「妖怪ウォッチ」人気で、全国各地で妖怪が一躍大ブームとなっている。しかし、このブームは今に始まったことでない。漫画家、水木しげるさんが生み出した「ゲゲゲの鬼太郎」はもちろん、それ以前から妖怪は私たちの生活に密接した存在だった。
水木さんが、たびたび手本としているは近世の画家、鳥山石燕による『画図百鬼夜行』。これを見るだけでも、そんなに毛が好きか!というほど、たくさんの「毛」にまつわる妖怪が登場する。日本各地の「毛」妖怪、どれが最強か比べてみた。
・毛羽毛現(けうけげん)
中国の古書に記録のある、全身毛だらけの仙人「毛女」に例えられることがある。毛女もその名の通り、体中に毛が生えていたようだ。家の周辺のじめじめしたところに出ると言われ、疫病神の一種とも。大きさなどは確定できないが、モデルが人であることを考えると、かなりの量の毛を持った妖怪だろう。
・毛倡妓(けじょうろう)
髪の毛が伸びすぎて、顔の前後がわからないほど全身が髪の毛でおおわれている。黄表紙(絵本のようなもの)ではモテモテで毛倡妓をめぐって争いが起こることもしばしば。
・丸毛
小さくて丸い。目の周りをのぞき、毛で覆われている。水木しげるさんの創作のようで何をするというわけではない。愛きょう振りまき担当か。
・おとろし
どのようなふるまいをするのかなど、すべてが謎に包まれている不思議な妖怪。おどろおどろしい(気味が悪い)、おどろ(草木が乱れしげること)、おどろ髪(乱れた髪の毛のこと)などの意味が込められた妖怪……かもしれない。
・麻桶の毛(あさおけのけ)
徳島県三好郡加茂村にある、彌都比売神社(やつひめ)神社の神体の麻桶に入れられた毛の妖怪。神社に奉られている神の心が穏やかでないときに、その毛が長く伸びて麻桶から出て人を襲いだすのだとか。水木さんが「麻桶毛(まゆげ)」の名でキャラクター化もしている。
・青女房(あおにょうぼう)
眉毛がぼうぼうに伸び、お歯黒を黒々と付けた若くて官位の低い女官。毛倡妓に似ているが、おそらく青女房の方が若いので毛にツヤがあると考えられる。しかし、浮いたうわさは毛倡妓ほどはない。
以上! 代表的な「毛」にまつわる妖怪を挙げてみたー。「丸毛」は一体一体が小さいので、毛の量も少ない。「麻桶の毛」は伸縮自在だが非常に不安定で、一定の毛の量を保つことができないよう。桶の大きさにもよるが、入れ物に入る程度なので、本来の毛の量も少ないだろう。
人型妖怪の「毛倡妓」と「青女房」は、いずれも髪の毛が長い。どちらも女性性を持つようなので体系が同じくらいと仮定すると、眉毛も伸びていることから毛の量では「青女房」が上だと言えるか。
「おとろし」は頭のみの妖怪だが、髪の毛の量は相当なものだと推測できる。「毛羽毛現」も、もとは人型であったと考えられるが、今や全身毛に覆われている。
人型の上、全身が毛に覆われているとならば、毛羽毛現の毛の量はおそらく一番多い。よって「毛羽毛現」をキングオブ毛妖怪に認定したい。