「お~い」という言葉から連想する商品といえば、おそらく多くの人が『お~いお茶』を思い浮かべるはずである。シンプルで覚えやすいネーミングは、見事というほかないだろう。
その『お〜いお茶』販売元の伊藤園が、この「お~い」という言葉をいろいろなモノに対して商標登録しようと、2015年11月16日に出願しているのをつい先日発見した。そんなモノにまで! と思うほど数多くの商品を指定していて、リストを眺めていると「お~い」がいかに万能な言葉であるかがわかる。
・伊藤園が出願している商標「おーい」の指定商品
「事務用又は家庭用ののり及び接着剤,封ろう,印刷用インテル,活字,あて名印刷機,印字用インクリボン,自動印紙はり付け機,事務用電動式ステープラ,事務用封かん機,消印機,製図用具,タイプライター,チェックライター,謄写版,凸版複写機,文書細断機,郵便料金計器,輪転謄写機,マーキング用孔開型板,装飾塗工用ブラシ,紙製包装用容器,プラスチック製包装用袋,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,型紙,裁縫用チャコ,紙製のぼり,紙製旗,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,荷札,印刷したくじ(「おもちゃ」を除く。),紙類,文房具類,印刷物,書画,写真,写真立て
被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴
漁網製作用杼,メリヤス機械用編針,電気式ヘアカーラー,針ひ類,被服用はとめ,テープ,リボン,編みレース生地,刺しゅうレース生地,房類,組みひも,編み棒,裁縫箱,裁縫用へら,裁縫用指抜き,針刺し,針箱,腕止め,衣服用き章(貴金属製のものを除く。),衣服用バックル,衣服用バッジ(貴金属製のものを除く。),衣服用ブローチ,帯留,ボンネットピン(貴金属製のものを除く。),ワッペン,腕章,頭飾品,ボタン類,造花,つけあごひげ,つけ口ひげ,ヘアカーラー(電気式のものを除く。),靴飾り(貴金属製のものを除く。),靴はとめ,靴ひも,靴ひも代用金具,人毛
スキーワックス,遊園地用機械器具,愛玩動物用おもちゃ,おもちゃ,人形,囲碁用具,将棋用具,歌がるた,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,マージャン用具,遊戯用器具,ビリヤード用具,運動用具,釣り具,昆虫採集用具
アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー,ココア,氷,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,パスタソース,酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用グルテン,食用粉類
ビール,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,ビール製造用ホップエキス,乳清飲料」
・飲み物はしっくりくる
『お~いお茶』が商品名として定着しているおかげで、飲み物はかなりしっくりくる。たとえば『お~いビール』や『お~いコーヒー』などはいつでも商品化できそうな、言葉の落ち着きがある。
・機器類はちょっと……
その一方で、『お~い自動印紙はり付け機』や『お~い文書細断機』などは、何となくなじまない。「お~い」という軽い呼びかけに対して、“機器” が重苦しく感じるためだろうか……。
・実際に登録されるのか?
商標の専門家である弁理士に尋ねてみると、「お茶などに対して “ヤッホー” という商標が登録されていることを考えても、商標権がまったく取れないわけではないと思う」とのことだった。
出願の目的は、「おそらく『お~いお茶』のパロディを牽制すること」であって、“お~い ” だけ出願したのは、「防衛目的で商品全部について、『お~いガーター』、『お~いステープラー』、『お~いたこ焼き』などと一つひとつ出願していたとしたら費用が膨大にかかる」ためらしい。
・登録されたとしてどこまで有効か?
それではもし登録され権利化した場合、例えば『お~いガーター』という名前でガーターを売っている人も、商標権侵害となってしまうのだろうか。先の弁理士によると……
「必ずしもすべての範囲について権利が及ぶとは限りません。たとえば、商標『WALKER』の権利者が『Tokyo Walker』を訴えて認められなかった事案もありますし、俺の○○という料理屋さんが本家(?)以外の会社から多数出ていたりします。
つまり、ある言葉(単語)に共通の商標に対しては、あまり強い権利を認めない傾向にあるので、今回の出願によって権利化したとしてもどこまで効力があるかは疑問です。しかし、牽制にはなるので出した意味は大いにあるでしょう。」
……とのことであった。やはり『お~いお茶』は耳当たりのいいネーミングなので、競合企業はその言葉と商品のブランドイメージを狙っているのだろうか。『お~いハンバーガー』とか『お〜いトランプ』とか、本当に商品化されると面白そうなんだけどな~……。
参考リンク:J-Platpat
執筆:佐藤英典
イラスト:RocketNews24.
▼マジで出願している