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通称ファイプロこと『ファイヤープロレスリング』といえば、ゲームで表現する「プロレス」に、こだわりまくった名作中の名作だ。そんなファイプロ好きによるファイプロ好きのためのイベント『ファイプロT ~ファイヤープロレスリングトークバウト~』が、いよいよ明日2014年10月27日、高円寺にて開催される。時は来た……それだけだ!

そこで10.27(ジュッテンニーナナ)のイベントに向けて連載を開始しつつも、結局2回しか公開できなかったのが短期集中コラム『俺とファイプロ』であるが、決戦直前の3番手は……イベントにも参加するワタクシGO羽鳥が、ファイプロについての思い出を語ってみたい。ハンカチ必須のファイプロ感動ストーリーだ!

・ベストバウトは1995年「ファイプロ大会」での一戦

いつぞやか公開した「ファイプロあるある」にもチラっと書いたが、私の生涯ベストファイプロバウトと言えるのが、『スーパーファイヤープロレスリングSPECIAL』が発売された1994年の翌年に開催された「ファイプロ大会」での一戦だ。

たしか場所は池袋のサンシャインホールで、特別ゲストには藤原組の選手3人、「フミフミ」こと斎藤文彦さん、そしてイベント中の乱入演出用ゲストとしてズングリムックリとした方のレザーフェイス(リック・パターソン)……というシブい人選。

大会参加者は私を含め、パッと見で100人近くいたと思われる。気合いの入ったプレイヤーは、自分の血と汗が染み込んだ「マイ・SFCコントローラー」を持参しており、私はそれを見て「その手もあったか!」と悔しく思ったりもした。

・クリティカルが猛威をふるう

大会ルールは実にシンプル。くじ引きで決められた対戦相手3人と戦って、2勝すれば予選突破。その後はトーナメント方式でファイプロの頂点を目指す……といった、いわゆる高校野球の「甲子園」的な感じだ。しかし、大会は予選の時から大荒れだった。

とにかく猛威をふるったのが、クリティカル技を持ったキャラのKO率だった。試合開始3秒後に関節技で「バキッ」と秒殺される者も続出しており、折られた方はバーリ・トゥードの試合で秒殺されたプロレスラーのような表情になっていた。

・最強すぎる引っ掛けウエスタン・ラリアット

そのなかでも最強だったのが、スター・バイソン(スタン・ハンセン)のウエスタン・ラリアット。クリティカルにならなくても、3発くらい連発でハメ的に喰らってしまったら、もう “関節技に入った瞬間に即ギブ状態” といった有り様になる。

しかも、“ガチすぎるスター・バイソン使い” たちは、誰も組み合おうとしていなかった。キュッキュキュッキュと小刻みダッシュをしながら牽制し、射程距離に入ったら「バコン!」と引っ掛けウエスタン・ラリアット。これぞまさしく交通事故!!

このギャング的なウエスタン・ラリアット1発だけでKOされた参加者は、おそらくきっと「こんなのプロレスじゃねええっ!」と涙したはずだ。まあ、プロレスじゃなくてゲームなんだけど……。ともかく、大会はシュートすぎる展開で進んでいった。

・バイソンラリアットに散った2人が交わした心の約束

もちろん「超帝スーパーカイザー」を使っていた私も、予選3戦あるうちの2戦ともに、スター・バイソンのギャング的ラリアットでマットに沈んだ。しかも超帝スーパーカイザーは軽量級なので、悔しいけどバイソンのラリアットKOにも説得力があった。

その後に迎えた3戦目。くじ引きの番号を眺めていたら、ふいに見知らぬ男性が「あ、次の対戦相手は君だね。何勝した?」と声をかけてきた。「2戦ともラリアットKO負けです」と伝えると、彼もまた悲しそうな表情で「俺もだよ」と答えた。そして……

「おれたちはプロレスをしよう」

──と、彼はシビれまくるほどにアツすぎる伝説のセリフを口にしたのだ! むろん私も「もちろんです! ぼくたちは “心のプロレス” をしましょう!」と彼の目を見ながら返事をし、泣きそうになりながらモニタの前でガッチリ握手。

誰も我々の試合なんて見ていないけど、この会場に10台以上ある試合用のモニタのなかでも、一番アツい試合を繰り広げてやろう。試合の内容だけで、会場内にいるギャラリーの視線とハートを、ガッチリつかんでやろうという意気込みだった。

・決死のトペ・コン・ヒーロ

彼が選んだのは緑のパンツの氷川光秀。私は先述のとおりスーパーカイザー。ゴングと同時にエルボーと掌底がバチバチと激しくぶつかり合い、あっという間に流血戦。そして……ロープ際の浴びせ蹴りを喰らった氷川光秀は、ドスンと場外へ落下した。

「いまだ!」

私は反対側のロープへ走った。しかし、「やべえ! 相手の残り体力的に、ムクリと起きちゃうかも……」といった中盤の展開であり、私は飛ぶかどうか最後まで悩んだが、イチかバチか自爆覚悟のトペ・コン・ヒーロ! ……と、その時だった!!

視界の隅っこに氷川の手にするコントローラーが見えた。彼は……Bボタンを押し続けていた。「あえてダウンしたままになるボタン」を押し続け、私のトペ・コン・ヒーロを受けようとしていたのだ! 結果、「ドコン!」と、トペコン成功。

しかし、ダウンする氷川を起こすと、すぐに向こうから組んできて「場外タイガードライバー」という展開的に最高すぎる反撃技を喰らい、放った氷川も受けた私も恍惚状態。先にリングに戻ったのは血まみれの氷川であり、リング中央辺りで仁王立ちだ。

ギャラリーは誰も見ちゃいないけど、確実に俺たちはプロレスをしているっ……!! スイングしてる……しまくっている!! 画面の中にいるドット絵の氷川が「来いカイザー! 来いーッ!!」と叫んでいる声まで幻覚的に聞こえてくる! これだ……これだよ! これがプロレスなんだよーっ!!

・ゲームの中で見知らぬ人と “プロレス” ができた

その後はガチすぎる大技連発でカウント2.9のギリギリ攻防! どっちが勝ってもおかしくない展開! 結果、私が「掌底 → 浴びせ蹴り → カベルナリア」というセメントすぎる大人げないコンボでギブアップ勝ちを果たしたのである。

試合後、氷川使いと私は「ありがとう」「ありがとうございます!」と晴れやかな表情で握手をした。もう大会の勝敗とか優勝とか、どうでもよくなっていた。ゲームの中で見知らぬ人と “プロレス” ができたことだけで、私は満足だったのだ。

20年近く経った今でも、あの時の氷川戦で感じた感動と興奮は忘れられない。ちなみに同大会の優勝者はモチのロンでスター・バイソン。準決勝は4人共にスター・バイソン。準々決勝8人中7人がバイソン使いという、真剣すぎる「ゲーム大会」だった。

参考リンク:ファイプロT ~ファイヤープロレスリングトークバウト
執筆:GO羽鳥
Photo:RocketNews24.

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