shigeko

風呂というのは人に解放感を与える。全裸になって湯に浸かることで、たとえその一瞬だけでも、まるで魔法のように疲れや嫌なことから身も心も解き放ってくれる。だが、あまりの心地良さに解き放たれ過ぎてしまう人もいるようだ。

先日、初めて訪れたお風呂屋さんで、私(筆者)はこれまでにない圧倒的解放感を漂わせる「シゲ子」に出会った。シゲ子は、まるでこの世のものすべてを超越したかのような風貌で、これでもかっ! ってくらいに自らを解き放ちまくっていたのである。

・シゲ子との出会い

そこは、食事処やマッサージなどもやっており、銭湯と言うよりはいわゆる「健康ランド」タイプのお風呂屋さんだった。その時が初めてだった私は、少し緊張した面持ちで服を脱ぎ風呂場へ向かった。

夜の遅い時間帯だったこともあってか、浴場内はそれほど混んでいなかった。さっそく全身を綺麗に洗い流した後、私は束の間の解放感を得るべく浴槽のほうへ向かった。そこで私は、浴槽の縁の上にどどーん! と横たわるシゲ子を目にしたのである。これが彼女との出会いであった。

・オッサンのようなシゲ子

縁は、幅が20センチほどあったと思う。そこでシゲ子は器用にも仰向けになり、両手は頭の後ろに組んで、さらに脚まで組んでいた。

それは、まるで自宅で昼寝をするオッサンのような堂々たる寝姿だった。自宅で昼寝をするオッサンなら、最低限パンツ一枚くらいは履いていると思うのだが、風呂場内なのでもちろんシゲ子は全裸だ。自らの体をタオルで1ミリたりとも隠しもしない。完全なる裸であった。

・シゲ子に畏敬の念を抱きそうになる

本当に「どどーん!」という効果音が聞こえてきそうなほど堂々としたシゲ子の姿に、私は完全に圧倒されてしまった。寝湯でもないのにこんなにも大胆に風呂場内で寝ている人は見たことがない。しかもシゲ子は、私が経験したこともないような凄まじい解放感を漂わせていた。

人目も気にせず、ここまで堂々と自らを解き放つことができるシゲ子に、私は危うく畏敬の念すら抱きそうであった。

・ワキ毛シゲ子

だがその時、私はあることに気付いた。頭の後ろで両手を組んでいる彼女の脇は、無防備にも丸見えになっていた。しかもその脇には、ワキ毛が茂っていたのである。

それは、「二、三本処理し損ねちゃいました♪」っていうレベルではなかった。「前回の処理から少し日が経ちすぎてチョビチョビ生えてきちゃってました♪」っていうレベルでもない。もはや言い逃れできないくらいに、ワッサァ~と草原のように茂っていたのである。これこそ、私が彼女を勝手に「シゲ子」と呼んでいる所以である。

・解き放ちすぎなシゲ子

もしかしたら、シゲ子は処理しない主義だったかもしれないし、何か処理できない理由があったのかもしれない。私だって、人のことをとやかく言えるようなものではない。だが、ワッサァ~な草原を見せながら、あまりにも堂々と全裸で浴槽の縁に寝る様子は、思わず「解き放ち過ぎだろ、シゲ子っ!」とツッコミたくなるレベルだったのだ。

・圧倒的解放感のシゲ子

だが、そんなことを言えるわけもなく、なんとなく私は、シゲ子とは距離を取って湯に浸かることにした。他の客も私と同じ考えだったらしく、浴槽内の人口密度は偏っていた。その後しばらくしてシゲ子はムクッと起き上がり、そのまますたすたと風呂場から出て行った。

あの時のお風呂屋さん以外にも、ちょこちょこと出かけては解放感を求めて湯に浸かってきた私だが、後にも先にもシゲ子ほど大胆に自らを解き放っている人は見たことがない。

執筆:むねやけサンデー
イラスト: マミヤ狂四郎

▼ぬりえもあるぞ!
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