2m50cmの巨大なクマと佐賀旅行してきた(その2)
レンタカーの駐車場は空港から歩いて2分ほどのところにある。しかし、2m50cm、17kgの巨大クマを担いでいる私はたどり着くのに10分を要した。元のサイズに戻ったアンジェリカは掴みどころがなく、荷台を使ってもタイヤが腕や足を巻き込んでしまったからだ。
やっとのことでレンタカーにたどり着き、アンジェリカを車に押し込む。……ムッチムチにアンジェリカは詰まっているが、やはり表情は明るく楽しそうだ。良かった。
・北海道のお株を奪う1本道
空港から平野の中をひた走る道は、気が遠くなるほどまっすぐだった。開けた空の下には一面のたんぼ。そして、永遠に続いていくような並木道。北海道のお株を奪う1本道と言っても過言ではないだろう。
5月頃には、この田んぼが黄金の小麦で覆われるという。心なしかアンジェリカの目も以前の光を取り戻しつつあるようだった。
・牡蠣小屋を巡る冒険
この時点で時刻は16時頃。今日の宿は有明海沿いの「鶴荘」である。街を突き抜け海沿いを走っていると、ポツポツほったて小屋のような建物が見えてくる。手書きで「かき焼き」や「牡蠣」とだけ書かれた看板は、いかにも田舎の港町特有の素朴感が出ている。もちろん、いい意味でだ。
私もアンジェリカも昼ご飯がまだだったので、なんとなく目についた「雄神丸」という牡蠣小屋でご飯を食べることに。店の中に入ると、広いスペースに木でできた長椅子と七輪の内臓された机が数個、ドカドカと無造作に置かれていた。名前や外観からイメージできる通りの店内だ。雨が降っていたからか、客は私たちのみ。
注文を聞きに来たのは、笑顔のかわいい女性・ミキちゃん。親しみを込めて “ちゃんミキ” と呼ばせてもらおう。話を聞くと、おじさんの牡蠣小屋を手伝っているとのこと。……っていうか君、ナチュラルに「~やけん」とか「~と」っていう方言しゃべってるけど、それクソかわいいからね。ちゃんミキに手伝ってもらえるなら私も佐賀に住みたい。
なお、この店は1000円で新鮮な牡蠣が2~30個くらい食べられるのだ。マジサイコー! 実際、貝を七輪にのせて、貝の口が空いてきたら食べごろ。ちゃんミキ的オススメはポン酢とのことだが、新鮮さが違うのか、ポン酢をかけずとも海の味がしてウマい。さすが佐賀! 牡蠣のメッカである。
食べ終わった頃に、経営者のおじさん自ら「これ食ってみ。ウマいから。」と獲れたての生牡蠣を持ってきてくれた。さんおじもマジサイコーリスペクト。
・夜の闇に想う
暗くなってきたので、後ろ髪を引かれながらも「雄神丸」を後にし、旅館に向かって車を走しらせる。それにしても全然街灯がない。街のネオンに目が慣れすぎて、こんな夜らしい夜は久しぶりだ。人間らしさとは何か? “生きる” とは何か? なぜ私はクマと佐賀にいるのか……そんな考えが泡のように浮かんでは消える。いくら考えを巡らせようとヘッドライトの光は手前しか照らしてくれない。
・まずは疲れを洗い流す
港のさきっちょにある宿「鶴荘」に着いたのは18時30分頃。入り口の暖簾が由緒正しいオーラを発している。チェックインを済ませ部屋に行くと、窓から暗い有明海が見えた。遠くにはライトアップされた城も見える。女将に聞いてみると、「竹崎城址」という城の跡らしい。
夕飯前にまずは風呂に入りたい。大浴場(温泉)は、夕飯時だからか貸し切り状態だった。体を洗って湯船に浸かると、今日一日の疲れがため息となって漏れる。ふぅ……温かい。今朝、編集部にいたことが嘘みたいだ。
・大広間での一期一会
風呂を上がり大広間へ向かう。アンジェリカが大広間に座ると、くつろいでいたお客さんや仲居さんたちが花が咲いたように笑った。空港の時も思ったが、佐賀の人たちは変な距離感がない。その肩の力が抜けた笑顔で話しかけられると、こちらまでつられて笑顔になる。隣の席の夫婦は博多から来ているのだという。こういう一期一会も旅の醍醐味の一つ。
夕食は竹崎カニと佐賀産和牛のすき焼きのスタンダードプラン。+2000円で日本酒が呑み放題のプランもあるぞ。個人的にトキメいたのは「ムツゴロウの蒲焼」。イメージと違い臭みはなく、甘めの味付けとムツゴロウの締まった身がベストマッチ。また、竹崎カニは身が詰まっていて超カニ! っていうかどれもマジウメェェェエエエ!! 素材の上質さがヤヴァイ!
海の幸山の幸に恵まれたグルメ王国佐賀の本領発揮。アンジェリカも喜んでいるはずだ! クマがカニを食べるのかは知らないけど。
・毛布に包まれているような1日だった
ひとしきり夕飯に舌鼓を打った後、もう一度風呂に入り直し、今日はもう眠ることに。アンジェリカもとても眠そうだ。布団に入るとパリッとしたシーツが優しく肌に触れる。
今日のことを思い返すと、まるで毛布に包まれているような1日だった。逆ホームシックになってしまわないか不安なほどだ……。おやすみ、アンジェリカ。また明日。
──なんとか1日目を終えた2人。しかし、過酷なのはここからだった!! アンジェリカが泣いた? 2日目の様子は次ページで!
中澤星児





















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