「サハラ砂漠で迷子になる」という絶望的な状況に陥った人間を救うために開発された地図アプリ『Pilot ~サハラ砂漠編~』。約一カ月前にリリースされて話題になり、当サイトでも「このアプリを使えば、きっと死ぬまでにオアシスにたどり着くことができるだろう」と紹介した。
偶然にも同じ頃、私はサハラ砂漠のど真ん中にいたので、このアプリを使って本当にオアシスにたどり着くことができるのか試してみたのだが……。とりあえず先に言おう、このアプリを作成したやつ出てこいやぁぁぁ!!
・モロッコのメルズーガからサハラ砂漠へ
アメリカ合衆国とほぼ同じ面積だという広大なサハラ砂漠、携帯はもちろん「圏外」である。砂漠の入口、メルズーガを1人で出発して約2時間、私は今、砂漠のどの辺りを歩いているのだろう……とにかく、オアシスへの手がかりは何もない。
というわけで、さっそくオフラインでも使用可能だというこのアプリを起動してみた。
おおッ!! 確かにオアシスまでの距離が表示されている。うんうん、一番近いオアシスまで約180キロか……よし、無理だ、確実に死ぬ。と思ったその時! 私のもとへ1人の少年が……。
彼は私に「そろそろ戻らないと帰れなくなる」と伝えると、そのまま宿まで道案内をしてくれた。めでたしめでたし……ではない。私はオアシスへ行きたいのだ。少年に心からのお礼を伝えて再びアプリを起動した後、私は数あるオアシスの中から1つを選び、翌日、早朝に出発することにした。
・「マラケッシュ」
私が選んだオアシスは『マラケッシュ』だ。理由は簡単、このオアシスの説明文に書いてあったのだが、「世にも珍しい木に登るヤギ」を見たいと思ったからである。メルズーガからマラケシュまではバスで約12時間かかるようだが、木に登るヤギたちの表情を想像すれば、半日などあっという間なはず。だがしかし……。
・砂漠以上に車内が暑い
なんと! バスのエアコンが故障中である。車内がサハラ砂漠よりも暑いとは……。モロッコ人も「死にそうなんですけど」という表情でバスに乗っている。この約12時間の地獄ドライブの間、ヤギの顔など1秒たりとも私の脳みそに登場することはなかった……。
そして、ようやく到着したのは、モロッコ有数の観光都市マラケシュである。到着したのが遅い時間だし、死ぬほど疲れがたまっていたので、翌朝、念願のオアシスを目指すことに。オアシスにたどり着けば全てが報われるはずだ!
・3日目
さあ、オアシスを目指して3日目である。一つ気になるのが、ここマラケシュは全く砂漠地帯ではないということだ。アプリが説明するオアシスは本当に見つかるのか、不安になりながらもアプリを起動してみると……。
なんと! ここから4.8キロの位置にオアシスが存在すると表示されている!! これまでの苦労に比べれば、徒歩約1時間なんて余裕だぜ。というわけで、さっそくナビの指す方向へ向かってみたのだが……。
・オアシスまで約100m
今、私はオアシスを目指して歩いているのだが、横目に映る景色はカフェやマクドナルドである。この時点で、私はもう気がついていた、「ゴールにヤギはいない」と。オアシスまでは残り100mのようだが、ナビはなぜか、私を住宅街へと案内している……。
・ついに……!
サハラ砂漠で迷子になった人向けに作られたアプリ「Pilot~サハラ砂漠編~」の案内では、オアシスまで残り3mである。確実に誰かの家の前に到着したのだが、これ以上進んでも大丈夫なのだろうか……庭には誰かいるようだ。まあ、とにかく突撃してみよう。
しかし、突撃とは言ったものの、全くわけのわからない展開にビビッていた私は、勇気を出しつつもかなり控えめに「ここはオアシスですか?」と、目の前の男に聞いてみることにした。そしたらやはり、予想通りの答えが……!
「違います」……完璧な答えである。念願の目的地での滞在時間は、わずか2秒であった。ナビの通りにオアシスを目指してみたのだが……なぜなんだ! もしかしたら、もしかしたらアプリの使い方を間違えていたのかもしれないが……非常に残念である。
というわけでアプリの作成者よ、いつか必ず、私を「木に登るヤギがいるオアシス」まで案内してくれよな!
参照元:「Pilot ~サハラ砂漠編~」公式HP(英語)
Report:砂子間正貫
Screenshot: iPhone
Photo:RocketNews24.
▼広大なサハラ砂漠
▼エンチェアー・オアシスまでは約180キロ
▼「木に登るヤギ」が見られるというマラケッシュオアシスを目指すことに
▼マラケシュは砂漠ではない
▼4.8キロ先にオアシスがあると表示されている
▼残り約1キロ
▼残り約1キロの風景
▼残り約500m
▼マクドナルドが……
▼残り約100m
▼なぜか住宅街へ……
▼いよいよオアシスまで残り3m
▼庭にいる人に「ここはオアシスですか?」と聞いてみると……
▼「違います」