【ロングインタビュー】結成26年目にして初の武道館公演を行う奇跡のロックバンド『フラワーカンパニーズ』が示す「バンドとは何か?」(その2)
・真っ暗な道を走る最中
まさに “青春ごっこを今も続けている” かのような彼ら。メジャーからインディーズに戻った際、お客さんが10分の1に減ってしまった時期もあったという。そんな “真っ暗な道” の最中、迷うことはなかったのだろうか?
──きっついなーやめようかなーって思ったことはないですか?
鈴木さん:場所によってはあるかな(笑)何回行っても、お客さんが増えないところとか。人数が少なくても、ちゃんと聴いてくれてるかどうかって伝わってくるんだけど、そういうのも全く感じないところ。……まあ、俺が勝手に感じなかっただけかもしれないんだけど。何回行ってもこの場所厳しいなってところは、何年か空けたりしたよ。
グレートさん:2年空いたり、行かなくなったとこもあったしね。行かなくなったらそのハコなくなっちゃった……。
鈴木さん:でも、なるべく行くようにはしてたけどね。空けるとよりお客さんが少なくなるから。2年ぶりとかに行っちゃってもさ、そりゃ減るわなあ……っていう感じだから。
──バンドとか音楽をやめようと思ったことはない?
グレートさん:それぞれ大なり小なりあるかもしれんけど、でもまあ割と自分らでやり始めた2001〜2002年くらいからの方が少ないんじゃないかな。
鈴木さん:もう潰しがきかなくなってきて、逆に腹くくったっていうかさ。メンバーも結婚しだしたりしてるし、自分だけの問題じゃなくなってきた。
──でもそこでさらに音楽に向かうっていうのは……すごいと思います。
グレートさん:それぐらいしか他にやりたいこともないんよね(笑)料理好きとか物を作るのが好きとか、いろんなバイタリティーがある人って今多いじゃん?
鈴木さん:音楽なんてなくてもいいっていう感じの人ね。
グレートさん:他のことで金稼ぎたいとか、そういうのも1つもないから。
鈴木さん:あと、他の人に楽曲提供すごいする人とかね。そういうの全くないからね。
──楽曲提供したいっていう感じも特にない?
グレートさん:オファーあれば作るだろうけど、そっちをメインにしたいとは思わない。鈴木の場合もそうだろうけど、ヴォーカリストだから1人で歌ってもできるじゃん?
鈴木さん:そういう話もらえたら嬉しいけど、でもやっぱりちょっと複雑かな。やっぱ自分が歌って響かせたい。
グレートさん:作家よりも演者の方が全然勝ってるからね。
鈴木さん:そうそう。バンドをやりたいんであって、曲作りが好きとかじゃないもん。別に楽器好きでもないし(笑)俺なんか特に。
・曲作りは常にライブを想定している
「曲作りが好きではない」という衝撃のカミングアウトをした鈴木さん。しかし、彼の作る曲や歌詞は多くの人の胸をえぐり涙を流させる。そういった曲や歌詞はどのようにして作られているのか?
──曲作りは1人でやりますか? バンドでやりますか?
鈴木さん:俺がギター弾き語りの状態で作ったフォークソングみたいなのをバンドに持っていく。なるべく歌詞はつけて。それをみんなでロックにするっていう感じ。丸投げしちゃうね!
グレートさん:アレンジはバンドでやってるよ。
鈴木さん:だからそういう意味では人の領域まであんまり入らないようにしてるかも。全部自分がしきっちゃう人いるじゃん? ベースはこうでギターこうみたいな。売れてる人の中には、絶対的な1人の天才が全部やってるワンマンバンドが多い。俺らは割とそういう中では珍しい。俺1人じゃ全然できない。土台作ってるだけだし。
──それって「バンドでやるぞ!」みたいなこだわりがあったりしますか?
鈴木さん:いや、というよりも、バンドじゃないとできない!
グレートさん:鈴木の場合、1人でやることに興味はないんだ。基本的に、1人で作ると1人の世界になっちゃうじゃん? 広がりはしない。でもバンドでやったら、最初に想像してた完成形と全然違う形になったりする。それが意図したものと違うとしても、かっこよくなる場合もあんじゃん。それがバンドの面白さだと思う。
鈴木さん:音楽的欲求の強い人はバンド形態にさほどこだわらないよね。バンドで俺の曲が全然できねえからソロやるみたいな。そういう発想まったくないからね。アコギ弾き語りでカフェでやるってことはあるけどさ。それはガス抜きとしては面白いけど、アルバムを出すとか、そういう発想は全くない。
──曲を作る時にフラカンをイメージしたりしますか? 自由に作りますか?
鈴木さん:フラカンしかイメージしてない。だってそれ以外にやるなんて考えたことないから。もうイメージするも何もそれありきでしか作ってない。
──その曲に対して前川さんがベースラインをつける時に意識してることってあったりしますか?
グレートさん:ベースラインよりも、曲のリズムだったり強さ……おとなしめにするのがいいのか、ドーン! とドラムが強く叩いた方がいいのかとか……そっちのイメージを先に固める。だから、スピードが遅い曲のテンポを上げてみたり。鈴木の作ってきた曲がどういうところに着地するのがいいかってことを考えるかもな。
──どこに着地……
グレートさん:うん。これライブの前の方に持ってきた方が良い曲だなとか。これは後の方の曲だとか。
鈴木さん:自然とライブを想定してるかも。最後に持ってこれそうだなとか。
──アレンジの段階でライブを想定したアレンジをしてるということですか?
鈴木さん:そうだね。結局ライブありきなんだよね!
・生きててよかった、そんな夜はココだ!
作詞・作曲等の創作活動においてもライブを常に意識している様子は、生粋のライブバンドであるということを実感させられる。ずっと目指してきた日本一の大舞台・12月19日の日本武道館公演を目前にした今の心境を聞いてみた。
鈴木さん:いつも通りやりたい。なるべくライブのやり方や流れをカチカチに決めないようにしてるんだよ。というのも、ここぞとばかりにいろんなことしようとするとおかしなことになっちゃうから(笑)こっちが演者として何かを与えるというよりは、逆にお客さんからいろんなものをもらって帰りたいなって思ってる。
グレートさん:武道館の場所に影響は受けると思う。だからこそ自分はいつも通りを意識して、あとはその影響による変化に任せたい。変に意気込んでると「あっ、想像とちげぇな」ってなった時が怖いから。
鈴木さん:まあもうジタバタしてもしょうがないっていうのもあるよね(笑)
グレートさん:まだ何週間かあるから、余裕こいとるところもあるかもしれんけど。1週間くらい前とか5日くらい前だとビビるのかなあとか(笑)武道館でライヴやった友達がそう言ってた。「逃げ出したくなる」って。そんなふうに思うのかな……?
その余裕さえ感じる態度はブレない未来を見据えているようにも見えた。きっと彼らは、私たちを見たことない場所へ連れていってくれることだろう。さあコブシを突き上げる準備はOKか? みんなで叫ぼうじゃないか「生きててよかった、そんな夜はココだ!」と。
Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.▼生きててよかった、そんな夜はココだー!!