ごり押しすると、事案が発生する恐れがあるため、私が抜けたクマだけでも抱きしめてもらうことにした。今度は快く抱きしめてくれる鈴木亜美さん。めっちゃ笑顔だ! 守りたい、この笑顔!!
こうして、私の闘いは幕を下ろした。結論、鈴木亜美さんはクマになっただけでドサクサに紛れて抱きしめられる人ではなかった。しかし、私もこれで終わるつもりはない。
・アミーゴを間接的に抱きしめる
──後日談。柔らかな日差しが差し込むある日の午後、まとわりつく気だるさを振り払うように私はクロレッツを噛んだ。パチパチとキーボードをたたく音が響くオフィスには、今日もただただ穏やかな時間が流れている。
あの日、亜美さんが抱きしめたクマを抱きしめる。亜美さんの胸が、二の腕が、頬っぺたが、二の腕が、唇が……そして二の腕が間接的に私に重なる。ふおおお、鈴木亜美に包まれている! アミーゴを体全体に感じるぞ!!
クマからはほのかに太陽の匂い。そんな永遠を感じる昼下がり。クマで抱きつこうとした選択は間違えていなかった。なお、「クロレッツスッキリ応援歌メーカー」のキャンペーンは5月31日まで開催されているので、是非試してみてくれよな!
参照リンク:クロレッツ応援歌キャンペーン
Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
▼アミーゴの歌声はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=do4MqAHHQhw&feature=youtu.be
▼この日のために選ばれた歌詞
▼有名ブロガー「しおたん」も参加
▼アミーゴが目の前に!
▼ドキドキ……
▼いきまっせ~!
▼クマを着ても覆い隠せなかったドブネズミ臭
▼でも、亜美さんは良い人だった
▼あの出来事は現実だったのか……?